HELLO NEW WAVE
Oct 02, 2020 / FASHION
スタイルを構築する
エモーショナリーブランド
独自の視点を持ち、
常に新しいスタイルを発信し続ける。
それぞれのブランドが持つ
世界観やセンスは、
私たちをいつも魅了し、
驚きと感動を与えてくれる。
そんな新しい挑戦を続けるデザイナーの
取り組みや今後の展望を、
PERKの撮り下ろしビジュアルと共に紹介。
PHOTO_Kodai Ikemitsu(Tron)
STYLING_Yoko Irie(Tron)
HAIR_Kazuhiro Naka(KiKi inc.)
MAKE UP_Makiko Endo(UM)
MODEL_Hana Hargrave(ZUCCA)
EDIT&TEXT_Hitomi Teraoka(PERK)
FEATURE BRAND by「tiit tokyo」
concept
“日常に描く夢”
独特の世界観から描き出された上品かつ叙情的なコレクションを発表。産地とともにつくり上げる繊細な色使いの素材をデザインに落とし込み、洗練されたコンテンポラリーウェアを展開。国内のみならず、海外からも支持を集める。
Designer
岩田 翔、滝澤裕史
SPECIAL INTERVIEW
「tiit tokyo」のデザイナー岩田翔氏がファッションディレクターを務めている、9月18日(金)公開の映画『Daughters』。自身も初めての経験となった映画を舞台とした衣装ディレクションについて、同世代でもある『Daughters』監督の津田肇氏と共に振り返ってもらった。
――お2人の出会いはいつ頃ですか?
津田 5年くらい前だっけ?
岩田 共通の友人の誕生日会だったかな。
津田 そうだそうだ。同世代に面白いヤツがいるよって紹介してもらってから、その友人と飲む時には岩田くんも来るようになって。
――飲み仲間という関係から、今回の『Daughters』のファッションディレクターを務めることになったきっかけは?
津田 「衣装どうしようか」となった時に、いわゆる映画のスタイリストさんじゃなくて、ブランドとコラボしたいと考えていたんですよね。それで、歳も近い岩田くんと一緒にやるのが面白いんじゃないかと。「tiit tokyo」で映画をテーマにしたコレクションもやっていましたしね。あと、これはホント偶然なんですけど、岩田くんのショーでコレクションをやっているスタイリストの町野泉美さんが、僕の学生時代の仲間というか、先輩だったというご縁もあってスタイリングをお願いすることになって。「tiit tokyo」のチームに今回の衣装をすべてお願いする形でオファーをさせてもらいました。
――そうだったんですね。映画のファッションディレクターというのは、どのような役割を担われるのですか?
岩田 監督が思い描いてるイメージ、例えば色にこだわりたいなどをヒアリングしてそのムードをファッションでいかに彩るのかを考えたり、さっき監督も言っていたスタイリストさんを誰にするのかを決めたりもしましたね。ご縁もありましたが、映画の雰囲気と町野さんのスタイリングが合いそうと感じてご相談をしました。
津田 ファッションディレクターって、映画を制作するなかで僕自身もあまり聞いたことがなかったんですけど、今回、作品の衣装全般のことは岩田くんに見てほしいなと。岩田くんのほうからも、オリジナルで服をつくらせてほしいという要望をもらって。予算との戦いもあったんですけど、ぜひやってほしいと返事をしました。
――今回の作品に登場する衣装は、すべてオリジナルのものなのですか?
岩田 いや、実際にお店に並ぶ服も使っています。映画って、ドキュメントじゃない限り基本はフィクションじゃないですか。けれど、ファッションは現実のものっていう、映画の世界と現実の架け橋みたいな役割をブランドが果たすことができたらなと。現実的なリンク感を生み出す役目というのは意識していましたね。
――衣装のディレクションをする上で、大変だったことはありましたか?
岩田 映画では小春(三吉彩花)と綾乃(阿部純子)、登場人物それぞれにテーマカラーがあったのですが、このシーンはこういう服が必要ってなった際に、色の制約があるとトータルで見た時のバランスや場面との合わせ方が難しかったこともありましたね……。
津田 色の希望だけは僕からなんですよ。結構大変だったみたいですね。
――確かに印象的なシーンでは色のイメージが残っているんですが、とはいえ全体を通して特定の色ばかりだったというわけでもなくて。そういうのは狙い通りだったりするんですか?
岩田 そうですね。あざとすぎないほうがいいなっていうのは考えていました。違和感がありすぎると、中目黒の街を舞台にしているのに架空の世界みたいになりそうだったんで。誰もが訪れるかもしれない、人生の一場面という風に感じてもらえるところが結構キモなのかなって。
――ちなみに、お2人が一番気に入っている衣装はありますか?
