Until now,
now and in the future

Street Style Photographer / Journalist
REI SHITO

Oct 26, 2020 / FASHION

クリエイターが考える
これまでと今、これからのこと

今と先のこと、その両方を見据えながら表現を続けるファッションデザイナーやクリエイター。そんな彼女たちに日々のクリエイティブのこと、そして今シーズンとこれからのファッションについて話を伺った。ニューノーマルな日常をポジティブに過ごし、今までと変わらず真摯にファッションと向き合う3人の言葉。

PHOTO_Yoko Tagawa
EDIT&TEXT_Yoshio Horikawa(PERK)

PROFILE

REI SHITO

シトウレイ
モデルを経験後、2004年頃から雑誌『FRUiTS』でスナップをメインとしたフォトグラファーとして活動。08年より世界各地のストリートスタイルに独自の視点でフォーカスを当てる『STYLE from TOKYO』を主宰し、国内外の数々のコレクションに参加。今年6月、YouTube「シトウレイチャンネル」を開設。明朗快活なキャラクターで、新たなファンを拡大中。最近はヨガやウォーキング、筋トレと、心地よい疲労感を得るようにしている。
Instagram_@reishito

ファッションでチア・アップしたい、
ちょっとでも元気になりたいと。
こんな時代だからこそ、
元気が出そうな服というのが自分的にも気分。

――フォトグラファージャーナリストという肩書きにとらわれず、メディアやフィールドを横断されているシトウさんですが、今年の夏前からYouTubeを新たに始められました。

一昨年にWEBサイト『STYLE from TOKYO』を立ち上げて10周年を迎えたんですけど、その時から何かしたいな、何かってなんだろうなというのをずっと思っていて。何かやるなら今までやったことない新しいことに挑戦したいなと。ルーキーになってみたかったんですね。それで一番ニガテなことってなんだろうと改めて思いめぐらせた結果、動画だったんです。もともと本と活字がすごく好きで、動画から情報を得たくないみたいな感じだったからYouTubeもあまり見たことがなくて、正直何となく下世話な場所だとすら思っていました。一番ニガテとしてしていることを始めたほうが、嫌な思いをたくさんするじゃないですか。そうそう、嫌な思いをしてみたかったんです。

――あえて嫌な思いを、というわけだったんですね。私も拝見していますが、毎回引き込まれます。

ありがとうございます。これまでの活動と全く違うところのチャレンジだから、私自身もなんだかんだすごく面白くて。最初はたどたどしかったし、気の利いたことも言えなかったけれど、やっぱり量をこなすことって大事だなって。言葉で何かを表現する時って今までは文字だったから、事前に推敲できました。動画の場合は撮って出しの言葉だから修正ができなくて怖いな、もし変なこと言っちゃったらどうしようという不安がある一方、一発勝負の緊張感がたまんなくって。早いもので開設してから4ヶ月ほどが経ったけど、チャレンジしがいがあるということと、動画にはこれからの可能性をすごく感じています。これまでのメディアと比べて、見ている方々からの反応が全然違うんです。例えば、同じ[スーパー エー マーケット]を紙媒体で紹介する、WEBで紹介するInstagramにアップする、YouTubeに公開するとなったら、YouTubeは実際にお金の動きが違うんですよ。今までどれだけ心を尽くして5、6時間かけて書き上げた文章でもスルーされることもあったのに、1時間くらいの時間で撮影し、その後に編集した動画のほうが大きな反響と経済効果がある。今までやってきたことが、公民館で話していたような気持ちになったというか。公民館でいいこと話すよりも、東京ドームでしゃべるほうが多くの人に聞いてもらえるのかなと。決して紙やWEB、過去の自分の仕事を否定しているんじゃなくて、分母が大きいところで勝負したくなったんですね。特にファッションは分母の小さい世界でいいねって言い合っているからこそ、その裾野を広げるべく分母のでかいところでお話しに行こうって。

――公民館ではなく東京ドーム。わかりやすい例えだと思います。シトウさん15年以上国内外のストリートファッションを追いかけられていますが、シャッターを切りたいと思わせる被写体の特徴を教えてほしいです

