The Favorites Forever

#05 片桐恵利佳
「インターナショナルギャラリー ビームス」
ウィメンズディレクター、バイヤー

Jul 25, 2024 / FASHION

あの人のアイデンティティが表れた
ずっと手放せないファッション

“シャツありき”のスタイリングに、
ファッションの面白さを見出したい

 あらためて話を聞いて感じたのは、アイテムそのものへの偏愛ぶりだけでなく、シャツを軸としたスタイリングに対する熱量の高さ。それも自身の感覚だけを頼りにするのではなく、ロジカルな視点を持ちながらスタイルを楽しんでいる。
「この〈ドリス ヴァン ノッテン〉のシャツは、襟が長くて下に下がるようにできていますよね。重心が下がることで、首元にアクセサリーを合わせて色気があるように着られますし、ちょっと前を開けて着てみると肌の分量が増えてより女性らしいムードになる」
 このような具合に次々とレクチャーしてくれ、もっとシャツの良さを伝えたいという想いがビシバシ伝わってくるから、聞いているこちらもどんどん引き込まれる。
「ここ数シーズン、多くの女性にジャケットを手に取っていただけるケースがすごく増えたと実感しています。じゃあ、それに合わせる服は何なのかを考えた時に、やっぱりシャツは不可欠じゃないですか。ジャケットとシャツの合わせって普遍的ですし、楽に着られるTシャツやカットソーではなくて中にシャツを入れることで、首元だったりコーディネート全体の見え方だったりが随分と違ってくる。ジャケットをレイヤードした時と脱いだ時とでスタイリングの表情、イメージを変えられるというのは、シャツならではの良さだと思います」
 ジャケットとシャツの合わせが普遍であるのと同じように、10年先、20年先もシャツへの愛は変わらないのだろう。
「これからも着ると思います。歳を重ねてスタイルの変化と共に選ぶシャツも変わってくるかもしれないですけど、その分ネックレスやイヤリングといった合わせるジュエリーもその時々の気分で変化させたらいい。この先も“シャツありき”のスタイリングに、ファッションの面白さを見出せたらいいなと思います」

TFF 5/8

滑らかなタッチの素材をあえてラフにデザイン
〈ドリズ ヴァン ノッテン〉の古着のシャツは、祐天寺の「ウィッティー ヴィンテージ」で購入。「一見、パジャマシャツっぽく見えるんですが、ドレスシャツに使われるような素材をラフにデザインするところはさすが〈ドリス ヴァン ノッテン〉だなと。ちょっとゆったりめに作られていて、身体が泳ぐようなざっくりした感じで着るのも好きです」

TFF 6/8

グッとくるディテールポイントが満載
アントワープアカデミー出身のデザイナーによる〈メリル ロッゲ〉の白シャツ。淡いグリーンステッチ、比翼仕立てでデフォルメされたいちばん上のシェルボタン、ラウンド襟、セーラーカラーのように見えるバックヨークなど、各パーツのデザインが際立った一枚。張りのある生地で、パワーショルダー感が強調されているところに惹かれます」

TFF 7/8

毎晩、ベッドに入る時もシャツを羽織る
パリ10区にあるヴィンテージショップ「サンクス·ゴッド·アイム·ア·ヴィップ」のオリジナルレーベル、〈MAISON CHATEIGNER〉のパジャマシャツワンピース。「もともとはデイリーウェアとして提案されているんですけど、私はパジャマにしています。とにかく着ていて気持ちが良くて、ベッドで横になっている時も一切ストレスを感じないです」

TFF 8/8

サファリデザインにシルクのギャップが面白いメンズシャツ
両胸にポケットが付いたサファリデザインの〈KENZO HOMME〉のヴィンテージシャツ。「メンズのシャツらしいざっくりした着心地と、シルク特有の落ち感に惹かれて『Em Archives』で買いました。昔も今も首周りを重視してシャツを選ぶことが多くて、これはすごく控えめに開くからネックレスを合わせた時のバランスもいい感じです」

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