Apr 19, 2024 / CULTURE

西洋占星術師の淡の間による
PERK的12星座コラム

古代ローマの詩人・マニリウスは、著作『占星術または天の聖なる学(Astronomica )』の中で、人間の事象や地上の出来事を占星術的世界観と結びつけました。彼が解いた星の世界のように、この世のさまざまな出来事や生活、文化(Culture)を占星術的世界観と結びつけてみること。日常に溢れる占星術的象徴を示すカケラを拾ってみたり、単独化された一つのピースとしての「星座占い」ではなく、「星の影響はすべて自分の中にある」と体験してみること。そんな風に、たまには占いだけではない「星」の入口があってもいいのでは? 「私は〇〇座だから」という一方向だけの狭いキャラ付けにとどまるだけではもったいない。「私の中にもこの星座の世界が存在しているのかな?」という広い視点で感じてもらえたら嬉しいです。この連載が一周する頃には、「ASTRONOMICULTURE」を通して内なる多面的な星座の世界のグラデーションやレイヤーを感じることができますように。今月は牡牛座のおはなし。

TEXT_Aynoma
ILLUSTRATION&TITLE DESIGN_YUUKI
EDIT_Yoshio Horikawa, Maria Ito(PERK)

牡牛座の季節と神話
牡牛座の世界
牡牛座の精神
牡牛座の生き方
牡牛座の時期に生まれた人たち
次なる旅への誘い

牡牛座の季節と神話
 春から初夏へと移り変わる時、山の緑はさらに青く深く生い茂ります。新年度に始まった物事が深く浸透してゆく様子と新緑が深まる様子が比例していく季節、4月20日あたりから5月20日過ぎまでの時期に生まれた人たちは太陽の位置が牡牛座のエリアにあることで「牡牛座生まれ」と定義されます。牡牛座を支配する天体・金星は愛と美を司る女神の星です。金星はギリシャ神話ではアフロディーテ(ローマ神話ではウェヌス)と呼ばれます。海の泡から生まれたとされる、アフロディーテ(ヴィーナス)の登場シーンが描かれたルネッサンスの名画『ヴィーナスの誕生』はご存じの人も多いはず。また、牡牛座の神話はゼウスが一目惚れした美しい乙女と逃げるために妻に隠れて牛に変身した説と乙女を牛に変えた説がありますが、その乙女の名をエウロパと言い、彼女との出会いの地がのちのEurope(ヨーロッパ)の語源になったと言われています。

牡牛座の世界
 牡牛座の支配星・金星が示すのは、この世界のあらゆる美や欲の象徴、楽しいこと、嬉しいこと、綺麗なこと、美味しいことなど人生の喜びのすべて。また、金星は明けの明星 / 宵の明星、もとい一番星とも呼ばれています。人生年表でいうところの思春期・青春期に誰かを好きになったり、強く憧れたり、強く感性的な影響を受ける物事との出会いはすべて金星の栄養です。しかし、若さゆえの体験や美貌、若い恋の盛り上がりはいつか必ず廃れる刹那的なものですし、素敵なものやお金をたくさん持っている人が豊かであるかと言われたら、そういう単純な話ではありません。美しい人や優しい人の形容詞として“まるで女神のような人(ヴィーナス)”と使われることもありますが、美人には美人の苦悩があり、美の感覚は時代と共に移り変わる流動的なもの。さらに実際の金星の神ほど、官能的で貪欲でわがままな神様はいないでしょう。人生には楽しみや愛のエッセンスが必要不可欠ですが、強く現れすぎると身を滅ぼすほどの事象にもなり得るのです。自分の感性に自信を持ち過不足なく調和の取れた状態を管理しながら人生を謳歌すること、それが個々人の金星を上手く扱えている豊かな状態と言えるのではないでしょうか。そして、それら金星の影響を非常に強く受けている牡牛座の世界は、官能的で豊かなこの世の楽園・物質主義が示す領域とも言えるでしょう。

