Domestic Street Mind
Interview
Vol. 02 YOHEI OHNO
With Mana Kogiso
Oct 26, 2026 / HOROSCOPE
スタイリスト・コギソマナさんの“ご機嫌な服好き”な一面と、デザイナーへの深いリスペクトから生まれた連載。第二回目のゲストは、〈YOHEI OHNO〉のデザイナー、大野陽平さん。コギソさんとの息の合った軽快な掛け合いの中で見え隠れするのは、知れば知るほど底なしの魅力に引き込まれてしまう意外なギャップ。常に新しいエレガンスを提示し続けるクリエイターのイメージとは、良い意味で鮮やかに裏切られるインタビューに。丁寧に紡がれていく言葉の端々からは、溢れ出る実はチャーミングな素顔も! どうかたっぷり“沼って”ください。
PHOTO_Kazuki Oshiro
TEXT & EDIT_Maria Ito(PERK)
本連載とは??
真面目なのか、ふざけているのか、そのどちらも楽しんでもらえるような、肩の力がふっと抜ける、クスッと笑えるインタビュー。服はもちろん、作り手の人柄まで、まるごと好きになってもらえますように。「作り手さんを知ることで、あなたの1着がもっと身近なお洋服になってくれた嬉しいです」 byコギソ

はじめに……
〈YOHEI OHNO〉大野陽平の素顔が見えるQ & A
Q1.好きな色
鶯色っていうんですかね。名刺やブランドの靴箱の色にも使っています。
Q2. 誕生日と出身地は?
もうすぐ40歳で、愛知県出身です。
Q3.PERK(パーク)にかけて、好きな公園や思い出は?
近くだと、駒沢公園と砧公園があるんですが、僕は砧公園派です。
Q4.最近もらって一番嬉しかった手土産は?
コギソさんからもった、カレーパンですかね。
Q4.星座・MBTI・動物占い
さそり座
提唱者か仲介者です。
臆病なライオンです。


☝️本連載ではコギソさんのスタイリングにも注目してほしい。この日は〈YOHEI OHNO〉のワンピースに〈SALOMON〉のベストを合わせた。ブランドのパンプスをつなぐのはホワイトソックス。
デザイナーとしてだけではない
“自己開示への転換”
今回40歳という人生の節目にタイミング良くインタビューに伺うことができた。完璧に構築された美しい服を生み出すデザイナーというイメージのある陽平さん。これまでファッションデザイナーという美しくも重い鎧を纏い、業界のシステムの中でもひたすらに走り続けてきた20代、30代。気品や洗練されたオーラの奥からこぼれ落ちたのは、格好つけることのない今の本音でした。

マナ: 今日はよろしくお願いします。陽平さん、まずは自己紹介からお願いします。もう少しで、40歳を迎えるんですよね?
ヨウヘイ: はい、ブランドを始めてからは12年ほど経ちます。今となって思うのは、いかにも「ファッションデザイナー的」な言動がちょっと恥ずかしくなってきてること。ろくろ回しのポーズで「今季のコレクションのテーマは〜」とか語るような動きが、急に恥ずかしく思えてきて……
マナ: まだ始まってすぐなのに、すでに面白いでしょ?(笑) それでそれで!
ヨウヘイ: 自分的には冗談っぽいこと話してるつもりなんだけど、僕が冗談言うってあんまり思われないみたいで(笑)本気っぽく聞こえますよね?
PERK: 確かに、ブランドのクールなイメージがあるから、冗談を言っていいのかドキドキしちゃうのかも。でもなぜ急に「恥ずかしい」って感覚になったんですか?

ヨウヘイ: この間の26AWのショーが終わったあとから考え始めたんですが、今まではファッション業界の中である種“デザイナーという歯車”の一つとして自分の人生を捧げることに抵抗がなかったんです。
マナ: うんうん。
ヨウヘイ: でも急に、自分が今まで向き合ってこなかった人生とか、これからどうやって生きていくのかとかを考えた時に、「別に自分一人だけの人生じゃなくなってくるしな」って思ったんです。
マナ: へ〜! 感動……。
ヨウヘイ: でも、それも嫌じゃないっていう感覚なんです。生活をちゃんとしようとか、もう一回自分の生き方を考え直すという方が、今はすごくしっくりきています。 だから、ブランドとして服を作ることだけではない可能性も挑戦していきたいというのが今の率直な想いです。
洗練された美と好奇心の共存
緻密で美しい服を作る一方で、根源的な洋服への苦手意識をさらけ出す。けれど、布の見本帳や造形に惹かれるという視点からは、少年のように飾らない無邪気な一面が伺えた。

PERK: 〈YOHEI OHNO〉といえば特徴的なシェイプや造形美が魅力ですが、どんなところから?
ヨウヘイ: 20年ほど前にファッションの道に進んだんですけど、実は手先が不器用で、そもそもあんまり洋服が好きじゃないんです(笑)。
マナ: 「好きじゃない」って言い切っちゃった!(笑)
ヨウヘイ: 古着屋さんとかでTシャツがずらっと並んでいるのを見るのは実は結構しんどい。でも、布の見本帳なら一生見てられるんです。服というより、形になっていくものを見るのが好きなんですよね。造形にはずっと興味がある。
マナ: 確かおじいちゃんが和菓子職人で、お父さんが美術の先生なんですよね?
PERK: そういった造形につながる、ものづくりの血が流れているんですね!


