The Favorites Forever

#08 鎗田美砂子/「tahila store」オーナー

Oct 25, 2024 / FASHION

あの人のアイデンティティが表れた
ずっと手放せないファッション

誰かに見られるからどうこうではなく、
着ている自分が楽しいかどうか

 今回、鎗田さんに話を聞かせてもらって初めて知ったことだけれど、古着屋のバイヤーがアメリカなりヨーロッパなりに買い付けに行った際、普段とは違ったラフな格好で現地を駆け回るケースが多いそう。移動が多いことや限られた時間のなかで機動性を求めてのことだと容易に理解できるが、それでも彼女は「日本の古着屋さんを代表して、というのは大袈裟かもしれないですけど(笑)」と、普段と変わらないマイスタイルでアメリカを奔走しては“スペシャル感のある一点もの”を選び抜いている。
「初対面のディーラーさんだったり新しい取引先の人だったりもいるなかで、どうやって自分や店のことを知ってもらうか、自分が欲しいもの、探しているものを少しでも理解してもらいたいということを考えると、着ている服そのものが名刺になると思うので。印象付けというか人に覚えてもらうため、知ってもらうためというのが大きいですね。あとは単純に、海外の人って面白いファッションをしていると褒めてくれるので、そういう部分もすごく楽しんでいます」
 内に秘めた想いをさらっと話してくれる鎗田さん。オンのスイッチを入れ、背筋を正してくれる柄ものは、きっとこの先も彼女にとって身近な存在であり続けるのだろう。
「そうですね。私らしくいられて、やっぱり着ていて純粋に楽しくなる。極論を言ったらファッションは自己満足の世界なので、自分自身をいかに高めてあげられるかっていうところだと思います。誰かに見られるからどうこうではなく、着ている自分が楽しいかどうか。それが結果的に周りの人たちも楽しい気持ちになったら、なおさらいいかなっていう感じですかね」
 彼女を優しく包み込む、ポジティブなオーラの訳が理解できた気がする。

TFF 5/8

空想の世界の生き物のようなファニーな柄
風合いのいいリネンにフェルトのパッチワークが施されたヴィンテージのイージーパンツ。「遊び心が溢れる、絵本の中から飛び出したような色柄がいいですよね。買ったお店の方からは、ノルマンディー地方のお祭りの衣装だと教えてもらいました。ざっくりとしたリネンですけど、冬場にニットを合わせたり、ポップになりすぎないようジャケットに合わせたりしています」

TFF 6/8

ベストのインナーとしても着る万能アイテム
’30sのスクールジャケット。明るめのネイビーにイエローのストライプが鎗田さん好みで、三宿の「タープ」で見つけて連れて帰らずにはいられなかったという。「今日はスパンコールを重ねましたけど(メイン写真)、日によってはファーのベストを羽織ることも。スタンダードなアイテムだからこそレイヤードに重宝する、お気に入りの一着です」

TFF 7/8

エレガントに着られる真冬の相棒
LAで出合ったというドレスのように着られるコートは、数年前にLAにいる知人から譲ってもらって以来、真冬のパートナーのような一着に。細かい柄が施された奥行きのあるテキスタイルと美しい光沢が、得も言われぬエレガントなムードを演出。「さすがにこの上からは重ね着が難しいので、基本的には前を開けて中にいろいろと重ねています(笑)」

TFF 8/8

はくだけでなく、まとう楽しさが魅了
2017年にロンドンでスタートした〈ルナ デル ピナル〉の巻きスカートは、中目黒のセレクトショップ「カシミールプラスキデイ」で購入。「ブラウン、白、ネイビーの柄がかっこいい。生地が幾重にも重なっていて、ブランケット素材ながら動くことでちょっとしたニュアンスを出せるところにも惹かれました。冬はアウターとしてバサッと羽織ることもできるんです」

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