INDEPENDENT GIRL
at FLORIST 3/3
KAORI YAMAGUCHI
Aug 17, 2020 / CULTURE
友人から友人へと
どんどん繋がりの輪が広がり、
みんなで一緒に仕事をしている感覚。
自分のスタイルや気分を大切にしながら日々を過ごす、“INDEPENDENT GIRL”な女性をピックアップする本企画。今回は“NATURE”をテーマに、暮らしを彩る植物を提案するフローリスト3名にインタビュー。3人目は千駄ヶ谷[VEIN]のオーナー、山口香織さんが登場。花屋のセオリーにとらわれない表現や感性のもと、お店への想いを語ってくれました。
PPHOTO_Ryo Sato(TRYOUT)
TEXT_Yoshio Horikawa(PERK)
EDIT_Hitomi Teraoka(PERK)
PROFILE
KAORI YAMAGUCHI
――今のお仕事を始めたきっかけは?
23歳くらいの時、まだ地元の埼玉で働いていた頃の話なのですが、通勤途中にお花屋さんがあって、そこの女性スタッフの方が花のお手入れをしたり、大きな花束を作ったりしている姿を毎日見ているうちに、純粋に興味が湧いたんです。「お花屋さんって、かっこいいな」と思い、今の職を目指そうと考え始めました。
――その出来事を機に東京へ?
そうですね。最初はお花の知識も何もないまま、東京に出てきました(笑)。いろいろとお花屋さんを探していた時に出合ったのが[THE LITTLE SHOP OF FLOWERS]だったんです。今は原宿にありますが、当時は代々木上原の古民家を改装した建物にお店を構えていて。お花屋さんとレストランが一緒に入っているその空間が、なんだかおうちに遊びにきたみたいな居心地の良い雰囲気でとても気に入り、惹き込まれるようにそこで働き始めました。6年ほど勤めさせていただき、その後独立しました。ちなみに、[VEIN]をつくる時も“おうち”を意識しています。庭があって、店内には洋服があって……、仲間が集うような空間をつくりたいと思っていたんです。
――仲間が集う場所っていいですね。
その時の気分でふらっと立ち寄ってもらえる、ここから人と人が繋がっていくようなお店になれればいいなと思っています。今までは店内にしかお花を飾っていませんでしたが、自粛要請中には少しでも明るい気持ちになってもらえるように、店頭にお花をディスプレイしてみたのですが、前を通る方が「ここ、お花屋さんだったんだ」と気付いてくださることも。オープンして4年目なのですが、「最近できたんですか?」という感じで新しいお客様にも立ち寄ってもらえるようになったのは大きかったですね。地域の方との距離がぐっと縮まったように思います。
――この期間に新しく始めた取り組みなどはありますか?
自宅需要のことを考えて、価格帯を少し低く設定した商品を企画しました。今までオンラインショップにあまり載せられていなかったフレッシュブーケだったり、1,000円でまとめたブーケだったり。どちらも好評だったのが何より嬉しいですね。今まではお店の扉を閉めていて入りづらかったと思うんですけど、この期間にオープンにしたことでより身近な存在になったというか、お花を生活に取り入れやすくなったと思います。
――確かに、今まで以上におうち時間が長くなり、気軽に花を楽しむ方が増えたように感じます。
私もそう感じています。今まではギフトを買いに来られるお客様が圧倒的に多かったのですが、自粛要請明けは“自分用”のお花を買う方がかなり増えている印象ですね。
――山口さんご自身は、おうちでどのように花を楽しまれていますか?
いろいろアレンジを楽しむというよりかは、気に入った1、2種類のお花をシンプルに生けています。おうちでは一輪挿しが多いですね。あとは観葉植物もたくさん飾っていて、多肉植物やサボテン、それに育てやすいモンステラなど組み合わせを楽しんでいます。特にヒメモンスがお気に入り。通常のモンステラに比べてかなり小ぶりで可愛くて、お部屋が狭くても圧迫感が出ないのでおすすめですよ。
――お店づくりについてもう少しお伺いしたいのですが、[VEIN]と[THE MOTT HOUSE TOKYO]、一緒に始めた経緯を教えてください。
セレクトショップ[THE MOTT HOUSE TOKYO]を営む友人と知り合ったのは[THE LITTLE SHOP OF FLOWERS]に勤めていた時期だったのですが、彼女は私よりもひと足先に独立し、そのあとすぐに私も独立してと、独り立ちしたタイミングが近くて。2人とも拠点を持つことなく活動していたんです。お互いに連絡を取り合っていたのですが、ある時、彼女が「一緒にポップアップやらない?」と誘ってくれたんです。中目黒のみどり荘にあるギャラリーを5日間ほど借りて出店したのですが、お花とファッションがとてもマッチして、お互いに「いいね」と手応えを感じたんです。そこから一緒にお店を持つまではトントン拍子。たまたま今の物件と出合って、すぐに契約しましたね。
――ここの物件を選んだ理由はあるのですか?
落ち着いている場所だったのが一番の理由ですね。原宿は年齢層も若くて忙しい感じがありますが、千駄ヶ谷は意外とファミリー層も多くて、時間がゆったりと流れているような感覚があります。それに、個人経営のお店も多いですし、2人の意見も迷いなく一致して即決しました。早い段階で出合えて、本当にラッキーでしたね。
――なるほど。店内のお花もすべて山口さんが生けているんですか?
全部そうですね。ドライフラワーもイベントで使ったものを持ち帰ったりして、店内のディスプレイやデコレーションとして再利用しています。装飾は季節感を意識して変えていますね。
――お仕事に使う道具で何かこだわりはありますか?
