Sep 20, 2024 / CULTURE
西洋占星術師の淡の間による
PERK的12星座コラム
古代ローマの詩人·マニリウスは、著作『占星術または天の聖なる学(Astronomica )』の中で、人間の事象や地上の出来事を占星術的世界観と結びつけました。彼が解いた星の世界のように、この世のさまざまな出来事や生活、文化(Culture)を占星術的世界観と結びつけてみること。日常に溢れる占星術的象徴を示すカケラを拾ってみたり、単独化された一つのピースとしての「星座占い」ではなく、「星の影響はすべて自分の中にある」と体験してみること。そんな風に、たまには占いだけではない「星」の入口があってもいいのでは? 「私は〇〇座だから」という一方向だけの狭いキャラ付けにとどまるだけではもったいない。「私の中にもこの星座の世界が存在しているのかな?」という広い視点で感じてもらえたら嬉しいです。この連載が一周する頃には、「ASTRONOMICULTURE」を通して内なる多面的な星座の世界のグラデーションやレイヤーを感じることができますように。今月は天秤座のおはなし。
TEXT_Aynoma
ILLUSTRATION&TITLE DESIGN_YUUKI
EDIT_Yoshio Horikawa, Maria Ito(PERK)
天秤座の季節
天秤座の精神性
天秤座の生き方
天秤座の信念
天秤座の時期に生まれた人たち
次なる旅への誘い
天秤座の季節
太陽が登ってから沈むまで、一日の昼と夜の長さが等しくなる日を秋分と春分という季節の節目とし、“もっともあの世に近い日”といちばん初めに考えたのは誰でしょうか。太陽が東から登って西に沈む様子を、あの世とこの世の距離の長さに例えた昔の人は詩的ですね。そんな秋の彼岸と呼ばれる秋分を迎えると占星術の暦は天秤座の季節へ突入します。「春分」こと牡羊座のターンから始まった12星座の成長の旅は、ここでようやく中間地点。「私とは何か」と問い続け、ようやく今の自分を「客観視」できる位置へと進みました。
天秤座の精神性
12星座のグループを大きく分類するならば、動物、人間、無機物という3つのグループに分けることができます。人間である双子座と乙女座と水瓶座(=ガニュメーデーという美少年)は、人間理性を持った存在。では、それ以外の動物名の星座はというと、実は本能優先。そして、唯一の無機物である天秤座は、物事を感情ではなく理論やその場の空気を通して察することができるもの。神話では正義の女神・アストレイアが、人間が持つ善悪の質量を測る道具として使われた魂のはかり(天秤) の物語が有名で、これは天秤座にまつわる有名なエピソードでもあります。つまり天秤座とは、12星座のグループの中でもっとも客観的に最適な自分の立ち位置を測ることができる性質とも言えます。
天秤座を管轄する支配星(影響力の強い天体)は金星。愛と美と、この世の喜びを支配する女神の星です。12星座のグループの中で金星の支配下に置かれるのは、天秤座のほかに牡牛座というサインがありますが、この2つの星座にとっての“美意識”は、少し差異があります。
牡牛座にとっての喜びは、自らの感覚優位的な快楽(食べる、嗅ぐ、見る、聴く、触れるなど)であることに対し、天秤座にとっての喜びは左右均一黄金比率的な美やその場の調和、いわば「気」の質、または数値的な秩序によるもの。何かに突出してこだわり尽くすというよりも、トータルバランスで見た均一美を重視する傾向があります。「気」とはいわばバイブス、時代の流れのことですが、その人が選ぶものが時代を象徴するようなブームになったり、手をかけたものがひと際洗練される傾向にあったりすることからプロデュースやマネジメント、そして接客や営業向きの性質を持ちます。時代の先を読む力にも長けているばかりでなく、関わるものや人をバランス良くまとめて着地させる、調和の魔術師的な裁量も持ち合わせています。もっと簡単に言うと、こだわりがあるように見せてミーハーだったりします。
天秤座の生き方
