Oct 23, 2024 / CULTURE
西洋占星術師の淡の間による
PERK的12星座コラム
古代ローマの詩人·マニリウスは、著作『占星術または天の聖なる学(Astronomica )』の中で、人間の事象や地上の出来事を占星術的世界観と結びつけました。彼が解いた星の世界のように、この世のさまざまな出来事や生活、文化(Culture)を占星術的世界観と結びつけてみること。日常に溢れる占星術的象徴を示すカケラを拾ってみたり、単独化された一つのピースとしての「星座占い」ではなく、「星の影響はすべて自分の中にある」と体験してみること。そんな風に、たまには占いだけではない「星」の入口があってもいいのでは? 「私は〇〇座だから」という一方向だけの狭いキャラ付けにとどまるだけではもったいない。「私の中にもこの星座の世界が存在しているのかな?」という広い視点で感じてもらえたら嬉しいです。この連載が一周する頃には、「ASTRONOMICULTURE」を通して内なる多面的な星座の世界のグラデーションやレイヤーを感じることができますように。今月はさそり座のおはなし。
TEXT_Aynoma
ILLUSTRATION&TITLE DESIGN_YUUKI
EDIT_Yoshio Horikawa, Maria Ito(PERK)
さそり座の季節
さそり座の精神性
さそり座の生き方
さそり座の信念
さそり座の時期に生まれた人たち
次なる旅への誘い
さそり座の季節
南の空に一等星が光る季節、秋が好きです。しかし秋は年々短くなっていますね。秋は“Fall”と記されるように“落ちる季節”です。落ち葉や木の実が落ちて、日が落ちて、気温や新陳代謝も下がる。それらと比例するように、なんだか気分も落ちる。Fallな季節こと秋。楽しめていますか? 12星座を順番に巡っていく成長の旅路は、てんびん座のエリアでようやく折り返し。そのてんびん座からのバトンを受け継いだのはさそり座。終わりと始まりを交差するように渦巻くさそり座のマーク(♏︎)の終わりの矢印(尻尾)は、いて座の矢となり新しい世界へと昇華して行きますが、その前にここで一旦魂の深淵に潜ります。
さそり座の精神性
さそり座という性質をひと言で例えるならば、12星座の中でもっとも「深み」を求めようとする、とでも言えましょうか。0か100かという究極の問いは(私か、私以外か)、さそり座のためにあるのかもしれません。「占い師が勝手にそんなことを言うから、その重たいイメージに苦しめられてる!」と先入観的イメージによる苦労(?)と共に生きてきた人もいるかもしれないのですが、私はさそり座の季節に生まれた人たちのことが大好きです。思慮深く惜しみない姿勢にはいつも救われているし、それが信頼の証拠であることを少なからず知っています。底が知れないように見えて深い愛情を持った人たちなのです。だからこそ、中途半端な気持ちで関わることが難しいとも言えます。
さそり座の生き方
さそり座には影響が大きく与えられる天体こと、支配星が2つ紐付けられています。一つは火星、もう一つは冥王星です。さそり座の一等星ことアンタレスは、火星(アレス)に対抗する星(アンチ・アレス)という名を持つ赤く鈍い光を放つ星。そして、冥王星は冥界の番人ことプルートーから引き継いだ名を冠する強力な星。地下の王者のアーキタイプ。
冥王星はすでに準惑星に降格したものの、現代占星術では強い存在感を示す天体です。核原料の元になった放射性元素であるプルトニウムもプルートーから名を取りました。プルートーこと冥王星は、“破壊と再生の作用”とも呼ばれる時代の刷新と粛清の影響を受け持つと言われる天体ですが、今の世はまさに冥王星移行の影響が現れた時代の変わり目と刷新の時期。私たちは生き字引のように、その変容の影響を体感している世代とも言えます。冥王星が移りゆく時、その影響下には受難とも言えるほどの大きな大きな命懸けの影響が現れると言われます。今その体感をもっともダイレクトに享受しているのは、やぎ座、またはみずがめ座エリアに位置する太陽、あるいは他天体やアングルという運命の骨格部を持った人たちでしょう。
