PERK

Until now,
now and in the future

「PHOTOCOPIEU」Designer
MISA TAKEUCHI

October 19, 2020 / FASHION

クリエイターが考える
これまでと今、これからのこと

今と先のこと、その両方を見据えながら表現を続けるファッションデザイナーやクリエイター。そんな彼女たちに日々のクリエイティブのこと、そして今シーズンとこれからのファッションについて話を伺った。ニューノーマルな日常をポジティブに過ごし、今までと変わらず真摯にファッションと向き合う3人の言葉。

PHOTO_Yoko Tagawa
EDIT&TEXT_Yoshio Horikawa(PERK)

PROFILE

MISA TAKEUCHI

竹内美彩
滋賀県生まれ。服飾専門学校卒業後、アパレルメーカーの企画に従事。2014年にサンディカ・パリクチュール校での留学を経て、「イザベル マラン」のアシスタントを経験。帰国後の19年秋冬に「フォトコピュー」を立ち上げ、立体的で有機的なフォルムのコレクションを発表。今季で3シーズン目ながらも、名立たるセレクトショップや百貨店で取り扱われている。
Instagram_@photocopieu
      _@misaphotocopi

日本の女性の服に足りていないものをつくりたい、
補いたいという気持ちはこれからも変わらない。

――サンディカ・パリクチュール校での留学を含め、パリではどれくらいの期間を過ごされていたのでしょうか?

サンディカは1年間通っていました。私は日本で企業デザイナーを経験していたので、ちょっと難しい3年生のコースに編入になって、しかも全くフランス語を話せない状況で(笑)。そのあとはデザイナーアシスタントやパタンナーアシスタントを経験するなど、4年ほど向こうで過ごしました。

――トータル4年というのは、その後の「フォトコピュー」の服づくりにおいて相当影響を受けられたと思います。

そうですね。やっぱり一番大きかったのは、それまでと洋服のつくり方そのものが変わったことですね。日本にいる時はフォルムをつくるのがすごく好きだったんですけど、それが当時の仕事では全然生かせなくて……。やっぱり売れる服っていうのはシンプルだし、もうTシャツとジーパンで事足りるんじゃないかって思い悩んでいた時期もありました。自分の好きな服と日々の仕事とが、すごくかけ離れていたんですよね。でも、ヨーロッパにはフォルムを意識した服と日常的に着て素敵な服、どっちも両立しながら洋服をつくっているブランドがいっぱいあるなと思っていたので、そういうのを見てみたいなと希望を抱いていましたね。実際に仕事をしてみて、何かがあって劇的に変わったというよりかは、長く過ごすなかでいろんな経験を積み、向こうのデザイナーと親交を深めながら日本では得られないものを培えたという感じですかね。

――日本では得られない経験。

はい。「イザベル マラン」では、最終的にはスタジオでデザイナーアシスタントとして働いていたのですが、最初はパタンナーアシスタントを経験しました。向こうの会社って、スタジオとアトリエとできちんと分けられていて。スタジオはデザイナーがいるところ、アトリエはパタンナーのほかに、メカニシャンと言ってミシンを扱う人がいるんですけど、明確に分業化されているんです。私は最初アトリエのほうに入って。もともとデザイナーとしてやりたかったので不本意だったんですけど、そこでの経験が一番役に立っているというか、裏側の仕立てがどうなっているかとか、こういうムードはどうやってつくるのかということを実践でどんどんやっていくので、間違いなく今の仕事のベースになっています。日本だととにかく丈夫につくらないといけないとか、きれいにつくらなきゃいけないというのがあるんですけど、逆に向こうではその観点でつくっているとわりと怒られたりとかして。生地の柔らかさや自然で美しい動きが出ないから、そんなところに芯なんか貼っちゃダメとか。日本では洋服にしっかりと芯を貼ってきちんと仕上げることが多いんですけど、フランスはムードを大事にしているから、ふにゃっとしたニュアンスが素敵だと。そういうところを一から学べましたし、いい経験をさせてもらいました。

