Nov 22, 2024 / CULTURE
西洋占星術師の淡の間による
PERK的12星座コラム
古代ローマの詩人·マニリウスは、著作『占星術または天の聖なる学(Astronomica )』の中で、人間の事象や地上の出来事を占星術的世界観と結びつけました。彼が解いた星の世界のように、この世のさまざまな出来事や生活、文化(Culture)を占星術的世界観と結びつけてみること。日常に溢れる占星術的象徴を示すカケラを拾ってみたり、単独化された一つのピースとしての「星座占い」ではなく、「星の影響はすべて自分の中にある」と体験してみること。そんな風に、たまには占いだけではない「星」の入口があってもいいのでは? 「私は〇〇座だから」という一方向だけの狭いキャラ付けにとどまるだけではもったいない。「私の中にもこの星座の世界が存在しているのかな?」という広い視点で感じてもらえたら嬉しいです。この連載が一周する頃には、「ASTRONOMICULTURE」を通して内なる多面的な星座の世界のグラデーションやレイヤーを感じることができますように。今月はいて座のおはなし。
TEXT_Aynoma
ILLUSTRATION&TITLE DESIGN_YUUKI
EDIT_Yoshio Horikawa, Maria Ito(PERK)
いて座の季節
いて座の精神性
いて座の生き方
いて座の信念
いて座の時期に生まれた人たち
次なる旅への誘い
いて座の季節
毎年、ホリデームード漂う音楽が聞こえてくる射手座の時期。冬至に向けて陰が極まるように、だんだん夜が長くなっていく。忙しなくて気持ちが塞ぎそうになった時は、心に火を灯すような楽しみや喜びを自分にプレゼントしてあげてください。季節の変わり目は、西洋占星術では柔軟宮と呼ばれる“変化と適応と調整”を司る星座のシーズンとも言われます。そういえば、今年の秋の気候は例年に見ないほど変動が多く、適応するのも一苦労でしたね。夏から秋にかけての身体の疲れがどっと現れそうな予感。加えて11月26日から12月16日までは、年内最後の水星逆行といういろんなことの点検期間がやってきます。例年よりもバタバタしそうな師走への経過期間、お互いさまで優しい気持ちを忘れずに過ごしましょうね。
さそり座の領域で深淵に潜り、死の世界へと誘われた魂は、再び生への執着を活力にして復活を遂げます。この瞬間、闇を切り裂く光がいて座のシンボルである「矢」となったのです。いて座の矢は世の希望の光。闇夜を切り裂いていくように深淵から現れるのは、生命の解放の灯火。深い内観を極めたからこそ次はさらなる経験、視界を広げるための旅に出ます。
いて座の精神性
いて座の性質は火の質・柔軟宮の質・木星の支配下にそれぞれ分類されます。火の質は生命の神秘と冷静、創造性を司るもの。柔軟宮とは変化と調整を担い、関わった物事をさらにブラッシュアップさせてより良い方へと調整させる案内役。そして木星という天体は、ギリシャ神話における神々の世界の神であるゼウス(ローマ神話ではユピテル)に由来します。木星の名を冠するのは、神の世界を統べるほどの実力を持った神・ゼウス。実父・サタルヌス(土星の神)の業を祓い、オリュンポスの世界に平和をもたらした“正義と創造性を管轄する神”でありますが、一方では嫉妬深い正妻の目を掻い潜っては絶え間なく浮気を繰り返すという、まるで矛盾した倫理観と本能の二面性が同居しています。このように、表面的には大変な人格者である様子や成功した評価を見せながら、非常に野生的な一面を飼い慣らすように持ち合わせているのも特徴です。いて座のモチーフでもあるケンタウルスも、人間と神のハーフである「二面性を持った神の子」。このように、いて座的性質とは高い哲学性と倫理観の裏側に、まるで動物のような野生的本能を併せ持つダブルサインでもあります。いて座のテーマは神の領域(宗教、神学)や哲学の領域とも関連し、神の教えを布教するということから広報、出版、教育、旅(=布教するために)というキーワードが伝統的に結び付けられています。
12星座のうち有名なダブルサインといえば、いて座の向かい側対岸に位置するふたご座の領域です。ふたご座は名前の通り「二面性」そのものですが、ふたご座の領域で広げた知的好奇心の芽生えが、いて座的世界で専門性となって布教されるという相互関係を成り立たせます。また、木星は12年周期で回帰する運行リズムを持っており、その周期を西洋占星術では“木星回帰(ジュピターリターン)”という成長と発展経過の回収期とされています。この約12年は木星によって才能の広がりを育てられる時期とも呼ばれ、12年分の評価と結果が現れるほか、世間的なブームや社会の傾向にも影響が現れることがあります。
いて座の生き方