津田 冒頭3分くらいに2人が目黒川沿いを歩いているシーンがあって、そこで三吉さんがイエローのトレンチコート、阿部さんがブルーのライダースを着ているのですが、あれが上がってきた時の衣装合わせのテンションは、それはもう高かったですね(笑)。両方とも岩田くんがデザインした服なんですけど、こんな可愛いものが上がってきたぞと。
岩田 僕も一緒だな。冒頭だからこそ、象徴的にアイテム一つひとつの色が主張してもいいかなと思ったんで、僕も好きなシーンでしたね。中目黒にいそうでいない子たちというか。結構いい塩梅だったのかなとも思いました。
津田 あの服を着て歩いているバックショットでタイトルをバーンと出しているんですけど、その時にあの服をもっと出しても良かったなぁ。今思い返すと……。
岩田 (笑)。
――衣装に関して、ほかにもこれやってみたかったなっていうことはありますか?
岩田 衣装を考える時に、どこまでファッショナブルにするのかを結構悩んだこともあって、すごく振り切ったデザインをやってみたいとも思いました。でも、微妙だった気もするので、これはこれでいいバランスだったのかなと。クラブのシーンとかは結構派手な服をつくりましたね。
津田 そうだね、あそこは遊んでたよね。まあ回想シーンなので。映像表現的にも派手だし、いわゆる本人の記憶だからファンタジーのほうに振ってもいいのかなと思って。クラブのシーンの衣装もすごく印象的だったね。
――お2人の話を伺って、改めて衣装に注目しながら映画を観たいと思いました。オリジナルの衣装は何ルックつくられたんですか?
岩田 計10ルックですね。三吉さんと阿部さん2人で。目黒川沿いを歩く最初のシーンと、あとは全部回想シーンで登場しています。
津田 回想だからそこまでリアリティにこだわらなくてもいいと言いつつ、彩乃の仕事を手伝いに行くシーンとかはあんまり突拍子ないものだと困るとか、あとで注文つけたりとかしてね(笑)。「最初遊んでもいいって言ってたじゃないかよー!」とかやりとりもありましたね。
岩田 まあでもあのシーンで遊んでたら、よくわからないシーンになってたかも(笑)。
――お2人が考える「tiit tokyo」と『Daughters』が上手くマッチしたと思う点は?
岩田 僕が思ったのは、いきすぎず普通すぎずみたいなリアル感ですかね。
津田 僕は改めて、相性良かったんじゃないかなと思いますね。岩田くんが好きな柄感とか透け感みたいなものが僕もすごく好きで。いいところでシンクロできたと思っています。
――岩田さんは、この作品に携わられたことで価値観などの変化はありましたか?
岩田 いつか映画を撮りたいと思っていた気持ちがなくなりましたね、大変すぎて(笑)。まあそれは半分冗談で、ちょっと本当の話を言うと、僕は第一責任者みたいなのにならないと、そのクリエイティブや創作活動には触れられないという気持ちがあったんです。けれど、今回こういう形で携われるんだっていうのを知ったんですよね。だから、自分の土俵じゃないところで無理して映画をつくりたいみたいなことよりも、こういう形で作品に関われるっていうことが、逆にいいなというか心地いいなと思いました。
津田 いいコメントだな。
岩田 ファッションディレクターをスタッフに入れるっていう座組って、そんなにないと思うのですが、こういう形もいいなと。皆でつくるのっていいですね。
――最後に、お2人から映画についてのコメントをお願いします!
津田 もちろん映画なので、ストーリーとかキャラクターを楽しみにされていると思います。もし、話がつまんなかった、全然共感できなかったという人も、それこそ衣装、セットの内装、音楽が可愛かったとか、芸術やカルチャーの部分での引っ掛かりも多い作品になっていると思います。そういうところも含めて、観て損しない映画だと思っています。ぜひ観に来てください!
岩田 いろいろな人たちのクリエイティブが合わさって完成した、『Daughters』の世界観を楽しんでもらえたら嬉しいです。あと、洋服の仕事をしていたらずっと洋服にしか携わらないと思っている人も多いと思うのですが、今回のように映画の世界観をつくらせてもらえました。自分の“できること”がきっかけで、こういう華やかな憧れの世界に携わることができるかもしれないことを、皆さんにもイメージしてもらえたらいいなと思いました。
INFORMATION
PROFILE
PROFILE
『Daughters』