Creative Be Friction at Work
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Sep 06, 2023 / BEAUTY
相乗効果を生み出すクリエイターの
フリクションワークスタイル
二足のわらじを華麗にはきこなし、自分らしい働き方を実践する人が増えている昨今。異なる職業を両立させたからこそ起きる“Be Friction”があるのでは。2人のクリエイターに、その相乗効果について尋ねた。
PHOTO_Ryohei Obama(SIGNO)
EDIT&TEXT_Maria Ito(PERK)
Creator_TORI
Make Up × Collage Art
異なる2つのアートを生み出すことで、
表現の幅を無限に広げていく
2つの仕事の違いが互いに刺激し合い、
よりよいクリエイティブを生み出す
既成概念に捉われず、高いセンスを発揮するヘアメイクアーティストのTORIさんは、ファッションやビューティシーンに新しい風を吹かし続けてきた。さらに彼女は、コラージュアーティストとしても数々の作品を手がける。2つの仕事を確立させている、現在のワークスタイルに至るまでの経緯とは。
「2014年に独立し、ヘアメイクの仕事に没頭してきました。気付くとファッション誌が自宅に溜まっていて、その整理も兼ねて写真の素材で何かできないかと思い立ってコラージュをするようになりました。思いのままに写真を切り抜き、納得のいく唯一の素材を探して組み合わせていきます。仕事というより息抜きの一つですね。手を動かして何かを作るということが好きなんです」
「鉛筆があったら絵を描く、楽器があったら音楽をやるのと同じかな」と話すように、雑誌があったからコラージュを始めた。きっかけはごく自然な流れだったよう。へアメイクとコラージュアートは近からず遠からずのちょうどいい存在だそうだが、それぞれどんな影響を与えたのか。
「ヘアメイクはチームでやっているという意識を強く持っています。全体の中の一つのパーツであり、引き出したり寄り添ったり。一方のコラージュは、120%自分と向き合いながら一人で生み出すもの。私にとってはメディテーション的な存在で、感覚をクリアにするためにあえて本業が忙しい時期に作ることが多いかも(笑)。“しっくりくる”アートを生み出すことで、自分なりのこだわりというか、作り手としての感覚や発想が鍛えられている気がしていて。そのトレーニングが、ヘアメイクの限られた時間のなかで、瞬発的な判断や表現ができるようになったように感じます。逆に、ヘアメイクの現場で得た経験は、コラージュで素材やバランスを見極める際に役立っています。使うものはなんでもいいわけじゃなくて、心を動かされる写真じゃないとパーツとして使う気にならない。だから、私もそういういい仕事をしなきゃなって気が引き締まるんですよね」
仕事でヘアメイクを手がけ、自宅でコラージュアートと向き合う彼女は、生粋のアーティストなのだと思う。それぞれを通して感性が培われただけでなく、異なる視点から2つのアートを生み出すことで、さらに磨きがかかったのだろう。これからも両者が摩擦を起こしながら、表現の幅を無限に広げていくはずだ。
Friction Work Scene
Hair Make Up
Collage Art
Profile
Creator_NATANE
Brand Direction × Animal Protect Activities
人の人生が豊かになってほしいという想いを
2つのクリエイションを通して発信
それぞれの共通点が、
彼女が思い描いていた理想像を明確にした
アクセサリーブランドのディレクションと並行して動物愛護の活動を行うNATANEさん。一見、関連がなさそうだけれど、何かメッセージが隠されているのではと思い、普段からワークスペースにしているという都内の公園で話を聞いた。
「もともと私の母が、30年以上前から旅先で出合った素材や廃棄されてしまう上質な布の切れ端などを使って、アップサイクルなもの作りをしていました。それでアクセサリーブランドの〈アニル〉も、ナチュラルダイのヘンプを使ったり、家に眠っているチャームやストーンのリメイクを受け付けたり。一度購入されたら終わりではなくメンテナンスを繰り返すことで、よりパーソナルな存在でありたいと思っています。ものを大切にしたからこそ湧いてくる愛着を、アクセサリーを通じて感じてほしい。もっと言うと、ものとの向き合い方を考えるきっかけになればなって」
アクセサリーをおしゃれとして楽しむだけでなく、そこから広がる彼女の想いがギュッと詰まっている。それは動物愛護の活動にも深く通じるところ。
「2年ほど前から“チャリティーシャツ”と言って、自分で撮ったワンちゃんの写真をTシャツにして100%寄付するボランティア活動をしていました。飼い主一人ひとりがワンちゃんを大切にすることがいちばん大切なのかもと感じていた時、同じ考えを持っていたフォトグラファーの英里と意気投合し、『Cuddle magazine』を始めました。飼い主や動物愛護団体へのインタビューなど、内容は充実させつつも手に取りやすいデザインを意識していて、私たちの考えに共感してくれるショップにフリーで置いています」
そんな2つの活動を行うなかで、自然と共通項が見えてきたのだという。
「肩書きを聞かれた時に、困ることも多かったんですよね。自分の考えを表現したものやことをきっかけに、誰かがハッピーになってくれたら嬉しい。そんな想いでこれまで突き進んできたと思っているんですけど、最近私の活動を総称するぴったりな言葉を見つけたんです。理想をクリエイションするという意味を持つ“ビジョナリークリエイター”。かっこいい名前をつけたので、これに見合うように頑張りたい」
一つひとつのクリエイションを通じて、人の人生をより豊かにしたいという想いこそが、2つの仕事が摩擦を起こして見えてきた部分であり、彼女自身がこれから軸としたいことのなのだろう。
Friction Work Scene
Brand Direction
Animal Protect Activities
Profile