牡牛座の精神
 人智学者のルドルフ・シュタイナーは、人間が持つ「感覚」のことを世界と繋がるための道具と表現しました。牡牛座の領域は人間が持つ「感覚」という道具と強く結びついています。肉体という器を通して私たちは何かを見たり、聞いたり、触れたり、食べたりすることができます。あらゆる体験の積み重ねを通して自分だけの「感覚」という道具を育てていくこと、それは人生の変え難い喜びです。しかし、その「感覚」とは、実体のあるものばかりではありません。目に見えないけれど確かにそこにあるもの、愛と呼ばれるものや美しいと感じるものに出会った時の強く心が動いたり沸き立つような心地。それもまた「感覚」の体験です。牡牛座の領域とは、形として捉えられる感覚領域と、実態のない感覚領域の両方を体験できる愛と美の世界。愛も美も言葉ではなかなか形容し難いものですが、与えられた肉体と感覚を使って目に見えない世界を表現しようとします。自分の信じる愛や美についてアウトプットしたり、感覚体験を目に見える表現として昇華させたり、感受性が刺激される体験の入り口としてこの世界に彩りを添える役割を担います

牡牛座の生き方
 牡牛座の性質は12星座の中でひと際、形あるものに対して強い愛着があると言われます。感覚的な領域を通して得られる喜びを求めるので、例えば美味しいものや自分が美しいと感じたもの、時間をかけて作られたものの中からひと際価値があると感じたものを強く愛します。与えられた肉体を使い切って体験できるすべてを得ようとするので欲張りで貪欲な一面があり、一方で自分の世界の中に愛するものをすべて閉じ込めておきたい願望があります。しかし、物事の価値とは目に見えるものではありませんし、愛や美は人それぞれの受け止め方があります。物事の価値を決めるにはそれを見測るための経験も必要ですし、相応しい振る舞いやそれを手にするまでの時間を要することもあります。ものの価値を知る人は、それらにかける時間や手間を惜しみません。お金ばかりが価値に相応するわけではないことを知っています。現代的なコスパやタイパと呼ばれる領域とは真逆の位置にあるもの、それもまた牡牛座の領域です。自分の信じる物事に相応しく向き合うための特別な時間軸の中で生きているので周囲から見れば「マイペースだ」と言われることもありますが、信念に向き合い続ける強い心の軸を持っているので、結果的に「一途で頑固」と言われることもあります。意識的にそうしたわけではなく気がついたらそうなっていただけなのですが、闘牛のような熱いハートを持っているので、自分が満足するまで向き合い続ける胆力の持ち主とも言えますし、心奪われたものをとことん突き詰める「オタク気質」な部分が目立つこともあります

牡牛座の時期に生まれた人たち
 オードリー・ヘプバーン、ドリス・ヴァン・ノッテン、ソフィア・コッポラ、HIKAKIN、冨樫義博、影山優佳、伊沢拓司、美輪明宏、岸田繁。自分の決めた世界を深め、愛を信じ突き進む信念を持つ人たち。彼らが関わるものは彼らの信じる愛の世界の具現化。その世界観に出会う人の感覚領域を広げ、感性の畑を育て、人生の喜びを広げる才能を持つ人たち。ほかにも物事を形にする表現活動に関わる人たちは、個人の星の地図に牡牛座の影響を強く持っていることが多いです。

次なる旅への誘い
 内なる牡羊座の精神は暗闇から光の場所へと導き、大きな衝動と開拓の好奇心を栄養にしながらいのちの旅を始めます。いのちの旅こと人生の乗りもの、それは私たちの肉体のことですが、牡牛座の領域を通して受け取った「感覚」の体験を伝えようと新しい動きが生まれます。次の旅は双子座の領域へ、新たな動きと繋がりを作る言語を求めて。

※引用  
佐治晴夫著 『からだは星からできている』、マルクス・マニリウス著『占星術または天の聖なる学(Astronomica )』

PROFILE

淡の間(あわいのま)
西洋占星術や西洋神秘学、タロットカード、ヨーロッパ発祥の自然療法などを学び、オリジナルのカウンセリングや講座などを展開しながら地球を修行中。占いのほか、コンセプト監修や文章も執筆。「GINZA」のWEBサイト、 「kufura」などに連載を持つ。
@aynoma.jp

PROFILE

YUUKI
“セルフラブ”をテーマにイラスト、作詞、クリエイティブディレクション、壁画アートなど幅広く手がけるアートクリエイター。自身がプロデュースするカルチャーイベント「Art Culture Street」のvol.3が、5月11日(土)、12日(日)に渋谷PARCO10階「ComMunE」にて開催される。
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