The Favorites Forever
〈ウーア〉ディレクター
Feb 27, 2025 / FASHION
あの人のアイデンティティが表れた
ずっと手放せないファッション


トレンドと程よい距離を保ちながらマイスタイルを楽しむ“INDEPENDENT GIRL”が、昔も今もこれからも手放せないアイテム。そんなフォーエバーな服には、彼女たちならではのアイデンティティやセンスの一端が映し出されているはず。連載12回目は〈Uhr(ウーア)のディレクター、濱中鮎子さんが登場。“つなぎ”を紹介してもらった。
PHOTO_Yu Inohara
EDIT&TEXT_Yoshio Horikawa (PERK)

PROFILE
Ayuko Hamanaka
濱中鮎子/熊本県出身。東京の大学を卒業後、新卒でセレクトショップに入社。販売、プレス、ディレクターを務めたあとに独立し、2018年春夏シーズンより〈ウーア〉を立ち上げる。時代のムードを反映しつつも大人のチャーミングさがちりばめられたコレクションライン、さらには自身のスタイルに不可欠なアイテムを集めた〈ウーア エッセンシャルズ〉も展開。趣味はキャンプとナチュラルライン。
@ayukohamanaka
@uhruhruhr
きちんとした格好で過ごしたい日や
髪を切って新しい気分の時に着たくなる
用意してもらったジャンプスーツに視線を向けながら、「つながった服、すぐに欲しくなるんですよね。やっぱりいいなぁって(笑)」と濱中さん。10代の頃から〈マルタン マルジェラ〉や〈ヘルムート ラング〉をはじめとしたメゾンブランドに強く憧れ、15年近く勤めていたセレクトショップ時代にはモードやストリート、ワークにミリタリーといったオーセンティックなアメカジと、多くの服に袖を通し、その時々の気分に寄り添いながら自分らしいスタイルを謳歌してきた。そんな彼女がジャンプスーツやオールインワン、オーバーオールなどのつなぎに夢中になってからというもの、自身が手がける〈ウーア〉のアイテムも含めて気が付けば20着以上を所有するほどに。
「いつ頃から惹かれ始めたのか定かではないんですけど、やっぱりある程度年齢を重ねてからのような気がします。つなぎって2つの軸があると思っていて。今日はワンピースじゃないなっていう気分の時、難しいことを考えずにストンと着られて一枚でキマる、まさにユニフォームのように着られるのが一つ。その一方で、同じつなぎでも合わせる服やシューズ、アクセサリーによって見え方が全然違うから、奥が深いというか純粋にコーディネートを考えるのも面白い。便利でいて楽しいアイテムだと思います。組み合わせも自由ですし、あまりトレンドに左右されることなく着られますしね」
このようにつなぎの魅力を分析してくれた濱中さん。もちろん、ほかの服を着ることもあるけれど、ジャンプスーツやオールインワンはふとしたタイミングで手に取ることが多いという。
「さっき話したようなラフに着ることもあるんですけど、今日はちゃんとしたいなという日に選ぶことも結構あります。気持ちがパリッとするので、セットアップと似ていてきちんとした格好で過ごしたい日に着たい。それに、髪を切って新しい気分の時に着たくなる服でもあります。なんでなんだろうな、髪を短くしたら必ずつなぎに袖を通したくなるんですよね(笑)」
ヘアスタイルを変えると開放的で軽やかな気持ちになるというのは、誰もが経験したことがあるはず。そういった気分まで一新した時に着たくなるというポジティブなエピソードに、共感を覚える人もきっと多いに違いない。

TFF 1/8
パジャマシャツとは似て非なる、着こなしのレンジが広がる一着
シャツ生地を使い、フロントには存在感のあるダブルボタンが施された〈ウーア〉のもの。「パジャマっぽい雰囲気のシャツはたくさんあるけど、つなぎはないかもと数シーズン前に作りました。ジャケットを羽織ったり腰巻きしたり、シャツよりもスタイリングの幅が広がります。この上からシアーなニットを重ねてストライプが透けるように着るのも好きですね」

TFF 2/8
女性らしさのなかにメンズっぽさが香る絶妙なさじ加減
メンズウェアのディテールを上品に落とし込む〈サワタカイ〉のジャンプスーツ。「ドレスライクで上品なんだけど、メンズブランドを経験されているだけあって小ぶりなラペルやポケット、光沢のない粗野なタッチなど、全体のバランスがすごく素敵でずっと手放せずにいます。フロントのこの短い幅の間に、ここまでボタンを加える!? っていうのも面白い」

TFF 3/8
骨太なミリタリーアイテムを品よくモディファイ
〈ウーア〉を立ち上げる前にディレクターとして携わっていた〈アールジュビリー〉のつなぎ。メンズブランドと同じ生産背景で作られているだけに、ヴィンテージと見紛うほどの加工具合が魅力。「見ての通りUSアーミーをモチーフとしているんですけど、あまり身体を拾わないゆったりめのシルエットや胸元の開きなど、女性らしいアレンジが気に入っています」

TFF 4/8
ノンストレスで着られるボリュームのあるワーク服
濱中さんの前職の先輩にあたる須藤由美さんが手がける〈ロドリリオン〉のデニムオールインワン。「確か1stシーズンのアイテムかな。この攻めたレングスとガバッとしたワイド幅が好きで、須藤さんに『鮎子は会うたびにこれ着てくれてるな』と言われるくらい(笑)。身体が覆われているような着心地で、休みの日に子供と過ごす時も楽ちんです」