話が脱線しました。支配星の一つである火星が生命本能、そして性的欲求を司る天体であるためか、はたまたさそり座の管轄する領域である8室が生殖のテーマを司るためか、ステレオタイプな印象では“さそり座=性的なテーマ”と関連付けられることもありますが、確かに無尽蔵の体力や根性、ただでは引き下がらない不屈の闘志や反骨精神を内に秘めている人は多いかもしれません。普通の人が真似をしたら、とても真似できないようなとんでもない偉業を成し遂げられる力を持っているので、とてもタフです。また、色気や性欲は生命本能とも言えますから、血気盛んな生命力として魅力溢れる性質を持っていたり、掴みどころのなさや底の知れなさが色気として表れたりすることもあるでしょう。
さそり座は元来「水」の性質であることを考えると、真に求めているのは深い心のつながりや信頼関係、そして死が肉体を分つ日が来ても断つことができないほど、強く結びつく魂の縁のようなもの。ですから、心のつながりが満たされているさそり座は逆に性的欲求が薄くなり、また逆も然りで心が満たされていない場合は、肉体のつながりを通して心の一体化を求める傾向が表れることも。とにかく、モノだけではなくハートがもっとも大切であることを忘れないでください。また、肉体的なつながりやモノへの執着を示すのは、さそり座の向かい側に位置するおうし座による地のエレメント的な欲求とも考えられ、向かい合わせのサインはこのように両側を補完し合う関係性と捉えることができます。時には命を懸けるほどの絶対的忠誠と揺らがぬ信頼を求める生き方、それがさそり座の人生です。簡単に言うとどんな小さなことでも非常に根に持つタイプですので、彼/彼女らにとって信頼を損ねる何気ないひと言を軽々しく放った日には、言った当人がすぐに忘れているようなことでも一字一句漏らさずに頭の怨念台帳に刻まれていると考えた方が良いと思います。例えば、敵が死ぬまで首一つになっても生き続けた『もののけ姫』に出てくる犬神・モロのように、一度敵だとみなした対象には死ぬまで憎悪の念を抱くこともあるでしょう。
精度は人によるかもしれませんが、“人間嘘発見器”みたいな特殊技能を持っている人もいます。相手が本心でどんなことを考えているのかを、瞬間的に見破ってしまいます。人の心の奥の深い淵に潜り込むことができる洞察力が抜きん出ているからなのですが、ゆえにごまかしは無用。ウソは通用しません。データを即座に整理する理屈っぽい側面もあります。ああ言えばこう言います。そして何より、ただただ“揺るがない絶対的愛と信頼”を真っ直ぐに求めます。静かに熱い炎を常にたぎらせ、その火力が表に出る機会を虎視眈々と待っています。
さそり座の信念
各12星座にあてがわれたマーク(シンボル)はただの記号にあらず、その星座の性質を暗喩する重要な暗号のようなものです。ちなみに、さそり座のマークはぐるぐると渦巻きのように螺旋を描く軌道が矢印となって現れますが、これは死の恐怖を乗り越えた先にある輪廻転生の様子(矢印=解放)を示していると言われ、解放された矢印として表現された私たちの魂はいて座の世界へと向かい、生命の神秘を体験します。
生への執着を乗り越えようとする時に生まれる強い葛藤や緊張。ヒリヒリとした反骨精神溢れる生き方。0か100かで振り切った極端な愛情、偏愛。誤解を生みやすいですが、さそり座の人たちは何に対しても深く重く、時に暑苦しく向き合うわけではありません。ご自分の人生を賭けるのに相応しい、あるいは時間や情熱を捧げるに値すると思った対象のみにその無償の愛を惜しみなく捧げます。逆に言えば、惜しみなく捧げるに値しないと判断したものには見向きもしないほどの白状さや排他的な側面も併せ持ちます。しかし、そこが彼らの信頼できるところ。エレメントで分類するならば、さそり座は“水”のグループに該当しますが、その中でも一層深い一体化を求める不動宮の性質ですから、一度交わったものとは簡単に分離できませんし、その深淵の中に入ったら最後蝕まれるように一体化していくのです。
さそり座の時期に生まれた人たち
手塚治虫、小池栄子、堀江貴文、ピカソ、ひろゆき、前澤友作、ゆりやんレトリィバァ、ダンプ松本、野沢雅子、ビョーク、ジョニ・ミッチェル、たなかみさき、寺尾紗穂。ちなみに、「さそり座の女」で有名な美川憲一さんはおうし座でした。
次なる旅への誘い
魂の乗りものとも言える肉体に内包された私たちの魂は、成長を求めてあらゆる経験を重ねます。さそり座の世界で魂の深淵に潜り、暗闇の中で光の方へと手を伸ばす。そうして見上げた先は、いて座の世界へと広がっていく。
PROFILE
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