いろんな要素があると思うんですけど、まずは自分のスタイルを持っている人。それと根底にファッションを楽しんでいる人。東京でもNYでもどこでも、なんかそういう人ってわかるじゃないですか。好きな服着てウキウキ楽しそうにしている人ってやっぱり目を引くし。あと自分のスタイルがありつつそれを更新できる人っていうのが、私にとって魅力的な人だなって思います。もちろんトレンドって楽しい要素だと思うんですけど、自分のスタイルを持ちつつトレンドを自分のスタイルに上手に取り入れられる人っていうのが本当の上級者だなって。

――街でスナップを撮る際に、その辺りを見極めることは簡単ではないですよね。

そうですね、わりと苦しいこともありますね。自分が何を撮っていいかわかんなくなる時期もありました。特にパリコレの会場とかって、めちゃめちゃカメラマンがいるんですよ。で、有名人が来た時にみんながワ~ッて撮りに行くから自分もつられそうになって、ダメダメそれは違う、みたいな。戒めというか、そこの線引きは意識していますね。名前で撮るんじゃなくて、スタイルで撮るっていう。

――昔も今も、ご自身の審美眼を大切にしながら撮影されていると。それでは、10年以上パリコレに通われていますが、そんなシトウさんが感じられた今シーズンの印象を教えてください。

これはパリコレに限らず、ちょうど3月頃に発表されたコレクションやトレンドが、コロナがあって一旦フラット化されたなと思っていて。“GO BACK BASIC”みたいなものが大きなトレンドとしてあったんですけど、それがコロナでフラット化して、普通の質のいいシャツとかTシャツにデニムを合わせるのがいいよね、みたいに戻ってきてた。それで次の動きとして感じるのが、派手な方向性の服を着たいなって人が多くなってるのかなって。ファッションでチア・アップしたい、ちょっとでも元気になりたいと。こんな時代だからこそ元気が出そうな服というのが自分的にも気分で、“GO BACK BASIC”とは真逆になっちゃってる。たぶんコロナがなかったら、とにかく質のいいコートが欲しいわってなったと思うんですけど、何か今はその気分じゃないのかなって。やっぱり好きな服や自分が似合うと思う服を着ると、勝手にテンションが上がるじゃないですか。だから、やっぱりそこは時代が求めているところなのかって思いますね。あと印象に残ったブランドとしては……。全部良かったからなぁ。「エルメス」、「ロシャス」、「メゾン マルジェラ」。あのタビポンプフューリー超いいですよね! それから「ロジェ ヴィヴィエ」、ジョナサン・アンダーソンの「ロエベ」も今シーズン超ステキだった。上から下まで、バッグなんかの小物も含めて全部良かった。ちょうどさっき[ロンハーマン]に行ってたんですけど、改めて目にして洋服もすごく可愛かった。あと、「ニナリッチ」も高く評価されていると思う。新しいデザイナーデュオになって3シーズン目なんですけど、モダンになった。それまでのデザイナーは可愛いみたいな感じだったのがそこから結構シャープに、なんていうかちょっと「ジルサンダー」っぽさみたいなものが加わったというか。

スタイルは自分のなかに蓄積されていくもの。
聴いた音楽や読んだ本など、
それらから感じたもののすべてがスタイルになるのかな。

――10月20日に発売された本『STYLE ON THE STREET from TOKYO and beyond』ではスタイルについて触れられているページもあります。先ほどお話いただいたこのスタイルに関して、シトウさんはどう捉えられていますか?

なんだろう、言ってみたら性格じゃないですかね。自分の性格がスタイルになっていく、投影されるんじゃないかって気はしますけど、難しいですよね。トレンドは移ろいゆくものだけど、スタイルは自分のなかに蓄積されていくものじゃないですか。これまで生きてきたこと、考えてきたことがファッションとして段々と表れた場合に、それがスタイルになっていくのかな。言葉とはまた違う表現方法。ファッションとして自分を表現するのがスタイルなのかな……、いや難しい! 日々考えてきたこと、見てきたもの、感じてきたことの蓄積の表現発露があって、そこに辿り着くまでのトンネルや道がスタイルというか。聴いた音楽や読んだ本など、それらから感じたもののすべてがスタイルになるのかなって。だから今こうやって話していることもたぶん、いつかの未来にスタイルに投影されるんじゃないかなって思っています。

――考えてきたこと、見てきたもの、感じてきたことの蓄積。とてもわかりやすいです。それではもう少し踏み込んで、“東京のスタイル”についてはいかがですか?

