Food Community

Vol.4 boat🚢

Jul 30, 2026 / CULTURE

話題の新店舗を巡り、新境地開拓を楽しむことも一つだけど、食を知り尽くす飲食店オーナー・スタッフが本気でおすすめする、ホットな店を訪ねるのも間違いないはず。とっておきの店を教えてもらい編集部Mizumoが巡る、フーディストによる数珠繋ぎ「Food Community」。 第4回目は「Lunette」のオーナー井上さんのレコメンド、炭火焼き料理とナチュラルワインが堪能できる「boat」へ。「Lunette」の周年イベントを第2回目に登場した「local du club」で開催したこときっかけに、「boat」店主の半田 直さんと知り合ったそう。本企画を重ねるたびに、“同じ業界で働く者同士だからこそ、育まれるつながり”を強く感じる。今宵もおいしい食事とお酒、そこで生まれる会話や空気感を存分に楽しんできます🚢🍷

PHOTO&MOVIE_Ataro Dojun
EDIT&TEXT_Mizumo Uehara(PERK)

 幡ヶ谷駅を降りて、六号通り商店街を抜けた先にひっそりと構える「boat」。ガラス窓からワインが陳列されており、店内の温かい灯りが漏れている。隠れ家のように静かに佇むような店は、何度行っても緊張します。入店すると店内が一望でき、奥にテーブル席、2名席、カウンターと用途によって使い分けもできそう。カウンターに着席し、早速半田さんにメニューの説明をしてもらいました。

Order, 1

鯵と四葉胡瓜のソース ディル¥2,200
白ワイン Tommy Veron「NOROC 2024」¥1,400

 半田さんの説明は簡潔明瞭で、気になるメニューがたくさんあって選びきれないなか、旬の食材やイチオシのメニューを提案いただきスムーズに決定。前菜は「鯵と四葉胡瓜のソース ディル」をチョイスしました。“四葉胡瓜(スウヨウキュウリ)”とは、中国から伝わった昔ながらの品種で、普通の胡瓜より水分量が少なめで旨みをしっかりを感じられるのだそう。オリーブオイルとビネガーを合わせて、半分は細かく角切りに、もう半分はピューレ状にしさらっとしたソースに仕上げている。歯応え抜群の大ぶりの鯵がマッチして、最高の逸品でした。魚も新鮮でおいしいですが胡瓜のソースの旨みがすごく、ソースとワインでいただいてしまうほど虜になりました。「そう言っていただける方が多いので、ソースを多めに乗せてます」と半田さん。やはり……、これは少しずつ時間をかけて大切に食べ進めたい。ワインは白桃の果実みにほんのりハーブを感じる、「NOROC 2022」をいただきました。キリッとした酸みもあり、この日が猛暑かつ湿度が高い風呂場のような気候だったので、じめっとしていた気持ちがすっきりと晴れ、爽快な気持ちになりました。

Order, 2

焼き野菜の盛り合わせ(一人前)¥1,400

 続いて、店の看板メニューでもある炭火焼き料理を堪能させていただきました。旬の野菜をふんだんに使用した「焼き野菜の盛り合わせ」は、問屋さんから仕入れている国産野菜を、それぞれに合わせた焼き加減で仕上げていて、荒めの塩に赤パプリカのピューレソースで余白を活かしたプレーティングで、芸術的なひと皿に昇華。繊細かつ的確に火入れされた野菜は個性や甘みが引き出され、素材の力強さを感じました。炭火ならではの燻香が重なり、野菜だけでも満足感がある。素材そのままの甘みやみずみずしさを堪能するのもよし、塩やソースで変化をつけて楽しむのもよし。多種の野菜と向き合える時間は心が整い、とても幸せなひと時でした。当初は肉料理の付け合わせで、野菜料理を提供していることが多かったそう。それを肉は肉で、野菜は野菜で分けたことでそれぞれが主役として引き立ち、最もおいしい形で味わえるのも魅力の一つだと思いました。

Order, 3

岩手県 田村牧場さんの短角牛 炭火焼き¥4,800
赤ワイン San Fereolo「San Fereolo 2017」¥1,400

 そして、メインの肉料理「岩手県 田村牧場さんの短角牛 炭火焼き」。昔ながらの熟成方法で28日間の“吊るし熟成”を経た短角牛を、的確なタイミングで火からおろし、丁寧にカットされる一連の光景を眺めていたら、半田さんの「うわ、これはおいしいわ」のひと言で期待が猛烈に高まりました。見て分かる通り、肉汁が表面から溢れていてキラキラしてる……。ひと口食べた瞬間に、肉汁が広がり噛めば噛むほど味わい深く感動ものでした。「低音調理で休ませたお肉はやわらかいけど、高温でしっかり焼いて肉汁が滴り落ちるお肉の方が臨場感が出るし、ある程度肉汁が暴れている感じが個人的に好きなんですよね。でもやりすぎない絶妙なバランスを探って提供しています」。その絶妙な火入れへのこだわりがひと皿に確かな説得力を与えていました。横に添えられたイタリアンパセリとケッパー、ニンニクを合わせたソースをディップすると、これまたパンチがものすごく効いていて、脳に衝撃が走るおいしさ。こだわり抜いた牛肉には、赤ワインの「San Fereolo 2017」を選んでいただきました。口の中がキュッと締め付けられるような渋みと深いコク、ブドウの果実みも感じられる複雑な味わいで、料理の輪郭がより鮮明に浮かび上がる見事なペアリングでした。

 食材探しから炭火料理の火入れ、ワインのセレクトまで、すべてに明確な意思が宿る「boat」。一人で切り盛りされている半田さんに、なにを糧に頑張れているのか率直な疑問を投げかけると、即時に「お客さんの笑顔ですかね」と少し照れたように笑う姿が印象的でした。「シンプルに楽しいからっていうのもあります。前菜には鯵があったり、鰯もあったり。本当はどちらかでいいものも、僕がやりたいからどちらも提供している。やりたいメニューを自由にできるのって一人でないとなかなか実現できないし、自分が楽しめていることがいちばんの理由ですね」。お客さんの笑顔を思い浮かべながらも、”自分が楽しめていることがいちばん”という飾らない言葉に、boatらしさが詰まっているように思えました。

Mizumo’s little voice💭

カウンターに隙間なく、そして高く積まれた食器は手元を見せないための工夫だという。全貌が見えないからこそ、料理が出てくるまでの時間も高揚感を誘う、一つの素敵な演出だなと感じました🍽️🫀


Information
boat
東京都渋谷区本町6-38-10
TEL_03-6276-7987
19:00~23:00
営業スケジュールはInstagramをチェック。
@boat_hatagaya

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