The roots of abstraction

Interview with MAYUMI YAMASE

Oct 14, 2022 / CULTURE

アーティスト山瀬まゆみが語る
抽象的な作品の根源にあるもの

今回の作品に込められた想い

—— 展示されている作品に関してお伺いします。先ほどこれほど大きい立体作品の展示が日本では初めてとお聞きしましたが、すべてが新作ということでしょうか?
「立体作品に関しては新しいものは一つだけで、ほかはロンドンの大学の卒展で出したものなんです。卒業後、向こうでは何度か展示させてもらったんですけど、日本に帰国する時にこんなに大きなものは持って帰れないから一回全部型を抜いて小さくしました。でも、作品だし捨てるわけにもいかずにずっと持っていて。今回日本で初めて展示できることになって綿などを戻して形につくり直したので、私の中ではすごく意味のある作品です。帰ってきてやっと展示できる! みたいな。でも全部が元に戻ったわけではなく、本当はほかに2つあったんですけど、いろんな理由で破壊されちゃって(笑)。当時は“ファミリー”のような意味合いでつくったので、今回新たに一つつくりました。一人ひとり自立するというのも重要で、それぞれ生きている様を表現しています」

—— 本当に立体作品が生きている感じがしますよね。鼻や口のような部分もあり、顔かな? と思っていました。
「これが目で、みたいなのはなくて。最初(立体作品をつくり始めた時)はもっと人形っぽいものをつくっていました。抽象的な雰囲気はあるけど、わかりやすいみたいな。でも絵とかけ離れちゃっていてそれが嫌で、だから絵と立体作品の間になるようなものをつくりたくて」

—— 立体作品の表皮となるフェルトも、どんな形になるかわからずに切って縫っているんですか?
「そうですね、例えば(絵の一部を指差して)こういう形をイメージしてつくるとか、なんとなく絵のパーツに分かれています。このくらいかなとイメージしたものをつなぎ合わせて。あとは自立させなくてはならないので、ドローイングをしながら計画を立ててつくっています」

—— 絵に関してもお聞きしたいのですが、一つひとつの作品にモチーフのようなものがあるんですか?
「モチーフはないけど、立体作品と同じで、生きる感じは意識しているかな。生命……、生きている感じのものをつくりたいという思いはぼんやりとあります。ミクロで見た時に、こういうものがいるかもしれないみたいな。最近、テクスチャーを変えたいと思うようになって、水分を含んで垂らしたり勢いよく描いたりするのをやり始めました。感覚的な話だけど、絵が面白くなるので入れています。色の組み合わせに関しては、この絵にはこの色を使いたいというのを最初に頭の中で決めて、そこから描いたものをつなげていく感じかな。いちばん最初に選ぶのは背景。ベースの色を塗ってから決めていきます」

—— 色のことで言うと、お母様はデザイナー、お姉様もアーティストとしてご活動されていますが、共通して皆さんの作品は色づかいが魅力的ですよね。
「自分たちから見るとあまりわかりませんが、言われてみると確かにそうかも。白黒とかではないです。洋服なんかも私が黒を着ていると、母に『黒ばっかりはつまらない』と言われます(笑)。母も姉もわりと色ものを着るタイプなので、作品にもそういう面が表れているのかもしれませんね」