天秤座の人生のテーマは「出会い」です。必要な「縁」が、必ず必要なタイミングでやってくることを知っています。自分にとってふさわしい場所や人間関係を無意識に嗅ぎ分け、引き寄せる力にも長けています。または、誰かがあなたを通して「何か」と出会うこと、その出会いの橋渡しや仲介を喜んで引き受けます。あなたの振る舞いや行動を通して誰かの喜ぶ顔を見るのが、とても嬉しいのです。あなたがこの人生で出会うもの、人、すべてがあなたが引き寄せた愛そのもの。そして、あなた自身が「この世界の何か素敵なもの」と出会うことで自分を成長させることができるばかりでなく、関わった物事を自然と洗練させる(あるいは流行らせる)力を持っている、ディレクターでもあるのです。自分の言動や、行動が良い気の流れを生み出すことや目の前の人物がどんな言葉を求めているかを無意識に察することができるので、サービス精神に溢れています。結構、天性の人たらし的な資質を持っています。
そして、そんなことをしていると自然とお声がかかることも多く人付き合いが増えてくるってもんだから、とにかくONとOFFの切り替えが重要です。つまり、静と動のバランスが人生の充実度に繋がっていると言っても過言ではなく、動いた分だけ(気を遣った分だけ)しっかりをお休みを取る必要があります。逆に言えば、あなたほど休息が必要な人はいません。表面的に気配りや振る舞いを完璧にしようとするあまり疲弊することが多く、外で見せる姿が完璧であればあるほど家では誰にも見せられないほどダランダランにならなくてはいけません。“見られていないところは結構手を抜く”という要領良しなところがあるのでその辺りは心配しなくても大丈夫だと思いますが、人に見せないところで器用に努力をする人なのです。また、仕事とプライベートの住み分けができないとストレスが溜まりやすくなる傾向があります。SNSを使うなら裏アカウントとメインアカウントを使い分けることをおすすめしたい星座でもあります(あるいは持っている率も高いかも?)。とにかくずっと気配りが完璧な自分でいる必要はありません。たまに毒を吐いたって、他所行きじゃない自分だっていいのです。しっかりOFFを作ることも手を抜くことも、それが天秤座のあなたにとって大切なセルフケアであり、セルフラブというもの。きれいな自分だけでなく裏側の自分こそ愛してあげましょう。
肉体で言うと、関連部位は腎臓と腰。腰は骨格を支える「要」で、腎臓は血液を作り毒素を排出する部位。いずれも健康の「要」を司る場所っていうこと。決して無理は禁物。腰が痛い、疲れが取れないのは自分のバランスが崩れている健康のバロメーターと心得ておいてくださいませ。
天秤座の信念
天秤座の向かい側に位置する牡羊座の基本性質が「主観」だとするならば、天秤座は「客観」を司ります。相手が何を望むのか、または自分が求められていることを瞬時に嗅ぎ分けられるという場を読む力に長けています。冒頭に、天秤座という性質のことを動物でも人でもなく無機物と記しました。これは、決して天秤座生まれの人たちに生きた血が通っていないということではありません。それは、感情を抜きにしてもっとも然るべき振る舞いを選択できる機転や、場の空気を読む力、何より客観的に自分の立ち位置や行いを見極める能力(ツール)のことを示しています。
12星座を「4つのエレメント」という構造で分けるなら、天秤座が該当するのは風のグループ。「風」は目に見えないけれど、確かにそこにある自然物。またはその場の空気感、繋がり、雰囲気、そして関係性の中に現れる共鳴の現象を表します。ご縁とは「自分と対峙する目の前の対象こそ自分である」という鏡の法則のようなもの。それをもっとも本質的に体験できるのが天秤座の領域です。例えば、日本の神社の祠の中にはご神体として鏡が置かれてある神社があり、これは詣る者の本質やかけた願いがそのまま返ってくるという意味があります。それは「この世界にあるすべてのものから自分の姿が投影される」という、共鳴共振・宇宙の本質的な世界観とも共通しています。天秤座の生き方を示す世界観、「出会い」の本質もまた、自分と同質なものが共鳴し合うということ。私はあなた、あなたは私という自己統合的な世界観こそが天秤座の信念なのです。
天秤座の時期に生まれた人たち
仲里依紗、永野芽郁、山田孝之、生田斗真、浜崎あゆみ、真田広之、坂口安吾、ジョン・レノン、イチロー、トム・ヨーク、スヌープ・ドッグ、JIMIN(BTS)。
次なる旅への誘い
魂の乗りものとも言える肉体に内包された私たちの魂は、成長を求めてあらゆる経験を重ねます。天秤座の領域を通して「あなた」の中にいる「私」に出会う。そして秋深まる季節、精神の深淵に潜ってゆく蠍座の世界へ。
PROFILE
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