Aug 22, 2024 / CULTURE

西洋占星術師の淡の間による
PERK的12星座コラム

古代ローマの詩人·マニリウスは、著作『占星術または天の聖なる学(Astronomica )』の中で、人間の事象や地上の出来事を占星術的世界観と結びつけました。彼が解いた星の世界のように、この世のさまざまな出来事や生活、文化(Culture)を占星術的世界観と結びつけてみること。日常に溢れる占星術的象徴を示すカケラを拾ってみたり、単独化された一つのピースとしての「星座占い」ではなく、「星の影響はすべて自分の中にある」と体験してみること。そんな風に、たまには占いだけではない「星」の入口があってもいいのでは? 「私は〇〇座だから」という一方向だけの狭いキャラ付けにとどまるだけではもったいない。「私の中にもこの星座の世界が存在しているのかな?」という広い視点で感じてもらえたら嬉しいです。この連載が一周する頃には、「ASTRONOMICULTURE」を通して内なる多面的な星座の世界のグラデーションやレイヤーを感じることができますように。今月は乙女座のおはなし。

TEXT_Aynoma
ILLUSTRATION&TITLE DESIGN_YUUKI
EDIT_Yoshio Horikawa, Maria Ito(PERK)

乙女座の季節
乙女座の精神性
乙女座の生き方
乙女座の信念
乙女座の時期に生まれた人たち
次なる旅への誘い

乙女座の季節
 暑さの盛りを経て盆を過ぎれば、まだぬるさの残る風のなかに次の季節の予感が感じられるようになります。獅子座の次にあたる乙女座の季節は、夏と秋の間を結ぶ8月後半から9月後半に該当します。次なる季節の支度のために変化と調整の作用が働く時期こと、乙女座のシーズンを肉体の作用に例えるならば、必要な栄養を適材適所で振り分けるために然るべき秩序を整えていくようないわば消化と排出の時間です。暑さで疲れた自律神経の乱れが原因で、身体からのSOSも現れやすい時期ですから、盛り上がった熱を冷ますような静かな時間を意識して過ごしてみてください。

乙女座の精神性
 乙女座的な精神性、もとい「生き方の美学」があるとするなら、自分なりの秩序が整頓されているかどうかということです。それらが崩れていたり散らかったりしている状態が耐えられず、ならばと整備役を買って出るので「献身的でまじめ」だとか、「慎ましい裏方」だとか言われることもありますが、彼/彼女らにとっては自分が関わったものがそんなに程度が低いと思われたくないという姿勢のもとの行為にすぎません。
 乙女座は西洋占星術の分類で柔軟宮というグループに該当しますが、それは柔軟性というより「調整力」のことを示します。柔軟性があるから「なんでもいいから好きにしていいよ」という意味ではなく、彼/彼女らの許容範囲とルールのもとで「好きにしていい」という言葉のあやを見逃さないようにしなければなりません。つまり乙女座に関わるということは、「彼らの美意識に賛同する=許可なく崩さない」という見えない誓いを立てることでもあります。その暗黙のルール(秩序)のことをここでは“乙女座ルール”と名付けておきましょう。それに反することを極端に嫌うため、その一連の流れを「めんどくさい」と一蹴されてしまうことも多く、こんなふうに少しのズレを許容できないややこしさを持っている人も多いかもしれません。「神経質」と言われることも多いのですが、何よりも自分なりのルールが大切なので結果的に人から見たら整っているように見えるだけであって、家の中は散らかっていることもあるとかないとか……。

乙女座の生き方
 8月から9月にかけて生まれた太陽星座·乙女座生まれの人たちのみならず、万人すべてに乙女座の影響があるのだとしたら、それは一体どのようなものでしょう? 乙女座の人たちは、その美学のもとにある力を正しく評価されたり、理想の解像度のままに発揮できたりする場所を求めています。また、自分の感じている世界をなるべく言語化、あるいは具現化しようと努めますし、自分と同じ言語を用いて世界を捉えている仲間を探しています。目に見えるものの向こう側にある見えない世界を捉えようとすること、それが彼/彼女らにとっての仕事や表現になるのですが、インプットした情報を精査して構成する能力に非常に長けているし、情報を整理整頓するのが得意です。頭の中で思い描いているイメージを自らの感覚を使って非常に精密な解像度の元に具現化することができます。その才能は文字表現、芸術、音楽、空間、料理、ITシステム、経理関係や数字の管理など、あらゆる構築の手法に繋がっていきますが、この世界の社会的秩序や均衡は乙女座が管理して具現化していると言っても過言ではありません。もしも彼らがもう手におえないと匙を投げてしまったら、この世は混沌の渦に巻き込まれるでしょう。 ちなみに、情報の流動や知識、知性、理性、規律を司る天体は水星と言って、これが乙女座の基本性質を司る天体です。年に3回、3週間ずつ起こる“水星逆行”という天体のイベント(?)は、ここ数年でだいぶ認知度を高め市民権を得てきたように感じます。天体の逆行とは、総じて公転軌道上で起こる視点の錯覚を修正する現象のことなのですが、これが地上に生きる私たち人間の日常における“水星が管轄する領域”の滞りや不調、まさしく調整を図る作用をもたらすので、運気の点検や監査のような時期となります。その結果、予定していた計画が変更になったり、コミュニケーションや認識のズレやイレギュラーな事象が起こったりするほか、過去の関わりに再アクセスして復活、再開するなどの恩恵を賜ることがあったりなかったりするのです。
 2024年8月4日から29日までは、乙女座の性質のもとで水星の逆行現象が起こる時期でした。普段冷静になるべきことを看過できなかったり、失言が増えたり、手違いや見通し違いのことが起こりやすい時期だったと思います。8月中に現れた点検の事象は、9月にかけて少しずつ調整していきましょう。

