Her Inner Music
Mar 04, 2025 / CULTURE
彼女を奏でるオト・モノ・コト
#01 Haruy


いつだって自然体な彼女が紡ぐ優しい音楽
目の前の景色、ふとした会話、心揺さぶられる出来事。彼女は、そんな日常の断片をメロディに乗せる。私らしさを音楽で表現する“INDEPENDENT GIRL”なアーティストたちの、その創造の源を探る新連載。第1回は、心のままに音を紡ぐHaruyの等身大の魅力をお届け。
PHOTO_Kaori Akita
EDIT&TEXT_Mizuki Kanno

PROFILE
Haruy
ハリー/2000年、神奈川県生まれ。東京を拠点に活動するシンガーソングライター。学生時代に結成したバンド、TastyではBa.&メインVo.とソングライティングを担当。22年4月にSuchmosのベーシスト、HSUことHayata Kosugiをプロデューサーに迎え、シングル「Swimmer」でソロデビュー。凛とした存在感が国内外から注目を集め、ライブのほかに個人でDJとしても幅広く活動中。2月19日に3rd EP『Scoop』をリリースした。
Instagram_@__haruy__
YouTube_https://www.youtube.com/@haruy5061
「切磋琢磨し合える友達がいたからこそ、私もここまで続けてこられた」
――Haruyさんは、ご自分の性格をどのように分析されていますか?
「結構しっかり自分の意思を主張するタイプです。自分の頭の中にいるHaruyという人物像をいちばんいい形で表現するために、先輩方であるバンドメンバーにも自分の考えを伝えています。でも、皆さんいろいろな経験をされてきた方々なので、私が言葉ですべてを伝えなくても感じ取ってくれますし、私の想像以上の音像を提示してくださる。楽曲を制作する時に、意見がはっきりしているのはよいと思いますが、日常生活の自分を考えると単なるワガママな人なのかも……(笑)」
――音楽に最初に触れた原体験を教えてください。
「音楽好きの母の影響で、家ではいつも音楽が流れていました。小さい頃からライブにも連れて行ってもらっていて。海外のR&B、ジャズ、ヒップホップはもちろん、日本のアーティストもいろいろ聴いてました。ドリームズ・カム・トゥルーさんのライブに行ったり、KREVAさんや原田知世さん、m-floさんとか。車でよく聴いていた記憶があります。なので、自然発生的に中学3年生の頃にTastyを組んで、最初はコピーバンドだったんですけど、大会へ出場するためにオリジナルを作るようになりました。レーベルさんに声をかけていただき、今につながっていく感じです」
――TastyとHaruyとでは、表現の方法に違いはありますか?
「Tastyは曲ごとにリーダーが異なるというか、3人それぞれが作った曲をTastyとして発表しているので、私が作詞作曲した作品は、Haruyでやっても雰囲気は大きく変わらないと思います。でも、Tastyの曲を作る時の方がポップスとか、聴きやすさみたいなことを意識せずに、思ったことをそのまま出しているので、より自由度は高いのかもしれません」

――Tastyは独特の世界観を持ったバンドで、それが魅力の一つですよね。
「はい、不思議なメンバーの組み合わせだなと思っています(笑)」

――Haruyさんのこれまでの人生で、ターニングポイントになったような出来事はことはありますか?
「中学の時に、いい友人たちに出会えたことですね。今でもすっごく仲がいいし、心から尊敬しています。美術の分野に特化した学校だったので、好きなことを持った子たちの集まりだったことが大きいのかもしれません。今もその好きなことを職業にしている子が多くて。切磋琢磨し合える友達がいたからこそ、私もここまで続けてこられたのかなと思います。あとはHayataさん(※)のことが大きいです。Hayataさんがお亡くなりになったあとの私は、明らかに昔とは違う人格になったと思います。音楽の向き合い方も考え方も、私自身も。Hayataさんが、『力の抜けているところが私のよさ』と言ってくれたので、それが自分の個性であり、持ち味として大切にしていこうと思いました。今のHaruyを築いてくれたのはHayataさんですね」
※Hayata Kosugi……ベーシスト、作詞家、作曲家。SuchmosとSANABAGUN.のメンバー。Haruyのプロデュースを担当。2021年永眠。

