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November 30, 2020 / CULTURE

天才デザイナーの波乱万丈な人生に迫る
ドキュメンタリーフィルム

『マックイーン:モードの反逆児』Blu-ray&DVD 好評発売中
Blu-ray:¥5,280
発売元:キノフィルムズ/木下グループ
販売元:ハピネット・メディアマーケティング
©2018 A SALON GALAHAD PRODUCTION. ALL RIGHTS RESERVED.
監督・脚本:ピーター・エテッドギー 監督・製作:イアン・ボノート 出演:リー・アレキサンダー・マックイーン、イザベラ・ブロウほか
ロンドンに生まれ育ち、23歳でファッションデザイナーとしてデビュー。センセーショナルなショーで世間から注目を浴び、弱冠27歳にしてパリのグランメゾン「ジバンシイ」のクリエイティブディレクターに就任。一方で自身のブランドのショーは過激を極め、やがて“モードの反逆児”と呼ばれる。その後、英国帝国勲章を授与されるまで上りつめるが、富と名声の絶頂にいた40歳で突然自らの命を絶ってしまう。マックイーンの波乱に満ちた人生と、その人物像に迫る物語。

映画や音楽、本にアートといったカルチャーを、『PERK』が注目するINDEPENDENT GIRLがリコメンド。今回は、大阪の人気ヘアサロン[SUMI]でオーナーを務める西坂多恵さんに、イギリス生まれのファッションデザイナー、アレキサンダー・マックイーンの生涯を描いたドキュメンタリー映画の魅力を伺った。

EDIT&TEXT_Yuka Muguruma(PERK)

PROFILE

TAE NISHISAKA

西坂多恵
来春でオープン7年目となる大阪・堀江のヘアサロン、[SUMI]のオーナースタイリスト。サロンワークだけでなく雑誌などでも活躍しており、ストリートのムードを落とし込んだ大人のヘアデザインが得意。
Instagram_@eatxxxtae

観たきっかけと選んだ理由

 西坂さんが紹介してくれたのは、ビョークやレディー・ガガといった著名なアーティストからも支持を得るファッションデザイナー、アレキサンダー・マックイーンの数奇な運命を綴った映画。まずはこの作品に出合ったきっかけを伺った。
「フライヤーに書かれた“恋をするように服をつくる”というキャッチフレーズをたまたま目にして、『絶対観たい!』と思ったんです。ファッションが好きという理由はもちろん、それ以上に素敵な謳い文句に興味をそそられて。昨年公開された作品ですが、大阪では上映している劇場が限られていて、念入りに調べてから観に行ったのを覚えています」
 これはファッションの革命児として知られるマックイーンの人生を、家族や友人、仕事仲間へのインタビューと、当時の映像から紐解いた作品。初めて観た時、西坂さんはあまりのリアルさに衝撃を受けたという。
「家族から見たマックイーンと仕事仲間や友人から見たマックイーン、異なる立場から語られているからこそ、その人間像がとてもリアルに伝わってきました。仲間と無邪気に笑い合うプライベートの動画も何本か組み込まれていて。ファッションを題材にしたドキュメンタリーはほかにもたくさんあるけど、こんなに生々しいものを観たのは初めて。彼のことはブランドや服という表面的なところでしか認識していなかったけど、これを観ることで、一つひとつのコレクションがどれほど苦労して生まれたものなのかを知れました。“天才”のひと言では片付けられない、ファッションを超越した情熱を感じる作品です」