乙女座の信念
 乙女座はイメージを具現化する才能を持っている人たちです。「あんなこといいな、できたらいいな」と思い描く夢を形にすることができます。ちなみに、ドラえもんも公式の誕生日では“乙女座生まれ”とされています。四次元ポケットから必要な道具を選び出し、問題に対処する。のび太よろしく、追い詰められた時に「なんとかして〜」と泣きつく困ったさんたちへと然るべき対処を施すために、今日も乙女座の人たちはこの世界のあらゆる場所で、職場で、公的機関で、生活の中で自分の能力を発揮していることでしょう。実際にドラえもんが助けてくれるかどうかではなく、自分の能力を持って献身的にサポートしてくれる人たちがいるからこそ、この世の平和と秩序が保たれています。この人に任せておけば安心だという信頼こそ、まさしく乙女座的サポート力の賜物とも言えるでしょう。こんなふうに、なんだかんだ言って乙女座の人はとても優しいです。「Virgo(virgin=処女、聖母マリアを示す)」の語源からみても、非常に献身的な姿勢が汲み取れますし、基本的に関わると決めた人には自分のできることを惜しみなく施します。そして相手が何を求めているのかを言葉の奥まで汲み取って細やかに対応しようとします。ブーブー言いながらも受けた仕事は最後まで付き合ってくれます。しかし、決して忘れてならないのは、乙女座は「地」の性質を司る性質であることです。「地」とは物質のことなので、自分の行いに対して「価値のある物」としての見返りを求め、それに相応しなければ能力を使うに値しないと見なすこともあります。あとは、優しくて頼りになるからといって「なんでも助けてくれる便利屋さん」みたいに扱うこともNGです。物に限らず、細やかに感謝の気持ちを伝えるとか、あなたがいないと困るよと言われないと「私がいてもいなくてもいいよね」と、わかりやすく拗ねてしまいます。ただし例外として、お金で決して買うことのできない価値があると判断したものには、見返りを求めず誠心誠意を尽くすこともあります。それが乙女座にとっての愛かもしれません

乙女座の時期に生まれた人たち
 山﨑賢人、横浜流星、山口一郎(サカナクション)、細田守、矢沢永吉、宮沢賢治、安藤忠雄、大森元貴(Mr.Green Apple)、ビヨンセ、キアヌ・リーブス、マイケル・ジャクソン、フレディ・マーキュリー、アガサ・クリスティ、そして、ドラえもん。

次なる旅への誘い
 魂の乗りものとも言える肉体に内包された私たちの魂は、成長を求めてあらゆる経験を重ねます。乙女座的世界を通して調整する作用を経た私たちは、ようやく自己を客観視するべく天秤座の領域へ。

※引用  
佐治晴夫著 『からだは星からできている』、マルクス・マニリウス著『占星術または天の聖なる学(Astronomica )』

PROFILE

淡の間(あわいのま)
西洋占星術や西洋神秘学、タロットカード、ヨーロッパ発祥の自然療法などを学び、オリジナルのカウンセリングや講座などを展開しながら地球を修行中。占いのほか、コンセプト監修や文章も執筆。「GINZA」のWEBサイト、「kufura」などに連載を持つ。
@aynoma.jp

PROFILE

YUUKI
“セルフラブ”をテーマにイラスト、作詞、クリエイティブディレクション、壁画アートなど幅広く手がけるアートクリエイター。自身が主催するアート×カルチャーイベント「Art Culture Street.」Vol.4が、9月22日(日)に渋谷PARCO10階の「ComMunE」で開催される。
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