ホロスコープのリーディングをさせてもらうと、まったくの別人なのにも関わらずとある条件のもと共通した性質の傾向が見えてきます。「空港が好きです」、「よく旅に出ます」、「本屋さんや図書館、大学のキャンパスが好きです」、「占星術やスピリチュアルなことが好きです」など、決まったフォーマットがあるわけでもないのに惹かれるものの特徴がとてもよく似ている人たちがいます。これは、いて座が支配するエリア(または9ハウス)に天体がたくさん集まっていることが多いのが理由です。私自身がそうだからなのか、類友現象を初めは疑っていましたが、やはり共通した特徴があるということが何千人のチャートを眺めた結果わかりました。何をしているとワクワクするかどうかは人それぞれですが、きっといて座にとってのワクワクとは「知らない、わからない何かに出会うこと」。なぜなら、空港も書籍も、体験へ繋がる「扉」のようなものだから。
いて座の世界を言葉で表現するとしたら「広く、遠くへ」、または「旅」。「旅」とは何でしょう。例えば、RPGゲームそのもの、物理的距離を広げること。または体力と地力の限界を知ること。知識の海を泳ぎ続けること。「生きること」の意味を問いかけ続けること。未知の体験……など、いろいろ挙げることができますが、いずれにしても自己から離れて自分を省みることや視野を高くしてこそ見えてくる経験を生み出す機会を得ることではないでしょうか。そして、いて座の生き方は詩人のよう。見たものを表すその一言、一挙手一投足が壮大な物語のよう。生きながら物語を紡ぎ続けるアーティストであり、哲学者であり、冒険家でもあるのです。
RPGゲームのみならず、創作世界は旅をモチーフにした作品が多いですね。主人公の心の成長模様に重ねて人や課題や困難に出会う。そう、私たちの人生もまた旅のようです。例えば飛行機の窓から景色を眺める時、計り知れない自然の大きさに自分の未熟さや小ささを感じる瞬間があります。こうして、図らずもこれまでの歩みを振り返る経験が生まれたり、新たなインスピレーションが湧いてきたり。いて座にとっての「旅」とは、自分とあえて離れる(分離する)ことで新たな領域との出会いにつながることなのかもしれません。自らを省みる体験がない限り、自分自身のことはおろか私たちが生きる世界のことすら見えてくることはないでしょう。なぜならば、知れば知るほど、学べば学ぶほど知識の海は広く深いことを、身をもって体験するからです。一歩踏み出しては経験値が増え、また次なる目標が生まれる。目標に手を広げては遠ざかり、また努力して手に入れては次なる先を求め続ける。その繰り返しこそが“道”を極めることにつながることを知っているはずです。
いて座の信念
「未熟な自分を省みるのが怖い」
「知らない世界に出会うのは、怖いし億劫」
この恐怖心はさそり座の領域で経験した生への執着(分離の恐怖)であり、言い換えれば人生の伸びしろそのものです。旅、それは過去の自分の経験を超えていくこと。自我との分離。知らないことに出会って、悩んで、戸惑って、そこに向き合う過程で生まれる変え難い葛藤や孤独のことです。その歯痒さや「わからなさ」に出会うことが人生の醍醐味であるとよく理解しているのがいて座の人たちで、彼/彼女たちは人生という旅の達人でもあります。また、旅にはガイドが不可欠です。仮に地図を持たずに出かけたとしても、途中で方角を気にしたり、分岐点での方向転換や選択に迫られたりする瞬間がやってくるでしょう。その時の参考になる経験値を得るために、いて座は絶えず経験という名の学びに努めようとします。そしていつか自分の経験がほかの誰かの「ガイド」になり、自分に出会うことが知らぬ誰かにとっての未知なる世界との出会いになることを信じて日々自己研鑽をする。
彼らの「世界」に触れた時、果てしない可能性の広がりを感じることができます。その人の生きてきた道のりや景色、「旅」の土産話がまた別の誰かを次なる旅へといざないます。そして、さらなる未知の世界へと導く案内人のような役割も担っています。一方で、どこにいても異国の空気のような奔放な風を吹かせてくる掴みどころのなさも魅力です。
いつか必ず肉体の生が終わる日、本当の分離がやってきます。しかし、積み重ねた本物の経験や言葉は決して消えることはありません。その生き様は、まるで神話のように地上の星となって輝き続けるでしょう。そして「旅」に出ようとする未熟な誰かの可能性を照らすように、ずっと心の中に生き続けます。それが、いて座が生きながら目指す最終着地点なのかもしれません。
いて座の時期に生まれた人たち
ブラッド・ピット、スティーヴン・スピルバーグ、ジャン=リュック・ゴダール、ウォルト・ディズニー、椎名林檎、高畑充希、田中みな実、満島ひかり、原田知世、本木雅弘、峯田和伸、後藤正文、草野マサムネ、秋本治、浅野忠信、市川海老蔵、羽生結弦、園子温、バカリズム、阿部亮平(Snow Man)、石川祐希、小津安二郎、谷川俊太郎(順不同)。
次なる旅への誘い
魂の乗りものとも言える肉体に内包された私たちの魂は、成長を求めてあらゆる経験を重ねます。いのちの旅路、生きた学びは時間を経て経験に裏打ちされた結果を掴もうとする。次なる世界はやぎ座の領域。
PROFILE
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