The Favorites Forever

#04 片山久美子
「CITYSHOP」コンセプター、バイヤー/
フリーランス クリエイティブディレクター

Jun 24, 2024 / FASHION

あの人のアイデンティティが表れた
ずっと手放せないファッション

スタイルのある女性が昔も今もこれからも、ずっと手放せないフォーエバーな服。そんなアイテムにこそ、トレンドに左右されない彼女たちのセンスが映し出されているはず。連載第4回目は「CITYSHOP」のコンセプター/フリーランス クリエイティブディレクターの片山久美子さんに、常に身近にあり、ショップが打ち出す女性像にも欠かせないジャケットを紹介してもらった。

PHOTO_Yu Inohara
EDIT&TEXT_Yoshio Horikawa (PERK)

PROFILE

Kumiko Katayama

片山久美子/2015年にベイクルーズに入社し、翌16年から現職。当時も今もハイペースで海外でのバイイングトリップをこなしながらシーズンごとのテーマを打ち出し、オリジナルや別注アイテムの企画も指揮。昨年に独立。ヴィンテージの壺や花器といった服以外のものをキュレーションするプロジェクトを立ち上げ、活動の場をさらに広げている。
@lacasita522
@cityshop.tokyo
@_____katakuriko

デザインに制限があると思いきや
実はものすごく自由度が高い

 父親の背広をこっそり羽織ってはしたり顔をしていた幼少期を経て、大学時代にはココ·シャネルや川久保玲といったジャケットが似合う女性をテーマに卒論を書いたという、生粋のジャケットラバーな片山さん。
「小さい頃から、なんか好きだったんですよね。ハンサムな女性の象徴というか、そういう女性に選ばれる服に憧れを抱いていたんだと思います。ジャケットを着た凜とした佇まいの女性も好きでしたし、『CITYSHOP』の女性像を考える時も、世界的バレエダンサーで振付師のピナ·バウシュがジャケットを着たポートレート写真に芯の強さを感じ、今でも私たちのミューズとしています」
 憧れだった対象がフォーエバーな服となった今、あらためてジャケットは自身にとってどんな存在なのだろうか。
「戦闘服というと大袈裟かもしれないですけど、勝負の時に着る服。もちろんデイリーにも着ますけど、例えばあのデザイナーさんにお会いする時とか、この仕事を絶対にやり遂げたい時とかに、ジャケットが力を与えてくれて物事が上手くいく気がするんですよね。奮い立たせてくれるというか。単純に服そのものとしても魅力を感じていて、基本的にはメンズ服由来のものなので、ハンサムなムードが残っているものが好きなんですけど、ジャケットってデザインに制限があると思いきや、実はものすごく自由度が高いなって。素材や色柄、シルエットに着丈、肩の形状などで表情がまったく変わりますよね。でも一貫して端正な顔立ちをしているから、自由ではあるんだけど、結果的にちゃんとした人に見える(笑)。きちんとしなきゃいけない時はしっかり着こなせばいいし、そうじゃない時は肩の力を抜いてスタイリングすればいい。一着のジャケットをそういったシーンや気分によって変化させながら着られるというのは、今の時代すごく大事なことだなって思います。特にコロナ以降、ものが溢れ続けていることに対する罪悪感のような感情と向き合いながら仕事をしているなかで、私にとって唯一のエクスキューズがきちんとストーリーがあって、作り手の温度が感じられる服をお届けすることなんです。だからこそ、新しいデザイナーに会いに世界中どこにでも行きますし、これからも物語の音が聞こえるものを集めたい。ジャケットだけに限らず、すべての服においてそういう姿勢でありたいと思っています」

TFF 1/8

大人の色香が漂う大きな作りのメンズジャケット
イタリアのシャツメーカー〈ワックスマンブラザーズ〉に別注したメンズのジャケットは、この先店頭に並ぶ秋冬の新作。「伝統的で端正な顔立ちのメンズ服を女性がまとうことで、身体が泳いで大人の色香が漂う。『CITYSHOP』にはウエストがシェイプされていない真っ直ぐのシルエットが必要不可欠なので、お願いして数パターンの中からプリントを選んで、このジャケットを作ってもらいました」

TFF 2/8

アイキャッチーな服を受け止めてくれる緩和剤的な存在
ご主人が20代の頃に購入した〈マルタン マルジェラ〉のジップアップジャケットを、まるで自分のもののように着ているそう。「メンズのオーセンティックなものが好きで、特にこれはドレスにもスウェットにも合わせられる万能タイプ。存在感の強い服を受け止めてくれて、メンズ特有のワーク要素が少し足されてスタイリングが落ち着くんです」

TFF 3/8

削ぎ落とすような感覚で、さらっと着こなすのが気分
ロンドンのヴィンテージショップで見つけた〈イヴ サンローラン〉のジャケット。「フェルトっぽい厚手の生地感とコンパクトな肩に、品の良さとレディなムードが感じられます。これを手に入れた30代半ばの頃は強い印象のアイテムとコーディネートしていたけれど、今はダメージデニムなどを合わせて削ぎ落とすような感覚で羽織っています」

TFF 4/8

寒暖差が激しいシーズンの頼れる一着
今年の春夏に購入して以来、かなりの頻度で着ているという〈ジェーン スミス〉のショートジャケット。「暑かったり寒かったりするこの時期、シャツじゃないカチッとしたモードな気分の時はこれです。薄手の生地、クロップド丈、パワーショルダーというバランスがありそうでなくて、何を合わせてもかっこいいから週3、4日ペースで着ています」