純粋な動機を大切に。新しいチャレンジへ
ファッションという文化を愛しているからこその、業界に対する静かなる葛藤があるという。華やかなランウェイの最前線に立ち続けながらも、消費スピードの速い不健全なシステムにはっきりと違和感を口にする陽平さん。そんな彼が今、心からリスペクトし、次なるフェーズの道標にしているものとは。

ヨウヘイ: あと、ファッション業界を見ていても、俯瞰で見ると健康的な業界だとは今は思っていないんです。みんな何かに駆り立てられていて、割に合わないことをしている部分もあるというか。
マナ: そうですね。「なんでこんなに忙しいんだろう」ってみんな思ってますよね。
ヨウヘイ: バランスが取れなくなってきているし、これまでのシステムの中で“ファッションブランド”として存在し続けるのが難しい現状があって。でも、ファッション自体にはすごく魅力を感じているんです。人間としてどう生きていくか、どうありたいかというところと結びついているので。だから、既存のシステムの中で生きようとするんじゃなくて、「ファッションってこういうものだよね」ということを自由に開拓したい。ブランドという枠を超えて事業を展開していけたらいいなと考えています。
PERK: 今まで誰もやったことないようなチャレンジになりそうですね。
ヨウヘイ: 大まかに見れば、同じようなことをやってる人たちはいるかもしれないけど、ファッションブランドっていうものを超えて、事業を展開していけたらいいなと。 日本の町工場とか中小企業みたいなニュアンスが好きで、そういった古き良き日本を支えてきた“中小企業魂”みたいなものを継承していこうと思います。
マナ: 作りがいがありそうなものが生まれそうね。面白そう。
表層的な消費スピードや、業界のシステムに対する違和感。それはきっと、デザイナーだけでなくファッションに携わる多くの人が、心のどこかで多かれ少なかれ抱いているもの。トップランナーである彼でさえ同じ問題に直面し、それでもなお、新しいアプローチでさらなる可能性を広げようとしている。その真摯な姿勢はたまらなく格好良く、話を聞きながら、私たち自身が「これからファッションとどう向き合っていくべきか」を改めて考えさせられるような、深く背中を押される時間でした。
おまけ
今のロールモデルは、愛されおじさん!?
ヨウヘイ: 最近年を取ってきて思うのが、“頑固親父”になるのってすごい簡単なんですよね。「何でもダメだ」とか「許さん」とか言えばいいだけだから。
マナ: 確かに、そういう時期ってありますよね。
ヨウヘイ: スタッフに対する態度とか、このままじゃダメだと思ったんです。最近、アベマTVのある番組に出ているホストクラブのおじさんがすごくかっこいいなと思っていて。 幹部なのに怒られて「すいません」ってヘラヘラ謝ってるんです。でも、人望があって周りから愛されている。そういう人が実は一番かっこいいんじゃないかなって。だから、僕も“頑固親父”になるのは1回封印して、30代に置いていこうと思っています。

Coming Soon…
YOHEI OHNO 26 AUTUMN WINTER コレクション(下記一部衣装を抜粋)を中心にコギソマナさんがスタイリングした、東京で生きるリアルな女性に寄り添ったストリートビジュアルを近日公開!
26AW コレクション
コレクションのタイトルは、理想宮を意味する「Ideal Palace」。フランスの郵便配達員だったシュヴァルが、ある日つまずいた奇妙な形の石にインスパイアされ、誰になんと言われようと生涯をかけて裏庭に石の宮殿を作り上げたアウトサイダーアートのエピソード「シュヴァルの理想宮」からのインスピレーションを受けた。シュヴァルのように「石につまずいて人生の何かを得る」ような純粋な動機や、周りに何を言われてもやり続ける頑固なスタンスに、これまでの自身の生き方を重ね合わせている。




PROFILE
大野陽平 / 〈YOHEI OHNO〉デザイナー
愛知県出身。文化服装学院で基礎を学んだ後、イギリスのノッティンガム・トレント大学へ留学。帰国後の2014年に自身のブランド〈YOHEI OHNO〉を設立し、2015-16年秋冬コレクションでデビューを果たす。構築的で独自の造形美を提案し、国内外で高く評価されている。

PROFILE
コギソマナ / スタイリスト
「今日も明日もずっと、ご機嫌な服が好き」。その言葉通り、日々のファッションを全力で楽しむコギソさんのスタイリングは、見ている私たちまでハッピーにしてくれる。オレンジのリューギワゴンとハーレーを愛車に持つ、ハンサムな素顔も必見。今後、PERKにおける新連載「Domestic Street Mind」の企画・スタイリングを担当していく。