MY culture_ART
Apr 30, 2020 / CULTURE
ギャラリーディレクターがリコメンド!
人気作家2人の共作による希少なドローイング
映画や音楽、本にアートといったカルチャーを、PERKが注目するINDEPENDENT GIRLがリコメンド。記念すべき第1回は、中目黒のギャラリー[VOILLD]のディレクター、キュレーターの伊勢春日さんに、お気に入りのアートを教えてもらいました。
EDIT&TEXT_Yuka Muguruma(PERK)
社会現象や時事問題、カルチャーなどをジョーク的発想に変換し、さまざまなメディアを用いて発表している加賀美健氏。一方、日常に潜む物事をモチーフにしたミニマルなドローイングが印象的な平山昌尚氏。彼女が今回選んだのは、世界からも注目を浴びる2人の現代美術アーティストによる貴重な共作から生まれた作品。プライベートでも仲のいい彼らは同じ展示やイベントに参加することも多く、伊勢さんとの親交も深いそう。曰く「本当の兄弟みたいなコンビ(笑)」。今回は巡り巡って寄贈されたという、この作品についてお話を伺いました。
「私がこの作品を寄贈いただいたのは本当に偶然で。というのも、これが描かれたのは、7年ほど前に開催されたとあるメーカーさんのイベント。加賀美さんと平山さんが塩化ビニール製のターポリンに即興でドローイングを施し、生地を用いたアイテムなどをその場でオーダーできるというイベントだったそうです。私はちょうど用事があり、行きたかったのですが行けずじまいで。当時はまだ2人と直接面識がなく、あとになってから仕事などを通じてご一緒させていただく機会が増えたんです。ちょうどそんな頃、懇意にしていたメーカーの担当の方から『うちではもう使わないからどうですか?』と、イベントで使用されずに眠っていた生地を譲り受けることになりました。お話を聞いた際に『あの時のものだ!』とびっくりして。後日お2人にお話ししたら、『伊勢さんが持ってるの!?』と驚かれていました(笑)。今は額縁に入れて、自分の部屋に大切に飾っています」
トラックの荷台などに使用されるターポリンにマーカーでドローイングを施したこちらは、その場で小物などに加工された生地の一部を切り取ったものだそう。無数に描かれたユーモア溢れる言葉や記号、そしてその上に大きく描かれた“DFW”とは、加賀美さんが所属するサンフランシスコのグラフィティクルーの名前だという。
「自分のスタイルを変えずに描き続ける2人の作品は、どこか共通している部分があって。ただ“つくる”のではなく、綿密な計算のうえに成り立っています。普段は優しくて気さくな方たちですが、作品に対する真摯な姿勢や、斬新な遊び心に惹かれますね。今回紹介した作品は即興で生まれたという偶然の産物なのですが、ファンにとってはたまらない逸品。ちょうど“DFW”と描かれた部分が回ってきたのも、私にとっては素敵な巡り合わせでした。イベント時などに制作されるこのような作品は、何年も経つと行方がわからなくなってしまうことも多いので、残っていること自体がとってもレアだと思います。私はギャラリーのディレクターという仕事柄、捨てられそうになった作品を譲り受けることも多くあるのですが、なかでもこちらは至極のスペシャル。他人からすると不要なものでも、自分にとっては価値あるものになり得る。そんなことを改めて実感した作品ですね」
たくさんの偶然が重なって、伊勢さんの手元に巡ってきたこちらのアート。ある人にとっては何でもないようなものでも、別のある人にとってはかけがえのないものってありますよね。一期一会に思いを馳せながら、日々を過ごしてみては?
PROFILE
HARUHI ISE
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