Interview with
AUTO MOAI

Jul 06, 2022 / CULTURE

アーティスト、オートモアイに訊く
これまでのことと
今回のエキシビションのこと

“表情を描かれない人々”が描かれる作品もさることながら、自身も匿名性を保ちながらアーティスト活動を続けるオートモアイ。2015年から取り組むアートピースの制作に加え、〈シュプリーム〉や〈ニューエラ〉、〈チャンピオン〉といったブランド、さらには音楽シーンにもアートワークを提供するなど、今や世界が注視する存在に。そんな同氏の個展『I wanna meet once again if like that dream』が、ミヤシタパークの「SAI」にて開催中。今回のエキシビションの見どころ……の前に、初期の創作活動や独特の世界観としか例えようのない作風について話を訊いた。

PHOTO_Haruki Matsui
EDIT&TEXT_Yoshio Horikawa(PERK)

AUTO MOAI

オートモアイ / 2015年よりモノクロ作品の制作をスタート。
18年からはカラーも取り入れ、匿名性の高い作品を多数発表。
『I wanna meet once again if like that dreamでは、
“記憶の中の霊性”をテーマに、
不確かな記憶でも確かにそこにある存在として
霊の存在を重ね合わせ、
降霊術のような感覚で制作に取り組んだ。
@auto_moai

まばらに散らばっている
記憶が降りてきたような、
言ってみたら“激ヤバ走馬灯”
みたいな感じ。

——最初に、アーティスト活動を始められたきっかけを教えてください?
「よく聞かれるんですけど、特にこれといった理由がなくて。多分、みんななにかを始める時ってそんなに大したきっかけはなくて、なんとなくやってみようかな、みたいな感じで始めると思うんですよ。多分、自分もそういうことだったのかなって。初めはケント紙に水性マーカーとかミリペンとかで描いていて、画材とかも全然わからなくてあるものでやっていました。(創作活動を始めたきっかけを)台湾の新聞のインタビューで答えたのは、確かインフルエンザにかかってすごく暇だったから、みたいな感じだった気がします(笑)。あとはスキャンをする前提でやっていました。写真に撮ったものを2階調して、ネット上にあげるというのが初期の頃の活動で」

——そうだったんですね。ご自身で描いた絵をスマホで撮ってスキャンして。
「そうです。展示をすることよりも、SNSにアップするのが楽しくて。反応が返ってくるのも嬉しいし、それで続けていたという感じです。スキャナーもあったんですけど、ケータイやPCで見る程度であればiPhoneのアプリで事足りるので。その頃は日記みたいな要素があって、一日1枚か2枚くらいにその日あった出来事みたいなことを描いていたんです。現実で起きていたことなんですけど、絵に起こすとちょっと非現実的なものになる。今回の展覧会とも通じているところがあって、写真で撮ったものと人間の記憶というのは違うので、自分の心象風景みたいなものが少し入ってくる。だから、月を見た時にバナナみたいな月だと思ったらバナナを描いてみるとか、そういう感じで作品をつくっていて。周りの人に話すと変わってると思われるような、自分で感じたことや夢の中のことも、日記のような感じで描き留めていましたね」

——その時々のフィーリングというか。
「フィーリングですね。例えば、酔っぱらっている時とかに、普段と景色の見え方が変わったり、全然面白くないことに爆笑したりするじゃないですか。あの感覚と近い。それとか、みんなで山を登ってそこから景色を眺めていても、それぞれがまったく同じ場所に立てるわけではないから、一人ひとり少しずつ違うものを見ていますよね。景色の受け取り方もそれぞれ違うから、私の日々の受け取り方みたいなものを忘れてしまう前に描いていたんです」