The Favorites Forever

#08 鎗田美砂子/「tahila store」オーナー

Oct 25, 2024 / FASHION

あの人のアイデンティティが表れた
ずっと手放せないファッション

マイスタイルを謳歌する“INDEPENDENT GIRL”が、昔も今もこれからも手放せないフォーエバーな服。そんなアイテムにこそ、彼女たちのセンスやアイデンティティが色濃く映し出されているはず。連載第8回目の今回は「tahila store」の鎗田美砂子さんに、レイヤードに不可欠な柄ものについて話を聞いた。

PHOTO_Yu Inohara
EDIT&TEXT_Yoshio Horikawa (PERK)

PROFILE

Misako Yarita

鎗田美砂子/埼玉県出身。専門学校を卒業後、セレクトショップに勤務。2017年春に世田谷の上町に「タリアストア」をオープン。出産を経て、現在は年に2回のペースで子連れでアメリカにわたり、ご主人と共に未だ見ぬヴィンテージをピックアップ。赤提灯系の大衆酒場好き。
@tahlia_store
@misaco_yariii

柄ものはオンのスイッチを入れ、
背筋を正してくれるような存在

 世田谷上町の長閑な雰囲気とは対照的に、目の覚めるような柄ものが所狭しと並ぶ「タリアストア」。当然、そのラインナップにはオーナーである鎗田さんのファッション哲学がビビッドに表れていて、ヴィンテージ好き、柄もの好きにはおなじみのショップだ。
「ひと言で古着と言ってもベーシックなアメカジもあればヨーロッパものもあって、本当に幅広いですけど、私はそこではないというか。現代だと再現することが難しい素材だったり色柄だったりといった、“スペシャル感のある一点もの”に目が行くんですよね」
 その結果、ショップのセレクトにしても自身のスタイリングにしても、攻めの感覚を研ぎ澄ませながら日々ファッションと向き合っている。ネイビーにイエローのストライプが映えるスクールジャケットにスパンコールのベストを重ね、さらにボーダーの巻きスカートをさらっと合わせるあたりは、まさに彼女の真骨頂と言える。
「ソリッドな服も好きなんですけど、やっぱり柄をまとっている方が自分的にはすごく高揚感があって気持ちが高ぶる。ソリッドでスタイリッシュな服はこの先いくつになっても着れる気がして、それよりも今着たいと思うものを全力で着たいなっていう気持ちが強いです。自分のオンのスイッチを入れてくれるというか、背筋を正してくれるというか。そういう存在ですね」
 ショップのInstagramを眺めていると、垣間見られるどころか十二分に伝わってくるのがパターンonパターンの組み合わせ、あるいは大胆なレイヤースタイルだ。なかなかマネできないハードル高めの着こなしに見えるけれど、鎗田さん自身は「自分のスタイルには重ね着が絶対に欠かせないので」と、こともなげに話す。
「その服自体ももちろん素敵なんですけど、それをそのまま着るだけじゃなくて何かと組み合わせた時に表れる表情がすごく好きなんです。何と合わせようか、どう重ねようかということを自分に課しては、好き勝手にチャレンジしているというか(笑)。やっぱり服って、相乗効果でよりよく見えると思っています。単体で着るのはドレスくらいで、それ以外は何かしらレイヤードしていますね。いつかシンプルに着られる日が来るといいなとは思うんですけどね(笑)」

TFF 1/8

ほっこりしすぎないヨーロッパものらしい逸品
「タリアストア」と同じ上町にある「レザーアンドレース」で購入したユーロヴィンテージのキルトジャケット。細かい模様に合わせて同色のボタンを付けるなど、以前の持ち主のセンスや芸の細かさが垣間見られる。「アメリカのキルトものにはない鮮やかさと品が魅力」

TFF 2/8

アートピースのような存在感のピーコック柄スカート
〈ドリス ヴァン ノッテン〉の孔雀柄スカートは2018-19年秋冬シーズンにリリースされ、今なお根強い人気を誇る。「以前から〈ドリス〉は大好きなんですけど、なかでもこのシーズンのコレクションは特別で。デザインもさることながら、この動きの出るフォルム。歩くたびに優雅な揺れ感が出る、アシンメトリーなカッティングが気に入っています」

TFF 3/8

大担な柄と温もりのあるハンドニット
なんとも言えない愛嬌溢れるキャラクターがデザインされたハンドニットは、知人から譲り受けたそう。自分にはない感覚を取り入れたいこともあって、ヴィンテージは知人が働いているほかのショップで手に入れるケースがほとんどですね」

TFF 4/8

重ねるアイテムを選ばない名バイプレイヤー
同業者にもファンが多い、福岡の「アーユーディファレント」で購入したヴィンテージベスト。もともと民族衣装や手仕事のものが好きで、こちらは細かいメタルの装飾に惹かれたという。「後ろがガバッと大きく開くので、たすき掛けみたいに着たり、ストライプのスクールジャケット(アイテム写真6)の上に羽織ったり。何かと重宝しています」