今使っているハサミは、[THE LITTLE SHOP OF FLOWERS]で働いていた頃にオーナーからいただいたモデルを、その後も買い替えながらリピートして使っています。硬い枝も切れますし、実用性もかなり高くて使いやすいですね。切れ味が悪くなれば、メンテナンスに出したりしつつ丁寧に使っています。持ち手がレザーなので手に馴染んでくれるし、ハードすぎない見た目も気に入っています。ハサミを収納するこのレザーカバーも、前職のオーナーからいただいたものです。6年以上は愛用していますね。経年変化でだいぶレザーの色が濃くなってきていますけど、それも味の一つとして楽しんでいます。
――花に関するアイテムで、何かコレクションされているものはありますか?
花瓶や壺には目がありません(笑)。骨董市はよくチェックしています。可愛いなと思うものがたくさん見つかるんです。あとは、この近くにある[Cerote Antiques]にもよく行きますね。花瓶や壺のほかに、絨毯やイスといったアンティーク、ヴィンテージのインテリアがたくさんあります。お店に行ったらいろんなものが欲しくなって、ついつい買ってしまいます(笑)。
――そのほかに収集されているものはありますか?
お花の本ですね。といっても図鑑ではなくて、写真集のカテゴリーになるのかなぁ……。これはフランスのもので『Hyacinthe et Rose』というお花の肖像画作品集です。大型本なので、ダイナミックなお花の描写が本当に美しいんですよ。実は[THE LITTLE SHOP OF FLOWERS]で働いていた時にオーナーが持っていて、それを真似しました(笑)。もう一冊はカール・ブロスフェルトというドイツの写真家の植物写真集。花の造形や葉や茎の筋など、モノクロ写真のかっこよさがあります。
――そういった本から作品のインスピレーションを受けることもあるんですか?
お花の色やセレクト、ラッピングのアイデアなどの参考にしています。ほかにも、Instagramで見つけた海外のお花屋さんやフローリストさんからもインスピレーションを受けています。色合わせや色彩感覚は、日本ではあまり見かけないものばかりで、とても勉強になりますね。壁の色一つとっても、日本では白い壁が一般的ですが、海外ではカラフルなものが多くて。[VEIN]でもあえてネイビーの壁にして、お花がより映えるように見せ方を工夫しています。
――そのなかでもよくチェックしている人はいますか?
フローリストのHattie Molloy(@hattiemolloy)です。オーストラリアのお花屋さんだと思います。あとは、Lane Marinho(@lanemarinho)というクラフトアーティストの方の色彩感覚もすごく好きですね。油絵のような感じとか、色の使い方が素敵です。
――日々手作業が多いと思いますが、何かハンドケアで気をつけていることはありますか?
最近はネイルオイルを爪の際につけています。毎回ではなく気付いた時につけていますね。ネイルオイルは最近買った「byoka」のグリーンティーの香り。とても優しい香りで気に入っています。あまり香水をつけないんですけど、これくらいの香りだったら嫌味なくつけられますね。本当はネイルもしたいんですけど、仕事柄すぐに剥げてしまうので……。せめてささくれができないようにケアしようと、オイルだけは使っている感じですね。
――身につけられているアクセサリーも素敵ですね。
最近のヒットは、この翡翠のリング。下北沢にある[frank and easy]というハンドメイドのアクセサリーショップで購入しました。お店のスタッフの方が翡翠のリングやバングルを重ね付けしているのを見て、可愛い! と思って。特にゴールドの小物との相性が良くて、セットで身につけるのが気に入っています。私は石というより色にこだわりがあるんですけど、この翡翠のリングを含めてまだ2個くらいしか理想の色のリングに出合えていません(笑)。これから少しずつ集めていきたいと思っています。
――イヤリングやネックレスはどちらのブランドですか?
イヤリングとネックレスはどちらも、[THE MOTT HOUSE TOKYO]に入っている「Nettie Kent」というジュエリーブランドです。アクセサリーはゴールドの真鍮やビーズのものが好きで、よく身につけています。「MOCHIZUKI」も可愛いビーズアクセサリーがあるのでチェックしています。
――洋服も素敵ですね!
トップスは古着、ボトムは[THE MOTT HOUSE TOKYO]でも取り扱いのある「KORDAL」です。古着はコーディネートによく取り入れていて、今住んでいる場所が下北沢に近いので、[FILM]によく行きますね。
――今後、お仕事で取り組んでいきたいことはありますか?
ちょうど今年から始めたことが、お店の奥に飾っているこの写真作品です。私と[THE MOTT HOUSE TOKYO]の彼女と、友人の写真家・下屋敷和文さんとで手がけたものなのですが、毎月テーマを一つ決めて撮影しています。今飾っている写真のテーマは“何気ない一日のギフト”。日常に目を向ける機会が増えたことで、「ありふれた一日にギフトを贈るとしたらどんなものだろう?」ということを3人で考えて表現しました。この活動は今後も毎月取り組んでいけたらと考えています。
――地域の方との交流や新しい企画への取り組みなど、今回お話を伺って、いろいろな方とのご縁を大切にされているのが伝わってきました。
本当にすべてそうですね。友人から友人へとどんどん繋がりが広がっていって、みんなでお仕事をしているという感じです。今こうしてお花屋さんを営んでいますが、それはみんなの協力のおかげ。支えてくれている周りのみんなには本当に感謝しています。
INDEPENDENT GIRL with
VEIN
強めのトーンやビジュアルなど、それぞれ主張を持つお花たちを一人ひとりの女性に見立てて表現しました。個性あるものの集合体でありながらも、それぞれの立場や役割をわきまえて共存・共生する自立した女性たちのイメージ。色の組み合わせのバランス、葉の位置など、全体のまとまりを細かく計算しながら、絵画のようなタッチで仕上げています。
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