The Favorites Forever

#10 中山良子/
フリーランスバイヤー、ディレクター、PR

Dec 26, 2024 / FASHION

あの人のアイデンティティが表れた
ずっと手放せないファッション

寄り道したり人に会いたくなったり、
その日の気分や行動をも変えてくれる

 「日本のものにはない異質なエッセンスを醸し出している」理由は、見ての通り独特としか言いようのない色柄による刺繍。
「地域ごとの特徴が表れた配色もそうですけど、やっぱり刺繍には古くからそこで生活している人たちの思いや願いが込められているので、自然とポジティブになりますよね。縁起がよさそうな感じ、気のいい感じがして、そういったマインドも服を着るうえで大事にしたいです」
 民族衣装の歴史や刺繍に込められた言い伝えなどを理解しつつも、前述の通り中山さんにコレクター気質はあまり感じられない。あくまでファッションとして捉え、シーズンごとのアイテムとのスタイリングを存分に楽しんでいるのだ。
「それぞれが一期一会でわりとアートピースに近いようなものなんですけど、日常使いしながらも高揚感を味わえる服はほかにはないかもしれないですね。愛でるだけではなく身につけられるところ、異質なテイストをその日のテンションで自由に取り入れられるのがいいなと思います」
 どのようにコーディネートしているかは個々の紹介文を読んでもらうとして、これらの刺繍アイテムすべてに共通して言えるのが、着たり持ったりはいたりするだけで背中を押してくれるということ。
「心持ちがよくなりますね。なんだろう、知り合いの店に寄り道して帰ろうかなとか、人に会いたくなって『今日空いてない?』って連絡するとか。それくらい、その日の気分や行動をも変えてくれる存在なんです」

TFF 5/8

着丈の長さを活かしてレイヤーを楽しむ
「シップス」に勤めていた頃の先輩が、世界一周の旅を終えて再会した際に譲ってくれたというベトナムの少数民族、ザオ族のメンズトップス。「メンズは黒ベースのものが多くて、前立てや袖口、裾に赤い装飾が入っていて。身頃はタイトだけど着丈が長めなので、ジャケットやニットのインナーに合わせて裾がちらっと見えるように着ています」

TFF 6/8

白シャツのバックには多色使いのピエロの刺繍が堂々と
青山の「エオフラ」で手に入れたヴィンテージの半袖シャツ。「日本製の生地を使ってアメリカのテーラード工場で作られているようで、袖付けの縫製など“ならではの”粗さが逆に愛おしくて。後ろにはピエロの刺繍が施されていて、背中ががっつり開いている黒のワンピースに合わせて海外のアイテム特有の色彩バランスによるピエロを見せています(笑)」

TFF 7/8

クセの強い民族衣装はトレンドアイテムと合わせる
ターコイズブルーとピンクのツートンカラーが美しい’40sのチャイナトップスは、前職の先輩である鎗田美砂子さんが営む「タリアストア」で購入。「美砂子さんも言ってましたけど、刺繍系の民族衣装って羽織がほとんどで、ブルオーバーがなかなか見つからなくて。これは太もも辺りにかかる長さなので、ピタッとしたバイカーショーツを合わせることが多いですね」

TFF 8/8

エリザベス2世が描かれた茶目っ気満点のトラッドシューズ
2024年の春夏にスタートしたシューズブランド〈WAFTCITY〉のオペラシューズは、刺繍アーティストのKendai氏によるエリザベス女王に惹かれたそう。「これと出合った頃にちょうどNetflixの『The Crown』にハマっていたのと(笑)、トラッドなんだけど程よい遊びがきいているところが気に入りました。スカートと白タイツを合わせる王道のスタイルが好き」

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