The roots of abstraction

Interview with MAYUMI YAMASE

Oct 14, 2022 / CULTURE

アーティスト山瀬まゆみが語る
抽象的な作品の根源にあるもの

プライベートの時間と作品集のこと

——ここまで個展や作品についてお伺いしてきましたが、山瀬さんのプライベートもとても気になります。お休みの日はなにをされているんですか?
「フリーランスなので休日もなにもないですけど、彼と休みが合った日は近くのコーヒー屋さんに行って公園を散歩して。すごく普通ですよ(笑)」

—— リラックスされているんですね。Instagramにランニングの写真をアップされていましたが、よく走るんですか?
「ランニングは趣味ですね。今は週3くらいで。コロナを機に始めて、最初は一人で走っていたんですけど、近所にランナーの友人がいて一緒に走るようになりました。そこから人と走る楽しさに気付いて、楽しいというか話しているのであっという間なんです。それでどんどん走るようになりました」

—— いつもどのくらいの距離を走るんですか?
「人と走る時は大体10km。月に100kmくらい走りたいと思っていて。一人で10kmはわりと辛いんです。だから一緒に走る子に『今日行かない?』と言ったり向こうからお誘いが来たりした時に。最初は3kmでバテていたけど、段々と走れるようになるのも面白くて。これだけ走れた! とか今日は気分がいいとか、そういう小さな楽しみを見つけて走っています。走るようになってから、マインドがめちゃくちゃ変わりましたね。朝走ると一日の始まり方が全然違うし、体調も違います。やっぱり頭が少しすっきりするような、制作においてもなんとなく違う気がする」

—— やっぱりいいことずくめですね。もう一つお聞きしたかったのですが、制作中に音楽は聴きますか?
「聴きます。UKの昔のものとかを結構聴いています。ザ・スミスとかヴェルヴェット・アンダーグラウンドとか。あとデヴィッド・バーンとか、そういう世代のものも聴くし、最近だとリトル・シムズとかラップ系も。イギリスの新しい女の子とかはよく聴きます」

—— そうなんですね。制作中と普段とでは聴くものは変わりますか?
「いや、変わらないですね。なんとなく描くまでに自分の気持ちを持っていくことが大事だと思っていて。音楽を聴くことでテンションを上げるというよりかは、描いていて心地いい空間をつくるという感じです。UK以外にもいろいろ聴きます。邦楽はあまり聴かないけど、宇多田ヒカルは好きですね」

—— あと、山瀬さんはこれまで3ヶ国3都市で過ごされてきたと思いますが、どの街からいちばん影響を受けましたか?
「やっぱりロンドンですね。18歳の時に行っているし、いちばん遊ぶし多感な時期じゃないですか。アメリカの時は、自分でどこかに行くというより必ず親に車で連れて行ってもらっていたので、自分の意志でなにかするというのはなかったです。ロンドンでは、自分で出かけて遊んで、人と出会ってというのがあったから、感覚とかも影響を受けました。絵を学ぶことに関してもそう。結構フラフラっとロンドンに行って、実は最初、自分は美大というよりファッションを学ぶのかな? と思っていたんですけど、向こうに行ってから絵の楽しさを知ったので。ギャラリーやミュージアム、そういう部分も含めて刺激を受けましたね。来月久しぶりにロンドンに行くんです。個展などすべてを終わらせて、リフレッシュしに行ってきます(笑)」

—— いいですね、ロンドン。最後に、先日初の作品集を発売されましたが、そちらの見どころを教えてください。
「結構不思議な感じにはなっています。本に携わる仕事もしているので、本はずっと出したいと思っていて。集大成とは違う、でも私の今までが見えるようないろいろ楽しめる本にしたいと思いました。それこそ高校の頃に初めて描いた絵や普段撮っている写真とか、本当にZINEの延長線上のような本になっています。ドローイングもあれば、小さい頃の絵もあって、もちろん今回の個展の図録も載っています。いろいろな面の私が詰まっています」

—— この『Book of …』というタイトルも、なんだか山瀬さんらしいです。
「私、抽象的な作品をつくるじゃないですか。やっぱり説明をする時とか、頭の中に絵の方が先に出てくることもあって。全部が全部言葉で説明できないから絵を描いている、だから『この本はこういうことです』と抽象的にしました。自分の中の抽象的な気持ちを説明したものが入った本、という意味です」

PROFILE

山瀬まゆみ / 東京都生まれ。幼少期をアメリカで過ごし、ロンドンのチェルシー・カレッジ・オブ・アーツ&デザインにてファインアート学科を専攻。帰国後はアーティストとして活躍する一方、編集者やライターとしても活動。〈コム・デ・ギャルソン〉や〈ナイキ〉といったブランドとのコラボも行う。10月上旬に自身初の作品集『Book of …』をリリース。
https://www.mayumiyamase.com/
@zmzm_mayu

INFORMATION

MAYUMI YAMASE solo Exhibition
『The elephant in the room』
~10月30日(日)11:00~19:00
「Lurf MUSEUM」2F
東京都渋谷区猿楽町28-13 Roob1 1F・2F
@lurf_museum