今、街を見ていてホント思うのがすごく90年代だなって。もう、どうした? っていうくらいギュインギュインに90年代。だから街を眺めていてもね、みんなエモい(笑)。90年代って全体的にエモいじゃないですか。それが街に広がってる感じ。カルチャーがポンポン生まれたのが90年代だと思っていて、当時の服を今の10代、20代の人が着ているような印象かな。あと90年代はイェ~イ!! みたいなノリではなくてメロウな感じでしたよね? ダルいのがかっこいいみたいな。クラブとかでもノリノリで踊るんじゃなくて、ちょっと気怠そうな人のほうがかっこいいイメージありませんでした? 気怠かっこいいみたいな(笑)。だから何となく、街も気怠い空気感がかっこいいのかなって。ストリートのファッションにしても、気付く人だけ気付けばいい、みたいな。それまで待つけど、ちょっとは見てほしいというスタンス(笑)。

――わかりますファッションは好きなんだけど、決して誇示しないという(笑)。それもスタイルのひとつなのかもしれないですね。では、これからの時代にファッションが求められていること、ファッションだからこそできることについて聞かせてください。

このウィズコロナの時代、いつも不安と隣り合わせで、心が晴れないまま中途半端なまま進んでるなぁって人たちが多いなと思っていて。で、気分転換が必要だったりするじゃないですか。それがファッションのできることのひとつなんじゃないかと思う。何か気持ち悪いなとか、なんかすっきりしないなって思った時に自分の好きな服を着るとか、着たことのなかったものを着てみるとか、新しいことに、楽しいことに気持ちを向けるだけでちょっと気持ちが晴れてポジティブになれる。根本的な問題解決にはならないかもしれないけど、一瞬でも気持ちを逸らすことによって気持ちが塞がりすぎることを抑止できると思うから。

――ファッションの力って大きいんだなと改めて実感します

ホントにそう思います。気持ちを切り替えることって時間がかかるじゃないですか。ポジティブに行こう、よし明日からポジティブにって、そう簡単にはできない。なのに服を着ただけで、お!? みたいな気持ちに不思議となれますよね。たった一瞬で気持ちを変えられる力がファッションにはある。そう思いますね。

This season’s favorite

ファッショニスタでもあるシトウさんに、今季のイットアイテムを用意してもらった。イニシャルがたまたま同じというキャップやお手製のマスクコード、ワークブーツの主峰まで、シトウさんのセンスと気分が垣間見られるものばかり。

It Item_1

「サカイ」のキャップ
「『サカイ』のSはシトウのSでも(笑)。コレクションの最後にみんながランウェイにバーッと出る時に、全員このキャップを被っていて。もう、これは絶対に買いだよねと(笑)」

It Item_2

ハンドメイドのマスクコード
「『エルメス』のスカーフを細かく紐状にしたものが家にいくつかあって、それをこの撮影のために夜なべして繋げました(笑)。輪っかをクロスするとネックレスにもなります」

It Item_3

L⇒R
「タサキ」のパールネックレス、ピアス、リング
「プティローブノアー」のピアス
「ヒロタカ」のフープピアス
「今まで気分じゃなかったんですけど、急に気になり始めて結構集めています。『レッド・ウィング』もそうだけど、やっぱり定番っていいよなって思った時にパールも浮上してきた」

It Item_4

「レッドウィング」のアイリッシュセッター
「2巡目とかではなく、初『レッドウィング』! わりとガーリーな服を着たい時に、これくらいガチ男子アイテムを合わせるのがいいなって。黒よりもアメカジっぽくて良し!」

New Release

『STYLE ON THE STREET from TOKYO and beyond』
10月20日に発売されたばかりのシトウさん初のスタイルブックには、数多のストリートスナップが収められている。「自分のスタイルを持っている人、それと根底としてファッションを楽しんでいる人。好きな服を着て楽しそうな人は、やっぱり目を引きますよね」

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