Mar 20, 2024 / CULTURE

西洋占星術師の淡の間による
PERK的12星座コラム

古代ローマの詩人・マニリウスは、著作『占星術または天の聖なる学(Astronomica )』の中で、人間の事象や地上の出来事を占星術的世界観と結びつけました。彼が解いた星の世界のように、この世のさまざまな出来事や生活、文化(Culture)を占星術的世界観と結びつけてみること。日常に溢れる占星術的象徴を示すカケラを拾ってみたり、単独化された一つのピースとしての「星座占い」ではなく、「星の影響はすべて自分の中にある」と体験してみること。そんな風に、たまには占いだけではない「星」の入口があってもいいのでは? 「私は〇〇座だから」という一方向だけの狭いキャラ付けにとどまるだけではもったいない。「私の中にもこの星座の世界が存在しているのかな?」という広い視点で感じてもらえたら嬉しいです。この連載が一周する頃には、ASTRONOMICULTUREを通して内なる多面的な星座の世界のグラデーションやレイヤーを感じることができますように。

TEXT_Aynoma
ILLUSTRATION&TITLE DESIGN_YUUKI
EDIT_Yoshio Horikawa, Maria Ito(PERK)

牡羊座の季節
牡羊座の生き方
牡羊座の精神性
牡羊座の信念
牡羊座の時期に生まれた人たち
次なる旅への誘い

牡羊座の季節
 春分。光と闇を分かつ、芽吹きの季節です。西洋占星術の世界観による暦では、3月20日のあたり(春分)から4月20日過ぎまでの時期に生まれた人たちは太陽の位置が牡羊座のエリアにあることで、まとめて「牡羊座生まれ」と定義されます。牡羊座の世界観の大枠をつかむ鍵は、太陽系の天体である火星がその性質を支配していることに由来します。火星は、ギリシャ神話ではマルス(ローマ神話ではアレス)と呼ばれる好戦的な戦の神が宿る星。火星の赤く鈍い色は、マルスの生命力と正義を象徴するような色でもあります。燃える闘争心や、戦で流した血の色、生命力を表す血潮。また、炎といえば、牡羊座は火のエネルギーを司る星座でもあります。燃える炎は赤く、熱を持っています。赤は信念の色、神秘の命の色です。これらのことからマルスの精神が息づく牡羊座の世界観は常に戦うことや自分なりの正義の志を示しているといわれますが、一体何に向けて戦っているのでしょう? どうしても譲れないことや、受け入れ難いと感じること、許せないことなど、人によっての「正義」はそれぞれです。そしてそのどれもが自分の生き方に対する誇りのような、ある種の約束みたいなものなのかもしれません。

牡羊座の生き方
 3月から4月。一般的な暦では年度はじめや新年度、新学期など「あたらしさ」のエネルギーが溢れる時期です。せつなさ、喜びと寂しさ、ソワソワ、むずむず。新鮮さと不安が入り混じる不思議な季節。新しいことを始めるのは不安がつきまといます。しかし、現代社会において大概のことはすでに先人たちが道を作っているので(比喩表現ですが)、未開の地で岩をかき分けて進むようなことはまずありません。マニュアル化されたその道(プロセスや過去事例)に則って歩めば、(よほどのことでない限り)大概のことは成り立つようになっているような気もします。現代の社会において「第一人者(パイオニア)」になることは、すでにある何者かの二番煎じになりかねません。口コミやレビューなどを参考にして、なるべく失敗のないような選択をすることも当たり前になってきているなかで、とりあえずやってみよう精神、もとい新鮮な冒険をすること自体が珍しくなっています。それでも自ら何か新しいことを切り開きたいとか、どんなに無謀な状況だとしても自分の力を信じてみたいとか、誰にも染まることなく純粋な自分の衝動を信じたいとか、安定よりも新規開拓と言う未知の展望を味わいたいとか、誰かが通った後の分かりやすい道などつまらない……と思うあなたは、人より牡羊座的な性質が色濃く表れているのかも。

