My culture_ART
Jan 29, 2021 / CULTURE
逆境に負けず表現活動を続けた
日本が誇る前衛的アーティスト
映画や音楽、本にアートといったカルチャーを、『PERK』が注目するINDEPENDENT GIRLがリコメンド。今回は渋谷のセレクトショップ[シスター]でオーナーを務める長尾悠美さんに、アートに音楽にとマルチな才能を発揮し、フェミニズムの先駆者としても知られるオノ・ヨーコについて語ってもらった。
EDIT&TEXT_Yuka Muguruma (PERK)
PROFILE
YUMI NAGAO
オノ・ヨーコは尊敬する女性の1人
長尾さんが紹介してくれたのは、NYを拠点に活躍するアーティストのオノ・ヨーコ。伝説的ロックバンド、ビートルズのジョン・レノンが愛した女性というのはあまりに有名な話だが、そのセンスは芸術家としての枠を優に越え、音楽活動から書籍の出版まで、多岐にわたりクリエイティビティを発揮し続けている。長尾さんが彼女に惹かれる理由とは?
「オノ・ヨーコさんのことはもちろんずっと前から知っていましたが、最初はジョン・レノンのパートナーということしか認識していませんでした。それが変化したのが、以前に勤めていた会社で[シスター]を立ち上げることになった13年ほど前。新たに店名を決めるにあたり、自分が今まで観たり聴いたりしてきたアートや映画、音楽を掘り下げながら考えていたんです。その時改めてオノ・ヨーコさんの作品に触れ、決して社会に媚びることなく表現活動を続ける姿勢に感銘を受けました。以来、彼女は私の最も尊敬する女性の1人となっています」
[シスター]の由来とオノ・ヨーコの魅力
次に、オノ・ヨーコと[シスター]との関連性、そして作品の魅力を伺った。
「[シスター]という店名は、1972年リリースのアルバム『Sometime in New York City』に収録されている『Sisters, O Sisters』からインスピレーションを受けたもの。当時のアメリカはジェンダーや人種への差別が今よりも激しく、何にもとらわれず自分を表現したいという意志を持った彼女にとっては、とても生きづらい時代だったようです。この曲の歌詞には、“女性の権利を主張してもっと自由に生きよう”という強いメッセージが込められていて。私もレディースのセレクトショップをつくるなかで、女性の社会的な立場や生き方について考えさせられる場面がたくさんあり、すごく心に響きましたね。彼女は現代アートにおいて特徴的なジェンダーやマルチカルチャーの問題を、半世紀も前から作品の主題にしていて。観客を巻き込みながら展開していくものが多いんです。彼女の生き方や作品を知るうちに、自分自身のなかに無意識のうちに根付いたジェンダー・バイヤスの概念に気付かされ、思わずハッとさせられました。ただ女性としての権利を主張するだけでなく、社会のなかでどのようにありたいかという明確な意思を彼女は持っていると感じます。想像を絶するような逆境下でも自分の意思を貫く、そんなインディペンデントなマインドを持った女性にふさわしいお店にしたいと、『シスター』と名付けました。実は2009年にオノ・ヨーコさんが執筆された本の出版イベントがあった際、お手紙を書いて渡しに行ったんです。その時にサインをいただいた本は、私の宝物です」
フェミニストとしての活動
そんなオノ・ヨーコの影響もあり、彼女はジェンダーの問題に積極的に向き合うようになったという。その活動について話してくれた。
「毎年3月8日は国際女性デーに設定されていて、[シスター]として独立した2018年から、この日に向けてオリジナルグッズの制作や女性アーティストの作品集を集めたイベントを行っています。そこで得た収益は、国連の女性支援団体に寄付しているんです。女性に向けたショップを運営するオーナーとして、そういった社会問題に無関心でいることはできないなと。それに気付くきっかけをくれたのは、やはりオノ・ヨーコさんだったと思います。昨年は[渋谷PARCO]と共に、カナダの刺繍作家とのコラボグッズや館内のミニシアターを利用した上映イベントを企画しました。イベントはあいにくコロナで中止になってしまいましたが、グッズは無事販売して収益金を寄付することができました。今年も新たなイベントの準備を進めているので、楽しみにしていただけたらうれしいですね。もっと女性の役に立ち、応援していただけるようなお店づくりや活動を今後も続けていきたいです」
“High&Low” by YUMI NAGAO
— High —
「コペルニ」のスワイプバッグ
— Low —
ヴィヴィアン・サッセンのトートバッグ
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