The Favorites Forever

#10 中山良子/
フリーランスバイヤー、ディレクター、PR

Dec 26, 2024 / FASHION

あの人のアイデンティティが表れた
ずっと手放せないファッション

トレンドに迎合することなくマイスタイルを楽しむ“INDEPENDENT GIRL”が、昔も今もこれからも手放せないフォーエバーな服。そんなものにこそ、彼女たちのセンスやアイデンティティが映し出されているはず。連載10回目はフリーランスのバイヤーやディレクターとして活動する中山良子さんに、アートピースのような刺繍アイテムを紹介してもらった。

PHOTO_Yu Inohara
EDIT&TEXT_Yoshio Horikawa (PERK)

PROFILE

Ryoko Nakayama

中山良子/セレクトショップに勤めたあと、2022年よりフリーランスに。毎週土曜日はご主人が営むインテリアや雑貨のリサイクルショップ「FUNagain」で接客も担当。趣味は骨董市巡りや都内の重要文化財を目指して走る“観光ラン”。25年の初夏頃、刺繍を施したカットソーブランド〈ENGI〉を立ち上げる予定。
@nakatiin
@funagain_sendagi

海外ブランドに感じたような
異質なエッセンスを楽しみたい

 それぞれの地域の歴史や文化が色濃く表れた民族衣装を中心に、ずらりと並べられた刺繍アイテムたち。ただ、ひとクセもふたクセもあるこれらの服を所有する中山さんにとって、コレクションしているという意識はほとんどなく、うつわを手に取る延長でその時々の縁に導かれるように出合ってきたという。
「もともとフォークアートと呼ばれるものが好きで。民芸館に行ったりそれにまつわる本を眺めたりしていると、民芸も家具も服も自然とつながっていく感覚があって、ますます興味が湧いてきました。とはいえ、特に服に関しては完全に見た目から入って、あとになってから本などを通じて刺繍や柄の配色の意味なんかを知るケースが多いですね。最近よく思うのは、20代の頃は何となくバラバラとしていたものが、30代になって自分が持っているものを改めて見返した時に、点と点が線につながるように感じられるということ。最初は可愛い! 素敵!! から入るんですけど、あとからバックストーリーを見聞きしてその情景がうっすらとでも目に浮かぶと、さらに愛着が増しますね」
 幼い頃、民芸品を収集していた祖母に民芸館に連れられたり、それに関連した多くのことを聞かされていたこともあり、ファッションを意識し始めた時には、海外の民族衣装を含めた刺繍アイテムは一層眩しいものに見えた。
「昔から日本にはないエッセンスが入っているものに惹かれていて、ベーシックはベーシックで大事にしているんですけど、そうじゃないものを取り入れるのが好き。セレクトショップに勤めていたのも似た理由で、まだ知らない海外のブランドがたくさん並んでいる一種のカルチャーに強い憧れがありました。少数民族が作っているものや刺繍アイテムに魅了されるのも、普段から異質なエッセンスを取り入れたいという思いが根底にあるような気がします」

TFF 1/8

大好きな重ね着を封印してスペシャルワンを際立たせる
ご主人が営む「FUNagain」で、数年前に〈Rhodolirion〉のデザイナー須藤由美さんらを招いてフリマを催した際に本人から譲り受けた、’30sと思しきチャイナジャケット。「おそらくお祝い事のある日に着るもので、鶴や花など繊細な刺繍とダイナミックな刺繍が混ざっています。シンプルな黒のワンピースなどと合わせて、これが引き立つように着ています」

TFF 2/8

ワーク調のヒッコリー生地に咲く華やかな手刺繍
ウズベキスタンが発祥の地とされ、中央アジアの遊牧民に伝わるスザニ刺繍が施されたトップス。ビビッドな色みと大ぶりの刺繍が特徴。「ワークっぽい雰囲気のヒッコリーストライプをベースとしながら、この鮮やかな刺繍をのっけるセンスに惹かれました。カジュアルなデニムと合わせても、多色使いの刺繍があるおかげで女性らしい華やかさが出ます」

TFF 3/8

手に入れて数年が経った今でも自身を鼓舞してくれる存在
〈ボーディ〉の半袖シャツは、「シップス」のバイヤー時代にNYに行った際に購入。「初めての海外での買い付けで、当時の目標の一つを叶えられたご褒美として手に入れました。トラッドな白シャツに刺繍を加えただけで、こうも賑やかになるなんて素敵だなと。マスタードの縁取りも雰囲気があって、暖かい時期に一枚でラフに着ることが多いですね」

TFF 4/8

南アジアの伝統刺繍が施されたバッグをデイリー使い
バングラデシュで古くから伝わるノクシカタ刺繍が施された逸品は、財布やメイク小物などを入れてクラッチバッグとして愛用。「ラテンぽいパキッとした色彩と黒地とのコントラスト。黒地にも細かい刺繍が入っていて、きっと何かしらの祈願を意味するサークルがデザインされています。こういう地域の歴史や文化を感じられるところも好きですね」