My culture_BOOK

Mar 19, 2021 / CULTURE

“伝えること”の大切さを
教えてくれた一冊

『思いを伝えるということ』大宮エリー(文春文庫)
画家、脚本家、コピーライター、エッセイスト、映画監督など、マルチな才能を発揮する大宮エリーが内に秘めたる想いを赤裸々に綴った詩&短編小説。自分の中に芽生えた感情を、誰かに伝えることの大切さを感じられる作品。

映画や音楽、本にアートといったカルチャーを、『PERK』が注目するINDEPENDENT GIRLがリコメンド。今回はモード誌などのモデルとして活躍する中島沙希さんに、人生観が変わった大切な一冊を教えてもらった。

EDIT&TEXT_Yuka Muguruma(PERK)

PROFILE

SAKI NAKASHIMA

中島沙希
1995年、福岡県生まれ。2017年に上京し、ファッション誌やWEBメディア、広告などで多彩に活躍する人気モデル。普段はノンフィクションやエッセイを読むことが多く、あとがきに記された作者の思いにグッとくると思わず手に取ってしまうそう。実はかなりのテレビ好きで、本だけでなくドラマや映画などにも詳しい。
Instagram_@saki_nakashima
              _@ef_ecofriendly 

本を読むようになったきっかけと
この作品との出合いについて

 すらりとした長身と美しいロングヘアが印象的な中島さんは、雑誌や広告に引っ張りだこの人気モデル。読書好きとしてもたびたびメディアに登場する彼女に、本にのめり込むようになったきっかけとこの作品との出合いを尋ねた。
「今は大好きだけど、もともとは本が苦手だったんです。母が読書好きだったので、『この本面白いよ』と勧められることもありましたが、自分から進んで読むことはほとんどなかったですね。それが変化したのは、モデル活動に専念するため上京した21歳くらいの頃。東京に来たばかりで友人や知り合いも少なくて、自然と読書をするようになりました。そんな時期にタイトルに惹かれて偶然手に取ったのが、詩と短編で構成された『思いを伝えるということ』という作品。作者の大宮エリーさんのことはもともと存じ上げていましたが、本を出版されているのは知らなくて。テレビでは何度も見かけたことがあったので、一体どんなことを考えている人なんだろうと気になって購入しました」

伝えることに臆病だった
自分を変えてくれた一冊

 上京したての中島さんは、慣れない街での暮らしとモデル業との両立に思い悩む日もあったという。そんな彼女を変えてくれたのがこの作品だった。
「私は基本的に明るい性格ですが、過去の自分はすごくネガティブで、幼い頃から人間関係に悩むことも多かったんです。特に上京したばかりの頃は、自分の言いたいことがなかなか言えずにモヤモヤした気持ちを抱えていて。自分の思いを伝えるのが怖いと感じることもありました。そんな時、“思いを伝えることの大切さ”をテーマにしたこの作品に出合って人生観が変わったんです。その瞬間に感じた気持ちは、その時にきちんと伝えないとなかったことになってしまう。以前は友人に伝えたいことがあっても、『次会った時に言えばいいか』と放置してしまうことがたびたびあって。実際次に会った時には何を伝えるつもりだったか忘れてしまうことがほとんどでした。だけど、せっかく私の中に生まれた思いだから、相手に伝えないと意味がないと感じるようになって、今はどんなに些細なことでも意識的に伝えるようにしています。例えば、しばらく会っていない人に『久しぶり、元気?』と連絡したり、悩み相談に乗ってくれた友達へ近況報告をしたりすることを忘れないように心がけています。気軽に連絡が取れる時代だからこそできることだし、せっかく便利なコミュニケーションツールがあるんだから、常に伝える努力をしていきたいなと。作品内で特に印象に残っているのは、『でも、やっぱり、こんな個人的で些細なことを人に伝えるということほど怖いことはないように思います。大人になればなるほど、臆病になって面倒になって……』というプロローグ内の一節。私も“伝えることの怖さ”を感じていたので、悩んでいた自分を肯定してくれたような気がして。あんなに活躍している大宮さんでさえ同じような思いを抱えているのだから、私も怖がらずに伝えていきたい。そう考えるようになってから、ポジティブに自信を持って人と関わることができるようになりました」

コロナ禍の今だからこそ
一つひとつの出会いを大切に

「上京前の私を知っている友人には、『東京に来てポジティブになったね』と言われることもあって、それはこの作品に出合えたおかげだと思うんです。最近はSNS上で繋がっている人と実際に会う機会も多く、私もこの仕事をしていると、ずっと会いたかった憧れの人に会えることがあります。そんな時は必ず、『会いたかったです』と伝えるようにしていて。自分が言われるとうれしいからというのはもちろん、次いつ会えるかわからないから、出会えた貴重な機会を大切にしたい。以前は恥ずかしくてできなかったけど、一緒に写真を撮ってもらうこともありますね。 “人と会う”ことが制限される時代だからこそ、自分の気持ちを言葉にしたり想い出に残したりすることを忘れずに、一つひとつの出会いをもっと大事にしていきたいと思います」

“High&Low” by SAKI NAKASHIMA

— High —

表参道[櫻井焙茶研究所]のお茶のコース

「お茶を飲むのが好きなので、自分にご褒美をあげたい時は表参道[櫻井焙茶研究所]の茶房でお茶のコースを。四季折々の逸品やここでしか出合えない銘柄が楽しめ、職人が淹れる本格的な味わいが魅力です。それぞれの風味に合わせて提供されるお菓子やごはんもおいしくて、訪れるたびにワクワクします」

— Low —

おうちでお香を焚きながら淹れるお茶

「おうちでお香を焚きつつ、お気に入りのティーカップで大好きな緑茶や紅茶を楽しむ時間を大切にしています。自分のためにお茶を淹れるのもなんだか心地よくて、リラックスして過ごせる至福のひと時ですね。お茶屋さんで購入したお茶が増えてきて、おうちのストックボックスもお気に入りで溢れていっています」

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