牡羊座の精神性
 牡羊座の精神性は、自分の正義や信念に従おうとするときに最も強く表れます。生きることはそれだけでオリジナルで、誰にも真似できない個性そのもの。そのことを行動で示そうとしますが、時に敵を作ったり、他者との衝突を招いたりもします。それでも自分の力を信じようとあえて飛び出していくので怪我や失敗もします。しなくてもいいことに自ら挑むこともあります。口調がちょっと粗暴に見えたり、せっかちだったり、生き方そのものが好戦的に見えることもあります。とにかく、そのまんま表れる様子を繕うことができません。自分を裏切るくらいなら正直でいた方がマシなのです。役割でいうと自分自身を看板にするような表現活動を選択したり、何かの代表になったり、勝負ごとや体力勝負のスポーツに関わったり、(結果的に)個人開業や事業主になったりと、何らかの形で自分の信念を独立させようとする傾向があるようです。そしてその一連の行動のなかで、ひたすら「生きること」を説いていきます。内側の炎を熱く燃やすように、命尽きるまで。

牡羊座の信念
 自分の燃える信念を貫くこと。直観を養分としながら、まったく何もない新たな土地を開墾していくようなこと。その信念には迷いがなく、ある種無謀とも言える行動に見えることもありますが、そこには「うまくいくかどうか」という懸念は存在していません。牡羊座の精神にとっては「わからないからこそとりあえずやってみること」が重要で、「やってみないとわからないからとりあえず始めたい」という純真無垢な欲求に抗えません。身体がどんなに成熟していても中身はまるで子どものまま。そして、始めたとしても完成に至る道までは用意されていません。まずは自分の意志に従って後先考えずに始めること、自分なりに挑むことを大切にします

牡羊座の時期に生まれた人たち
 牡羊座の時期に生まれた人たち。ヴィヴィアン・ウエストウッド、レディー・ガガ、チャールズ・チャップリン、エマ・ワトソン、マルタン・マルジェラ、鳥山明、江國香織、沢尻エリカ、ピエール瀧、番外編で『スラムダンク』の桜木花道。眩いほどの道を切り開き、あとに続くものにとっての光の存在。たまに反発を食らったり怪我をすることも厭わずに自分の道を進もうとする人たちです。

次なる旅への誘い
 遡って大昔。宇宙の爆発現象ビッグバンこと、暗闇の中で起こった光の大爆発によって生命が生まれ、私たちはここに存在しています。宇宙物理学者である佐治晴夫先生の言葉を引用すると、「私たちの身体は星が光り輝く過程で作られた星のかけらそのもので、この宇宙にあるものはすべて星のかけらである」ということ。この言葉の通り、この世界の命はみんな同じ始まりの光、同じ星から生まれたというのはロマンを感じますよね。しかし、ビッグバンの爆発の如く何かが始まる時、それには非常に大きな衝撃が伴います。未開の地を開墾したり、自分の道を切り開くなど何かを始める時も大きなエネルギーを要します。新芽が地面から現れる時も胎児が母体から生まれる時も、強い萌出の力が必要です。そこに表れる衝動と開拓のエネルギー、それこそが牡羊座の性質です。
 内なる牡羊座の精神は暗闇から光の場所へと導き、大きな衝動と開拓の好奇心を栄養にしながらいのちの旅を始めます。しかし、旅には乗りものが必要です。いのちの旅こと人生の乗りもの、それは私たちの肉体のこと。次回、4月は生命の器であり人生の乗りものともいえる「肉体」が示す感覚領域こと、牡牛座の話へ。

※引用  
佐治晴夫著 『からだは星からできている』、マルクス・マニリウス著『占星術または天の聖なる学(Astronomica )』

PROFILE

淡の間(あわいのま)
西洋占星術や西洋神秘学、タロットカード、ヨーロッパ発祥の自然療法などを学び、オリジナルのカウンセリングや講座などを展開しながら地球を修行中。占いのほか、コンセプト監修や文章も執筆。「GINZA」のWEBサイト、 「kufura」などに連載を持つ。
@aynoma.jp

PROFILE

YUUKI
“セルフラブ”をテーマにイラスト、作詞、クリエイティブディレクション、壁画アートなど幅広く手がけるアートクリエイター。カルチャーイベント「Art Culture Street」を主催(ex-CHAI)。
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