――世界トップクラスの仕事を間近で見て肌で感じとても貴重な経験ですね。

たまに泣きながら(笑)。フランスの人は適当というと語弊があるかもしれないけど、人やトルソーに布を当ててそのまま型紙をつくるドレーピングにしても、かなり感覚的にやっているんです。日本は“地の目”と言って、生地の縦や横が揃っていないとダメだとされるんですよね。最初、ヨーロッパは日本以上に厳しいのかなと思っていたら、自然なフォルムを大事にするから自由度の高い状態で形をつくっていて。あぁ、これでいいんだ、これを商品にしていいんだってようやく腑に落ちました。

――これまでの考えが肯定された感じですよね。フランスから帰国されて、すぐに「フォトコピューを立ち上げられたんですか? またご自身でブランドを始めようという構想はパリにいた頃から?

一昨年に帰国して、去年の春に会社を設立して秋冬にブランドをスタートしました。もともと自分で、何かしらの形で服をつくって発表したいなとは思っていたんですけど、それがまだ先のことというよりかは、私が「イザベル マラン」での経験をもとに、より自分がこうありたいと表現できる服を模索していて。それで、働きながら自分で服をつくっていくうちに最初にできたのが、今着ているABBEYというドレスです。これをもとに、例えば料理をする人は袖を短くしてとか、ちょっとした差でたくさんのドレスのデザインができてきて。周りの人のためにつくったり自分でも着ていたり、もっといろんな人に着てもらいたいと自然にブランド化していく構想ができましたね。

――そうなんですね。ドレスは以前から好きだったんですか?

ドレス……、好きになりました。もともとはあまり好きじゃなくて、どちらかと言うと上と下で違う服を着て、組み合わせを楽しむのが好きでした。ドレスに興味を持ったのも、フランスに行って服の構造をしっかり研究したことが大きいですね。例えばメンズのジャケットは見応えがあるし、襟まわりとか肩まわりとか、つくり応えもあると思うんです。じゃあ女性の服はどうだろうと考えた時に、ドレスが一番面白いんじゃないかなと。特にウエストまわりと肩まわりは、服を削ぎ落とした時に一番魅せれるところで、そこで自分らしさを表現できるんじゃないかとなりました。なので、今もドレスやワンピースをブランドの中心として捉えながら、そのまわりの服もそれに合うようにつくっている感覚ですね。

――この秋冬で3シーズン目となりますが、つくり手として竹内さんが一番大切にされていることを聞かせてください。

大切にしていること……。日本に戻ってきた際に、先進国であるにも関わらずまだまだ男性と女性の社会的立場の差があるなと痛感しました。日本で働いてた時はなんかおかしいな、でもこれが普通なんだろうなと漠然と思っていたけど、それがフランスに行ったら女性でもこんなに自己主張をしていいんだと感じたんです。それによく人間観察をしていて、日本だとおばあちゃんになったら肌を隠してみたいな感じですけど、向こうだと歳をとるにつれてより肌を見せていこうよとか、派手なファッションを楽しんだりすべてのアクセサリーの色を合わせたり、私が思う日本人の価値観との違いというかハッとすることが結構あったんです。そういうことを経験した者としては、日本の女性も今よりもっと自由に生きていけるんじゃないかという思いがあって。知性があって仕事をしっかりしてるような方々が、おしゃれを楽しめる服があればいいなと思ってつくっています。女性はこうあるべきとかそういうのは、今の時代不要かなと思っていて。それと同時に、今の日本の女性の服に足りていないものをつくりたい、補いたいという気持ちが強くあります。これまでもずっと、これからも変わらない考えですね。

最初にテーマがなくてもルックを撮って、
全貌が見えてきた段階で浮かんでくるものがある。

――その思いは、これまでもこれからも変わらないと。では、この秋冬について聞かせください。シーズンテーマは設けられているんでしょうか?

