Luna’s Photo Essay
🇬🇧London COLUMN
Jun 04, 2026 / CULTURE
誰でも出合いうる偶発的に生まれる幸せなできごとも、心に隙間がないと新しい感情や気づきを得られない。ロンドン在住のフォトグラファー、ライターの山田ルーナさんに、日常のワンシーンをシャッターに収めてもらった。日本では見ることのできない景色を届けてもらう、連載「Luna’s Photo Essay🇬🇧London COLUMN」。ロンドンらしい色彩豊かな光景に、目の奥が輝くのを感じる。何気ない写真に価値を生み出すのは、言葉ならではの深みがあってこそ。明日からをほんの少し、ポジティブに生きたいと思えるきっかけが静かに散らばっていた。
PHOTO&TEXT_Luna Yamada
EDIT_Mizumo Uehara(PERK)

PROFILE
山田ルーナ/フォトグラファー、ライター
@ymdluna
4歳から音楽の奥深さに触れ、大学生までクラシックピアノに傾倒。その後、趣味だったカメラの腕をストリートフォトで磨き、ポートレート撮影を中心に本格的に始動。“本当にやりたいこと”が見えてきた今、潔い方向転換を遂げ、2025年春からロンドンに拠点を移す。フォトグラファー、エッセイやコラムを中心に執筆を行うフリーランスライターとして活動している。


演奏会のインターバル中、ホールの目の前で、アイスクリームをすくう紳士ふたり。きっと好きなことが似ている友人同士なのだろう。
そういう人と趣味を楽しむことって、すごくおしゃれな時間の使い方だ。


考えごとをしながら歩いていたら見つけた、水たまりの上に寝転んでいる一輪の向日葵。
誰かが落としたのか、はたまた置いたのかはわからないけど、感謝しちゃうな。私も向日葵と一緒に空を見上げた。


この夏、新しく赤縁のサングラスを買った。赤いフレームの好きなところは、自分で選んだという満足感にあふれているところだ。
ファッションのお手本は、子どものスタイリング。「これがいい」っていう気持ちに、正直に。


「あくびが移るなら、それは一緒に住める人だよ」。誰かにそう聞いたとき、友人や恋人のあくびが移ることに気がついて、嬉しくなったりしたっけ。
世界中の呑気で平和なあくびが、移ったらいいな。


気持ちのいい季節には、なるべく外で乾杯したい。ワインの色が陽の光に透けるのが嬉しいから。テーブルに揺れる影にときめくから。
「しあわせだー」って、口に出す。いつもより酔っ払っちゃうね!


「好きな色は何色?」
この質問をするのが好きだし、自分でもよく考える。
今年は、好きな色の傘を買おうか。その色が同じように好きな誰かの目に留まったとき、嬉しい気持ちをあげられるように。


音楽院の周辺で聴いたのは、混ざり合う練習の音。
そして、遠くからやってきて、また遠ざかっていく、路面電車の音。旅先では、景色を眺めるようにして、音を眺める。
それは懐かしいようで知らない音だった。


コットンキャンディのような空と、海。波の音、カモメの声、それぞれのおしゃべり。夏の浜辺の夕暮れは良い。どこまでも、いつまでも、歩いていきたくなる。
飛んでいくみたいに、泳いでいくみたいに。

Essay #4
”一本の線を引くのに必要な時間は、その数秒だけではない。”
画家や書家がその見事な線を引くことができるのは、それまでの経験あってこそ。つまり一本の線を引くのに必要な時間は数秒ではなく、人生の時間そのものなのだと、どこかで聞いたことがある。写真にしてみても、きっとそう。シャッターを押す一瞬は、その一瞬だけではない。もっとずっと前からその時間は続いていて、長い経験の延長線上にあるものなのだと思う。というか、なんでもそうなのだ。服を選ぶのも、そのひと言を口にするのも、誰かや何かを素敵だと思う感情だって、その瞬間に決まってはいなくて、経験を重ねてきた先にあること。そう考えると、すべての新しい選択に、これまでの自分が透けて見えてきたりする。そうしてそんな自分を好きでいるために、善く生きていたいと考える。いつか私にとって最高の一本の線を引いてみたい。たくさんの失敗も、そのためなら笑いとばせる気がするな。天気予報を見るのがいつまでも苦手で薄着で家を出たことを後悔しつつ、これもまた経験と、ちょっと無理やりに自分を納得させるのだった。

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