Luna’s Photo Essay

🇬🇧London COLUMN

September, 2026

Oct 10, 2026 / CULTURE

誰でも出合いうる偶発的に生まれる幸せなできごとも、心に隙間がないと新しい感情や気づきを得られない。ロンドン在住のフォトグラファー、ライターの山田ルーナさんに、日常のワンシーンをシャッターに収めてもらった。日本では見ることのできない景色を届けてもらう、連載「Luna’s Photo Essay🇬🇧London COLUMN」。季節の移ろいには、日常のなかでつい見過ごしてしまうような、小さなときめきが潜んでいる。あっという間に過ぎ去るその一瞬を写真に留め、当時の感情とともに記憶を辿ってみる。ささやかな発見の積み重ねが、心を澄ませ、まだ見ぬ明日への期待を膨らませてくれるのかもしれない。

PHOTO&TEXT_Luna Yamada
EDIT_Mizumo Uehara(PERK)

PROFILE

山田ルーナ/フォトグラファー、ライター

@ymdluna
4歳から音楽の奥深さに触れ、大学生までクラシックピアノに傾倒。その後、趣味だったカメラの腕をストリートフォトで磨き、ポートレート撮影を中心に本格的に始動。“本当にやりたいこと”が見えてきた今、潔い方向転換を遂げ、2025年春からロンドンに拠点を移す。フォトグラファー、エッセイやコラムを中心に執筆を行うフリーランスライターとして活動している。

ショートケーキの上のいちごとか、パフェの上のさくらんぼとか。食べていいよって言える人はすてきだ。

窓の向こうに川を見た。西陽が差して眩しかったけれど、目を細めて、できるだけ見つづけた。
スマホでは見られない景色を。

ブレスレットの反射。
持ち主のマダムに“キラキラだね”と目で合図したら“キラキラでしょ”と笑顔を返してくれた。よい旅の始まり。

飛行機を降りて出口へと向かうあいだ、私は家にも旅先にもいない。ガラスの向こう側とこちら側。実像と影のあわい。

どんな人が、どの色の椅子を選ぶのだろう。
好きな色に座りたいと思う人が多かったらいいな、なんでもいいんじゃなくてさ。


『威嚇する白鳥』という絵を思い出し、白鳥だっていろいろいるよなと思う。
優雅な子も、せっかちも怠け者も。一つのイメージでは語れないのだ。

誰も見ていない、何が書いてあるのか分からない落書き。描いた本人以外には意味なんてないのだろう。
本人でさえ忘れているかも。

音楽を聴いている人や絵を観ている人のことを、機会があれば、いつもそっと眺める。見えているものは、皆きっと違う。

Essay #8

 フランスのリヨンで、とても嬉しい写真の仕事をした。帰りの飛行機に乗る直前に見た、きれいな夕焼けが忘れられない。夕陽とおなじ温かくて強いオレンジ色が、じんわり自分の中に染み込んでいく気がした。ずっと写真を撮りつづけよう、と、沈んでいく太陽に誓うような気持ちで、その時私は心に決めた。これは私の「写真を撮りつづけることを決めた記念日」だ。なにかが行われた記念日ってたくさんあるけれど、ただなにかを決めた記念日って、あまりない。でも、これは私の“決めた記念日”。できるかできないかは置いておいて、その方向へと歩きつづける意思を固めた日。30代になって、一つひとつの決定が、より重たくなっていることを感じる。なるべく軽やかに生きていたいけれど、多く持っていたはずの選択肢が、どうしたって少なくなっていく。きっとみんなそうだと思う。キャリア、結婚、母になるかならないか。私の場合は、ロンドンに来ることを決めたのもその一つだった。大小さまざまな“決めた記念日”が積み重なって、これからの私が作られていく。正しさなんてどこにもなくて、それゆえに人生だなと思う。流されるように生きる人生よりも、たぶん愛おしい。
 ロンドンに帰ると、冬はもうすぐそこ。「さむいさむいさむいさむいさむい! 」と小声で唱えながら、今日も街を早足で歩いている。シャッターを切らずとも、いつもバッグにはカメラ。星の形のイルミネーションはすでに道路の上にかかっていて、あとは灯りがつくのを待つばかりだ。吸い込む空気は冷たいけれど、夕陽の温もりは、まだそこにあるみたいだった。

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