今季は、より主観的なテーマを設けました。パリに[パレ・ド・トーキョー]という大きな美術館があるんですけど、そこで女性アーティストのカミーユ・アンロの作品を鑑賞したんです。女性的でいて知性もあって素敵だなと思って。壁がブルー一色の大きな部屋で、壁を伝って物事の最初から終わりみたいな、命の始まりから終わりみたいなのを辿ってゆく作品があるんですけど、それが頭から離れなかったんですね。それで去年、日本でも展覧会が開催されたんです。まさか日本でも観られるなんて思っていなくて、同じ作品を2回観た時に言葉では表せないくらい、強く惹きつけられるものがあったんです。部屋の中に青い壁と茶色い置物とかがあって、その茶色い置物が古めかしい土でできた陶芸だったりして。鮮やかなブルーと古い朽ちた色とのコントラストがいいなと思って、そういうものをつくりたいなとぼんやりと思い浮かんだんです。わりとこう、一番初めは色で取り込んでいくというか。そこから自分が今必要だなと思うものとかを織り交ぜて、使いたい生地を見つけたり出合ったりして、それで何をつくるか全体を俯瞰しながら進めるという感じです。

――色の対比。アート作品そのものをモチーフにするのではなくて、見て感じた時のインスピレーションがもとになっているということですね。

そうです。“Buffalo”がシーズンテーマなんですけど、名称は毎回お店に商品が入る直前に付けていて、展示会のタイミングではあまり付けられてなくて。むしろ今回は納品したあとに付けました。取り扱ってくださっているお店の方々には申し訳なかったですけど……。細かく計画立てて、服もこういうテーマでこういう形をやろうと進んでいくんじゃなくて、それこそ最初にテーマがなくてもルックを撮って、全貌が見えてきた段階で浮かんでくるものがあるんですよね。“Buffalo”という名称に関しては今言った茶色い置物というのが牛の置物で、そこがまぁずっと頭の中にあったんですけど、結構バッファローというと荒々しい……。メンズっぽいというかクラシックなんだけど、置物の形からカミーユさんらしい柔らかさのなかにある強さという佇まいも感じられて。最終的には、“Buffalo”という姿勢というか、スタンスがテーマになりました。

――“Buffalo”に辿り着かれた経緯がわかりました。それでは、今シーズン以降のビジョンとしてはいかがでしょうか? コレクションの発表の仕方やラインナップのボリュームを調整しているブランドもありますが。

うちは変わらないですね。お部屋にいることが多くなったからもうちょっとこういう服があったらいいなとか、そういうレベルでは多少変わりますけど、わりと個人的な意思があってつくっているものなので、あまり揺るがないというか。ただ、今の世の中の状況を考えると、日常生活で皆さんが大事にされているコトやモノがより絞られるようになると思うので、そこは意識していますね。まぁ、少しはラインナップを増やしていきたなとか考えることもあるんですけど、基本的には主張性のあるものをつくっているので、そもそも行き場のないものをつくっていないというか。

――いいですね、行き場のない服はつくらないという言葉。

はい。できるだけ無駄なことはしたくないというのがあります(笑)。

Pick up from Collection

“Buffalo”をシーズンテーマに掲げた今季はブルーとブラウンを基調に、竹内さんがパリと東京で目にし、感銘を受けたというカミーユ・アンロの青い部屋の作品“The Place Fox”から着想を得た。そんな秋冬コレクションの一部を紹介。

Pick up Item_1

ミリタリーのジャンプスーツをベースに、柔軟加工によってしなやかさが加わった一着。中のブラウスは、大きなジャカード柄を描き起こすことでアンティーク調のムードを内包する。
INGE ¥63,800、MARIELLE ¥42,900

Pick up Item_2

シルクジョーゼットを3層に織り上げた肉厚ながらも透け感のあるドレスは、1stシーズンから展開。インナーにはミリタリー由来の“段リブ”仕立てのカットソーを合わせた。
ABBEY ¥85,800、TALI ¥19,800

Pick up Item_3

ウールやアルパカに加え、エアリー感を出すためアクリルを混紡したニット。肩の内側にレザーのパイピングを施すことで、柔らかでソリッドな雰囲気と共に立体的なシルエットを構築。
SELMA ¥53,900

Pick up Item_4

ヘリンボーンツイードを2層にしたオリジナル生地を使用したデッキコート。肩口のアクションプリーツによって奥行きのあるフォルムに。そこはかとなく静謐な空気感が漂う。
GRETA ¥115,500

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