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August 25, 2020 / CULTURE

母の強い愛情が描かれた
賛否両論渦巻くミュージカル映画

『ダンサー・イン・ザ・ダーク』監督/ラース・フォン・トリアー 出演/ビョーク他
’60年代のアメリカを舞台にしたミュージカル映画。ビョーク扮する主人公・セルマは、工場で働きながら息子のジーンを育てるシングルマザー。セルマは遺伝性の疾患により視力が失われつつあるなか、同じ病に侵された息子の手術費用のために身を粉にして働く日々を過ごしていた。そんな彼女を待ち受ける、あまりにも残酷な運命とは……。

映画や音楽、本にアートといったカルチャーを、『PERK』が注目するINDEPENDENT GIRLがリコメンド。今回はバッグやアクセサリーを中心としたブランド「キャセリーニ」でプレスを務める二宮奈々さんに、母親の在り方について考えるきっかけとなった映画について伺いました。

PROFILE

NANA NINOMIYA

二宮奈々
1990年生まれ、三重県出身。就職を機に上京し、現在はバッグやアクセサリーを中心としたブランド「キャセリーニ」でPRを務める。ポップな色使いとガーリーなセンスで注目を集めるInstagramも要チェック。
Instagram_@nnmynana

この作品を観たきっかけ

 二宮さんが紹介してくれたのは、アイスランド出身の女性シンガー・ビョークが主演を務める映画『ダンサー・イン・ザ・ダーク』。シネフィルの間でも賛否が分かれるこちらの作品に、心を動かされたという彼女に話を聞いた。
「15歳の頃、友人に勧められてこの作品を観ました。当時はすごく重くて息苦しいと感じたのを覚えています。それが覆されたのは、二度目に観た22、23歳の時。テレビや雑誌でビョークを見かけて、すごく見覚えがあるなと思い記憶をたどると、この作品に出演していた人だったとわかったんです。だけど中学生の私にはあまりに暗いストーリーだったから、気付かないうちに軽いトラウマになっていたみたい(笑)。もう一度観るには、かなりの勇気が必要でした」

セルマの生き方と、二宮さんの母親観

 三重県で生まれ育ち、18歳で親元を離れ名古屋の大学に進学。就職と同時に上京し、現在は都内でひとり暮らしをしている二宮さん。二度目にこの作品を観た時、母親に対する考え方がガラリと変わったという。
「実は私の母もシングルマザーで、セルマたちと同じような境遇なんです。ここまで私を育ててくれた母には本当に感謝していますが、学生時代の私はすごく反抗的で。母も器用なタイプじゃなかったので、衝突することも多かったですね。セルマとジーンの関係性には、どこか自分を重ねてしまう部分があって、だからこそこの作品が心に響いたのかもしれません。以前観た時は、息子のことを思いながらも不器用にしか生きられないセルマに正直イライラしていたんです。だけど大人になると、母親目線で作品が観られるようになって。セルマはどんな状況に置かれても、断固としてジーンを救うためだけにお金を遣おうとする。そのひたむきさは少し滑稽に見えるほどだけど、彼女自身は息子に辛い思いをさせたくない一心で。自分の身を投げうってまで息子を救おうとする姿に、母親の無償の愛を感じました。私の母もセルマと同じように、たった一人で必死に私を守ろうとしてくれていたんだろうな。それってすごく強くてかっこいいことだと思う。母親って偉大ですよね」

衝撃のラストと理想の母親像

 クライマックスを迎えるにつれ、“息子に必要なのは母か、目か”というテーマが描かれていく。決断を迫られたセルマが出した答えに対する、二宮さんの見解とは。
「ラストがどうなるかここでは言えませんが、私はあの終わり方に満足しています。『残酷すぎる』、『救いようがない』といった意見があるのは知っていますが、私ならセルマと同じ選択をすると思う。彼女は母親としての自分の価値を、息子に目を与えることに見出していて。失明して追い詰められたセルマがジーンにしてあげられるたったひとつのことは、未来ある彼に世界を見せてあげることだと思うから。ラストシーンは確かに残酷だし、中学生の私にとってはトラウマになるほどの衝撃だったけど(笑)。生涯を懸けた自分の願いを叶えることができた彼女は、ある意味幸せだったのではないでしょうか。いろんな苦しみや葛藤を抱えつつも、セルマの生涯は救われたのではないかと思います」
 最後に、彼女が目指す母親としての姿について尋ねてみた。
「いつか自分に子供が生まれたら、私はその子と対等な立場で話せる母親になるのが理想です。子供扱いするのではなく、一人前の“人”として接したい。それってすごく難しいことかもしれないけど、頑張ってみようと思います。何があってもその子を守り抜けるような、強い母親になれたらいいですよね」

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