To a Sustainable Future

conversation part.2

Jun 28, 2021 / FASHION

“循環”する社会を目指す
彼女たちのサスティナビリティ

小さな工夫こそ明るい未来を叶えるカギ

イコーランド トラスト アンド インティメントのセットアップ

NOMA ハンナと同じく私にも捨てられないものがあって、それは仕事でもらったコスメと失敗したポラロイドカメラの写真。真っ白になってしまった写真をキャンバス代わりに、余ったコスメを画材に用いたアート作品を10年ほど前から作っています。ポラロイド写真自体がすでにキャンパスみたいだから、なんだか捨てるのがもったいなくて。自分の脳内宇宙を、アートとして描き出しています。

ハンナ 面白い! それはどうやって作っているの?

NOMA ポラロイド写真を一度解体した後、中の液体を雑巾で拭いて、中から出てきたキャンバスに自分の脳内コスモを描いていく。最初は普通の画材を使っていたんだけど、せっかくキャンバスが廃材なんだから、顔量も全部循環させたいと思って。家にある大量のコスメのサンプルを粉砕したり液体と混ぜてみたり。それを使ったアートが今では100点近くあって、一昨年初めて展示を行いました。

ハンナ 私も小学生の頃、色鉛筆の芯を削ってグラデーションで絵を描くのが好きだったな。折れた色鉛筆の芯を小さなガラスの箱に溜めていて、その芯を砕きながら絵を描いてたの。

NOMA 皆それぞれに捨てられないモノがあって、いろいろ工夫しているんだね。ハンナのダーニングもそうだけど、リデザインやリメイクがファッションブランドのサービスとしてもっと普及すれば、よりスムーズに循環する社会になっていくかも。

ハンナ 「ゾゾタウン」などではすでに似たようなシステムが導入されているけど、大量生産じゃなく正確にサイズを測って洋服をオーダーメイドできるようなシステムも増えればいいのにね。そういった服をお直しして着るのが当たり前のことになるような、そんな世の中になればいいな。

NOMA 私もそう思う。そこに日本ならではの文化や制法が加わるようなスタイルがあっても面白いかもしれないね。そんな未来の実現を楽しみにしています。

 — HANNA’s PICK UP PRODUCTS! —

鉄製のフライパン
「フッ素を用いたテフロン加工のものは剥げると身体によくないし、すぐに剥げてしまうから苦手で、この鉄製のフライパンは10年以上愛用中。焦げ付いてしまった部分はヤスリで削って、繰り返しメンテナンスしながら使っています」
「野田琺瑯」のフードコンテナー
「『野田琺瑯』のフードコンテナーは、プラスチック製の10倍くらいの値段がする分、この素材ならではの質感や重み、洗練された見た目がとても気に入っています。電子レンジは使えないけど、直火やオーブンにかけられるから機能的だし、やっぱりお気に入りのプロダクトを大切に長く使っていけたらいいなと思うんです」
修繕して使っている茶碗
「これは、金接ぎならぬ“アルミホイル接ぎ”で割れ目を修繕。実際の金接ぎは金箔と漆を用いるからすごく大変だけど、合成樹脂の接着剤を使うと、おうちにあるもので簡単にできるんです。私は金の代わりにアルミホイルを使いました」
自身で採取した粘菌
「パンダやホッキョクグマなど、地球温暖化や乱獲による絶滅危惧種のレッドリストは人間が感情移入しやすい生物に偏っていると感じていて。地球全体の生態系を考えると、全く人に認識されない生物だって重要なんですよね。粘菌もそのひとつで、私も興味を持つまでは名前さえ知りませんでした。だけどいざ注視してみると、湿った葉っぱの裏に這った跡があったり、至るところにその存在が垣間見えて。私にとって粘菌は、表面だけで物事を判断せず、本質までしっかり見極めることの重要性を思い出させてくれる貴重な存在です」
エコロジー関係の本
「ライフワークの一環として、エコロジー関係の本を読んでいます。(左から)人間の文化と自然を包括的に捉えた南方熊楠による『闘う南方熊楠』と、自然を人間の外部として考えることを批判して新しいエコロジーを提唱するティモシー・モートンの『自然なきエコロジー』。そして、現代の環境問題で取り上げられることの多い“人新世”がテーマの回の『現代思想』のバックナンバーを持ってきました」