Luna’s Photo Essay

🇬🇧London COLUMN

April, 2026

May 02, 2026 / CULTURE

誰でも出合いうる偶発的に生まれる幸せなできごとも、心に隙間がないと新しい感情や気づきを得られない。ロンドン在住のフォトグラファー、ライターの山田ルーナさんに、日常のワンシーンをシャッターに収めてもらった。日本では見ることのできない景色を届けてもらう、連載「Luna’s Photo Essay🇬🇧London COLUMN」。余白がないと生み出せない言葉を綴ってくれ、まるで彼女の生き様や価値観を体現したよう。人が抱く感情をそっと愛のあるフィルターで包んだ、情景と共に深く心に刻まれる回。

PHOTO&TEXT_Luna Yamada
EDIT_Mizumo Uehara(PERK)

PROFILE

山田ルーナ/フォトグラファー、ライター

@ymdluna
4歳から音楽の奥深さに触れ、大学生までクラシックピアノに傾倒。その後、趣味だったカメラの腕をストリートフォトで磨き、ポートレート撮影を中心に本格的に始動。“本当にやりたいこと”が見えてきた今、潔い方向転換を遂げ、2025年春からロンドンに拠点を移す。フォトグラファー、エッセイやコラムを中心に執筆を行うフリーランスライターとして活動している。

のんびりと伸びてゆく幸せな午後。青空の下芝生に寝転がって本を開く人、白い紙がやわらかに発光し、やさしく顔を照らしている。
天使に休日があるとしたら、こんな感じかもしれない……。

ホテルの廊下で赤い掃除機を見かけて、思わず笑顔になる。「おはよう、ヘンリー」イギリスでは、このキャラクターの掃除機が一般的。ものを大切にする工夫は、人が楽しく生きるための工夫でもある。

(左)ロンドンのバス。くすんだ窓の向こうを、少女がきらきらした目で何かを眺めていた。彼女は外へと目を向けたまま、隣の母を見ずにフランス語で話しかけている。一方の母親はというと、そんな少女を笑顔で見ている。それぞれが見たいものを見て、視界は愛でいっぱい。


(右)劇場に向かう人を眺めるのが好きだ。皆すこし浮き足立っていて、一人も難しい顔をしている人がいない。
期待で満ちた夕暮れは、暗くなっていく空に反比例するように、明るく鮮やかに見える。
そして気がつく。私もまた、そんな景色を構成する一人なのだと。

ロンドンでは、わりと頻繁にストライキが行われる。
労働環境の改善を求める計画ストライキ。
本数が少なくなったり運休になったりして、ホームは大混雑だが、声を荒げる人はいない。
皆が自分のために働いていて、それを互いに理解している。
自分の大切な何かのために帰路を急ぐ。

窓に映った自分が、なんだか良かった。姿形というよりは、雰囲気だろうか。
人にどう見られるかは気にしないが、自分が自分をどう見ているか、というところには、その分だけ敏感でありたい。
いつも自分を気に入っていたい。

金曜と土曜の夜は、パブが人で溢れる。暖かい日には皆外で飲みたいので、店のまわりはいつも賑やかだ。
空になったプラスチックのワイングラスが、夕焼けを受けて地面に並んでいた。安っぽくて、でも同時に代わりの効かない尊さがあった。

おそらくイギリス人のそのおじいさんは、窓の向こうにそびえるビッグベンよりも、スマホをスクロールするのに夢中。
右へ左へ往復し、たまににっこりしているみたい。何を見ているか気になるけど、じろじろ見るのも悪い。
私はビッグベンを見るふりをしながら、にっこりした。

Essay #3


 4月のとある日曜日、私は朝4時に起きて30分後には外を歩いていた。朝4時というのは早朝でもあり深夜でもあるから、街は眠っておらず、私以外のほとんどの人はまだ昨日に存在しているみたい。私たちは、同じ時間を生きているようで、違う時間を生きていて、でも同時にも生きている。だから一緒にいることを確かに感じられるような時間が嬉しくて、愛おしい。数日前の、暖かな昼間を思い出し、身体をたっぷりと春に浸す恵みのような午後。少し前まで肌寒かったことが信じられない。人々は「今だ! 」と息を合わせんばかりに、眩しい日差しの下へ出て、芝生に寝転び、パブに集う。皆が一緒だった。異なるテンポが、ほんの一瞬、同じ拍子を叩くように。人々の真夜中の隙間を縫って、私は一人朝を急ぐ。知らない人と同じ時間を生きる、あの感覚を心待ちにして。

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