「悲しみのあとにはまた喜びがある。それを忘れないようにしたい」
――いつもどのように制作活動を行っていますか?
「ふと思いついたメロディをボイスレコーダーに貯めて、作業する時に聴き返してビートをつけたり、コードをつけたりしています。ドライヤーをしている時に思いつくことが多くて、きっといちばん無になる瞬間だから思い浮かびやすいんだと思います。歌詞は、誰かと会った帰り道などに思いつくことが多くて、ノートにメモしたり、ボイスメモに残したりしています」
――Haruyさんの日常にクリエイションの源が落ちているんですね。先ほども「好きを仕事に」というお話がありましたが、「好き」を仕事にしているなかで、壁にぶつかったことはありますか?
「まだそんなに悩んだことはないのですが、上手くいかなくなった時は、一旦距離を置くようにしています。その結果、もし嫌いになっちゃったとしたら、きっとそれまでなんですよね。でも今のところ、ちゃんと戻ってこれているので。心がモヤモヤした時は放置するのではなく、いい距離感を探るんだと思います」
――Haruyさんのストレス発散方法を教えてください。
「寝たり、友達と遊んだり、自然を見に行ったり。その都度発散していますが、そもそもあまりストレスを感じないので、イヤなことは避けているんだと思います(笑)。音楽を作ることも自分にとっては一種のリラックス方法。いい曲ができたら嬉しいし、達成感もあって、ストレスが解消される感じがします」
――スイッチのオン・オフというよりは、すべてが地続きな感じ?
「そうですね。基本的に楽しいと思うことしか選んでいないので、スイッチの切り替えはないと思います。グラデーションというか、波打ってるイメージですかね。なるべく無理をしないように。いや、時には無理することもあって気づいたらキャパから溢れていたり?(笑)」
――そのほかに、生活をするうえで大切にしていることはありますか?
「後悔のない選択をすることです。また、結果的に後悔にならないように悲しみや失敗、悔いも重ね、それを経た続きを見ていけたらと思っています。『オールド・ジョイ』という映画があるんですけど、 作中で『悲しみは使い古したよろこび』という言葉が出てくるんです。すごくいい言葉だなと思って。 かつて得た喜びがなくなってしまって、悲しみになる。でも、悲しむということは、昔、喜びがあったからで。だから、悲しみのあとにはまた喜びがある。それを忘れないようにしたいなと思っています」

――今後、挑戦してみたいことを教えてください。
「前々からレコードDJをやりたいなと思っていて、今年こそは(笑)。制作活動はずっと変わらず、日常に溶け込む曲を作り続けていきたいです。自分の地続きのなかで作っているので、日常をこれからも曲にしたいです」
Her Favorite Things
Styles
「基本的にラフな服装が好きです。今日は千葉県佐倉市にあるDIC川村記念美術館で買ったロンTと、最近お気に入りの〈オールドフォークハウス〉のヴィーガンレザーのパンツです。ウエストがゴムだから楽ちんで、もう一色購入しました! 古着も好きで、三軒茶屋にある『トロープ』や『キオスコ シーシー』がお気に入りです。店長のたむちゃんのコーディネートが好きで、インスタのストーリーズによくハートを送っています(笑)」


Art
「デヴィッド・シュリグリーというアーティストが好き。インスタに載っている絵も全部かわいいんです。世界観はゆるいけど、風刺的でハッとさせられます」
Movie
「最近、ようやく『バグダッド・カフェ』を観ました。めっちゃくちゃよかったなぁ。劇中で男の子がピアノで弾いている曲が、『ロングバケーション』で木村拓哉さんが弾いていた曲と似ていて。私は過去に、ロンバケから『SENA』という曲を作ったことがあるんです。昔のドラマも好きで、リアルな人間模様が描かれていて感情的で面白い」
Item

「〈クロックス〉が大好きで毎日はいています。楽だし、チャンキーヒールがかわいい」

「好きな食べ物を聞かれたら、出汁と答えています(笑)。お味噌汁とか鍋とか出汁の入っている料理が好きで、落ち着くんですよね」

「歌詞の種を書き溜めているノートです。ここから曲を作っていくので制作時の必需品」