Inner Thoughts #02

〈KANAKO SAKAI〉Designer
KANAKO SAKAI

Nov 29, 2023 / FASHION

ブランド初のランウェイショーを開催
日本の“美”を落とし込んで世界に届ける

ブランドのディレクターやデザイナーたちの、クリエイティブに対する想いを紐解く連載コンテンツ「Inner Thoughts」。8月に開催された「Rakuten Fashion Weeek TOKYO」にて、JFW NEXT BRAND AWARDを受賞した〈KANAKO SAKAI〉のデザイナーに話を伺った。クリーンで都会的なムードのなかに日本の伝統技術を取り入れながら、海外デザイナーズのような大胆さも垣間見られる同ブランド。初のランウェイショーにはどんな想いを込めたのか。

PHOTO_Daiki Sekimizu
EDIT&TEXT_Maria Ito(PERK)

服で表現するストイックなかっこよさと
デザイナー自身のチャーミングさのギャップ

――〈KANAKO SAKAI〉は毎シーズン色づかいが評価されていたり、日本の職人技術を採用されていたりといった印象があります。改めてどんなブランドか教えてください。

「おっしゃっていただいたように、独特なカッティングや色彩を意識しながら日本の伝統技術を現代的に解釈してコレクションに落とし込むようにしています。ニューヨークに留学していたことがあって、その時に感じたことが今に繋がっています。当時は“Who are you” って、お前は誰? 自分とは何者だ? みたいなことを考える日々だったんです。ある時“美”をテーマにした授業で、私は『わびさびに“美”を見出します』という趣旨のことを発言したのですが、一方で隣に座っていたインド生まれのクラスメイトは『美とは左右対称でなくてはならない』と言い切っていて。これまで特別と思っていなかった日本独自の美意識が、違うアイデンティティやバックグラウンドを持った人からしたらすごく面白く見えるんだって気がつきました。このような経験から自身のブランドでは日本でしかできないことをもっと世界に発信したいと思い、毎シーズン日本の伝統技術を落とし込んだアイテムを作っています」

――海外の生活を経て、日本の伝統技術の魅力に改めて気づかれたんですね。〈KANAKO SAKAI〉では「Rakuten Fashion Weeek TOKYO 24SS」が初のランウェイショーということでしたが、振り返ってみて今の感想を聞かせてください。

「ショーが決まって約2ヶ月の準備期間、ひたすら駆け抜けた日々というか。普段関わることのない大勢の人の協力があって、毎日いろんな方と接するのが楽しくて。今回のインタビューもそうですけど、ショーをきっかけに、ブランドを知ってもらうことに繋がったのかなと嬉しく思います。ショーのテーマとしては、ブランドの自己紹介の意味と、このショーをきっかけにブランドが旅に出るという意味を込めて『ようこそ』にしました。京都の丹後の海の煌めきを生地にした〈民谷螺鈿(たみやらでん)〉の貝の織物が、色だけでなく貝の天然模様のゆらめきが、宇宙や海というイメージが今回のショーとリンクしました。貝を織物にするって、おそらく世界を見てもないと思いますし、皇后美智子様がお召しになるような織物なので、数ピースだけですが実現できたことはブランドとしても大きい。今回はジャケットとネックピースなどを作りました。2シーズンやっている藍染の〈Watanabe’s〉は今回もご協力いただいてシャツを作っています。ストイックにかっこいいものを追求している半面、今回のルックではちょっと笑ってしまうエピソードもあったりしました。“ようこそ”を意味する世界中の言葉でビーズ刺繍したアイテムがあるのですが、これは時間がなく母に刺繍をしてもらったんです。『なんとしても完成させなきゃいけない!』と母も頑張ってくれたんですが、準備期間がタイトで星がヒトデみたいな形になって(笑)私もこういう性格なので、もうこれで行ってみようって。なんか見ると自分たちらしいな、と思うんですよね(笑)。こういうところも〈KANAKO SAKAI〉だなって思います」

左 〈民谷螺鈿〉の技術を駆使し、貝殻糸をあしらったネックピース。
右 〈Watanabe’s〉の深みのある藍を落とし込んだシャツ。
ショーのテーマ“ようこそ”が各国の言葉で刺繍されたパンツ。

――クリーンなイメージがありましたが、サカイさんのこういったユニークさも感じられるショーだったと思います。特に印象的だった部分はありますか?

「よかったなと思うのは音楽ですね。スタイリングに合わせて音楽の長さを調整したり、イメージに合わせたりって、服だけじゃなくショー体で〈KANAKO SAKAI〉を感じてもらえるような演出を意識しました。パートナーが音楽オタクで、作業中に流している音楽から制作に影響することもありました。自分一人だけじゃなく、チームでやるからこそできたショーだったと思います。反響があったのは、客入れの時に流した忌野清志郎が歌うRCサクセションの「よォーこそ」。これには起用までのエピソードがあって、忌野清志郎さんはニューヨークにいた頃によく聴いていて、私にとって元気をもらえる思い入れのあるアーティストなんです。どんなショーをやろうか考えていた時、メゾンみたいにかっこいいショーをやりたいけど、シンプルに難しい……。でも、来てくれた人の記憶に残るショーにしたいという想いがありました。そんな時、チームの一人が今回のショーで伝えたいことってこういうことだよねって、送ってくれたのがRCサクセションの「よォーこそ」の動画だったんです。私たちが表現したいストイックなかっこよさと清志郎イズムってアウトプットは違うかもしれないけど、精神性は同じなのかもって。ルックブックでは伝えきれない“KANAKO SAKAI”を、ショー全体を通して表現することができたと思っています」

PROFILE

サカイカナコ /〈KANAKO SAKAI〉デザイナー
2021年より〈KANAKO SAKAI〉をスタート。4年間のニューヨーク生活を経て感じたことがコレクションに大きく影響していて、日本が世界に誇る伝統技術を世界に発信していくことを目標に活動している。

INFORMATION

https://kanakosakai.com
@kanakosakai_official