COLLECT THIS
HIROMICHI OCHIAI
Sep 09, 2020 / FASHION
愛すべき“my”レコメンドカルチャー
“好きなもの”を手にした瞬間、誰しも心が躍るはず。トレードマークのような存在のワンピース、バイイングの思い出が詰まったアクセサリー、自身のカルチャーと共に歩んだスニーカー、感性を刺激してくれるヴィンテージ小物。ファッションフリークのあの人が集めてきた、自分だけの偏愛コレクション。
PHOTO_Ryo Sato(TRYOUT)
TEXT_Yoshio Horikawa(PERK)
EDIT_Hitomi Teraoka(PERK)
COLLECTION_NIKE AIR JORDAN 1
コレクションをするというより次々はき潰していく感じ。
ジョーダンを自分に似合うものにしていきたい
っていう気持ちではいています。
PROFILE
HIROMICHI OCHIAI
――今回は数あるスニーカーのなかでも、エア ジョーダン1(以下、AJ1)に絞っていただきましたが、落合さんにとってどういった存在なんですか?
もともとハイテクスニーカーよりもオールドデザインが好きなんですけど、AJ1はデザインが確立されていて、「コンバース」のオールスターや「ニューバランス」の1300、「アディダス」のスタンスミスとか、スニーカー史に名を刻んでいるモデルのなかでもトップに立つ存在かな。このデザインは、これから先100年の時が経ったとしても、変わらずに残っていくものだと思っています。だから去年「ファセッタズム」からコラボモデルを出せた時は、すごく感慨深かったですね(※FACETASM×NIKE AIR JORDAN 1 MID “FEARLESS”)。自分の好きなものでコラボのお話をいただけたことは、デザイナーとしてはご褒美のような瞬間でした。
――改めて考えるとすごいことですね。ずっと大好きだったブランドとコラボをするなんて。去年は「ナイキ」のほかにも、「コカ・コーラ」、「リーバイス」ともコラボされていましたね。
やっぱり嬉しいですよね。昔からアメリカのファッションやカルチャーが好きで、「ナイキ」はもちろん、「コカ・コーラ」、それに今日着ている「リーバイス」も、去年一気にそれら3ブランドとコラボできたことは、いちデザイナーとして光栄でした。これから先も、まずは自分のクリエ―ションをしっかりとして、核となるものは残しながら時代に合わせて変化していけたら、またこういう運命が待ってくれてるのかなって思っています。
――なるほど。アトリエを拝見してもアメリカンカルチャー好きが伝わってきます。
特にジャンクなのが好きなんです。ジョン・ウォーターズ監督の映画とか。あまり大きな声では言えないけど、根本的にはおバカな白人が好きです(笑)。マコーレー・カルキンって前に調べたら、ピザのことしか歌わないピザ・アンダーグラウンドっていうバンドをやってたりするんですよ……、最高ですよね(笑)。今40歳くらいかな。歳がわりと近いこともあって、ぜひ今後ご一緒できる機会があるといいなと思っています。あと『ターミネーター2』に出てたエドワード・ファーロングも超かっこいい。ほかにも『グーニーズ』は男の子格好がすごくおしゃれ。太った男の子のアロハが食虫植物のネペンテス柄なんですよ。ユースカルチャーの企画があったら、ぜひ呼んでください。5時間くらいしゃべれるんで(笑)。
――こちらこそ、その時はよろしくお願いします(笑)。ところで、初めてエア ジョーダンを手にした時のことは覚えていますか?
確か……、最初はエナメルのAJ1だったかな。文化服装学院の学生だったから18歳くらい。「ナイキ」といえば、僕が若い頃からもう絶対的な存在で、AJ1も当時はそう簡単に買えるものではなかったと思います。行列に並んでようやく買えるっていう時代。
――初めてAJ1を購入した日から20年近く経っていると思うとすごいですね。今の落合さんが考える、はき方に対するこだわりやファッションに合わせる際のルールみたいなものはありますか?
服との合わせはその時々の気分ですが、はき方はルーズかも。そういえば、足首辺りまで紐を縛らずにはいてますね。すぽってはいて、すぽっと脱げるように。あと去年、大型二輪の免許を取って、今「モト・グッツィ」っていうイタリアのオートバイメーカーのバイクに乗ってるんですけど、バイクの時って足元がすごく重要だなと思っていて。AJ1はクラッチを踏みやすいし、なおかつ座っている時のパンツの丈と、裾から出ているソックスのバランスもすごく良くて、バイクとの相性が本当にいい靴だなって感じています。自分にはいわゆる全身レザーというスタイルは違うと思うので、最近はもっぱら服とバイクのバランスを研究しています(笑)。
――ちなみに、今「ナイキ」のスニーカーだけで何足くらい持っているんですか?
自宅とオフィスにあるのを合わせると、50足くらいあるんじゃないですかね。ただ僕は靴マニアじゃないから、例えばクリアボックスに収納するとかそういうこともなくて。そもそも気付いたら箱がないって時もあるほど保管が適当ですね……。
――ロフトの上にも積み重ねて置いてありますね。
どんどん積み重ねていってますね。ああなってくると、アートじゃないけどちょっとかっこいいじゃないですか。このアトリエには、学生の頃から友達だった子のアートが飾ってあったり、彫り師の人が描いてる絵があったり、『クライ・ベイビー』っていうジョニー・デップ主演の映画のスタジャンや、18歳の頃に買った「ビースティ・ボーイズ」のジャッキー・チェンのポスターとか、好きなものが適当に集まっていて。この空間にあるから、積み重ねた箱のデザインそれぞれの主張が生きてくるのがいいなと。
――「ファセッタズム」でコラボした時の箱はどんなものだったんですか?
その時はスタンダードな「ナイキ」の箱でした。それはそれですごく良かったです。シンプルなのが逆に。
――今回ここに並べてくださったのが、今よくはいているモデルですか?
まだはいていないのもあります。でも、僕はコレクションをするというよりスニーカーとして次々はき潰していく感じなんですよね。自分自身、エア ジョーダンシリーズをすごくリスペクトしているのですが、僕にとってのジョーダンって、スタイルに合わせてはきやすいし、自分に似合うものにしていきたいっていう気持ちではいています。自分なりにね。
Column_GROW PLANTS
生命力のあるグリーンが
ジャンクなスペースに映える
「自粛を機に植物を育てたいなと思って。ここは日当たりが良くてサンルームみたいになるので、植物たちがどんどん育つんですよ。土が乾いたら外に出して、水をあげて成長具合を眺めて。そういうルーティーンがステイホーム時の独特な時間の流れのなかで、自分にとって重要な時間になりましたね。僕の好きなものってジャンクな感じだから、そのなかに少し生命力のある植物が加わったことで感覚も変わってきました。植物を育て始めてからは、丁寧な生活をしようっていう意識も出てきたり。まだまだ初心者なので勉強中です」
「『ナイキ』のSPACE HIPPIE COLLECTION 03というスニーカーを植物と一緒に置いてみたのは、デザイン的に秀逸だからというのもあるけれど、靴というよりオブジェとして、エコロジーとハイテクさにアートを感じるというか。植物との関係性が相まって、この靴はただここに置いてあることで存在感が大きくなるところがすごくいいなと思って」