この作品の魅力と分析

 もともとロンドンの平凡な家庭で生まれ育ったマックイーンは、16歳で高校を中退し、高級紳士服店に見習いとして就職。何人かのデザイナーのもとや縫製会社で働いたのち、ロンドンの名門芸術大学で本格的にファッションの勉強をスタート。卒業する際に制作したコレクション“切り裂きジャック”が、当時ファッション界で絶大な力を持っていた『ヴォーグ』のエディターであるイザベラ・ブロウの目に留まり、一気に運命を変えることに。
「たまたま卒業制作のショーを観に来ていたイザベラが彼の服をすごく気に入って、絶対に売れっ子にすると決意したんです。平凡な青年が偶然の出会いによって才能を見出され、のちに名声を得ることになるなんて、本当におとぎ話のようなストーリーですよね。ブランドを立ち上げた時、彼はごく貧しい生活を送っていて。最初に発表したコレクションは、失業保険で購入した生地でつくったものだそう。決してお金に恵まれなかった環境も、『成功したい!』という強い野心に繋がったのかもしれませんね」

 次々とコレクションを発表し、「ジバンシイ」のデザイナーを務めるなど華やかに見える彼の人生は、決して明るいものではなかった。それは彼のコレクションにもはっきりと表れている。
「彼は幼い頃、姉の旦那から暴力を受けていて。その暗い記憶が、彼のつくる服にも強い影響を与えていたようです。マックイーンは『コレクションを見れば、僕の心の中がわかるよ』と語っていて。怒り、悲しみ、押しつぶされそうなほどのプレッシャー、心の内に潜むいろんな負の感情からインスピレーションを得て、服のデザインやショーの演出を考えていたみたい。なかには暴行や病院をテーマにしたコレクションもあって、胸を露出したモデルがよろめきながらランウェイを歩いたり、ガラス張りの病室が登場したり。先鋭的なテーマと過激なランウェイは、注目を浴びると同時に周囲からのバッシングも多かったそうです。それを撥ね退けてまで自分の表現を貫いたからこそ、“モードの反逆児”と呼ばれたんでしょうね」

印象に残ったことと西坂さんの仕事観

「私はこの作品を観て、普遍的な美しさって一体何だろうと考えさせられました。彼は死や怒り、悲しみ、孤独といったものから、驚くほどアーティスティックで美しいものを生み出している。そういった感情があるからこそ、きれい、美しい、優しいといった真逆のものがより引き立つのかもしれませんね。マックイーンは自分で人生の幕を閉じてしまったけど、きっとすごくピュアな人で、敏感であるがゆえに人一倍苦しんでいたのかも。私もヘアサロンのオーナーとして、彼のプレッシャーに押しつぶされそうな気持ちが理解できるんです。ファッションと美容、立っているフィールドは違っても、彼と私は同じクリエイターで。『部下は家に帰ったら仕事を忘れられるけど、僕はどこにいてもマックイーンだから』という彼の言葉がとても印象的でした」
 最後に、ヘアスタイリストとして活躍している彼女のインスピレーションの源を伺った。
「マックイーンは激しい感情を呼び起こすことで、全く新しいデザインや演出を生み出していたけど、私のヘアデザインは、過去に存在していたものから着想を得て、イメージづくりをすることが多いかな。今まで見てきたものや感じてきた香り、温度や色、そこから自分なりのストーリーをつくりながら考えています。今はお客さんも大人の女性が多くなって、美容へアプローチする方法を模索している時期。最近、美容は暮らしの一部だと捉えるようになったんです。デザイン性の高いヘアを考えるのももちろん素敵だけど、それ以上にその人が毎日気持ちよく過ごせるヘアをつくっていくことが大事だなと、少し考え方が変わってきました。どちらにしても、私もクリエイターとしての情熱を持って、これからも仕事に向き合っていきたいですね」

“High&Low” by TAE

— High —

自然食レストラン[mahoroba]での食事

「四季や自然が好きで、休みの日には緑の多いスポットに行くことが多いんです。こちらは自然と食をコンセプトにした、森の中のレストランでのひと皿。鳥のさえずりや光、風を感じながら彩りの美しいごはんを食べていると、とても贅沢な気分になれます」

— Low —

100円のチキンラーメン

「レストランでの食事ももちろんいいですが、チープなごはんも大好き。野外でキャンプをした時などに食べる、100円のチキンラーメンが最高なんです。たった3分、お湯を沸かして袋麺を煮るだけなのに、どうしてあんなに美味しいんでしょうね」

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