Jun 22, 2024 / CULTURE

西洋占星術師の淡の間による
PERK的12星座コラム

古代ローマの詩人·マニリウスは、著作『占星術または天の聖なる学(Astronomica )』の中で、人間の事象や地上の出来事を占星術的世界観と結びつけました。彼が解いた星の世界のように、この世のさまざまな出来事や生活、文化(Culture)を占星術的世界観と結びつけてみること。日常に溢れる占星術的象徴を示すカケラを拾ってみたり、単独化された一つのピースとしての「星座占い」ではなく、「星の影響はすべて自分の中にある」と体験してみること。そんな風に、たまには占いだけではない「星」の入口があってもいいのでは? 「私は〇〇座だから」という一方向だけの狭いキャラ付けにとどまるだけではもったいない。「私の中にもこの星座の世界が存在しているのかな?」という広い視点で感じてもらえたら嬉しいです。この連載が一周する頃には、「ASTRONOMICULTURE」を通して内なる多面的な星座の世界のグラデーションやレイヤーを感じることができますように。今月は蟹座のおはなし。

TEXT_Aynoma
ILLUSTRATION&TITLE DESIGN_YUUKI
EDIT_Yoshio Horikawa, Maria Ito(PERK)

蟹座の季節
蟹座の精神性
蟹座の生き方
蟹座の信念
蟹座の時期に生まれた人たち
次なる旅への誘い

蟹座の季節
 日毎に陽が長くなる様子を見ながら、今年も夏至がやってきました。さまざまな思い出がグラデーションのように思い起こされながら、新たな記憶と共に今年の夏もあっという間に過ぎていくのでしょう。西洋占星術の世界観による暦では、6月20日のあたり(夏至)から7月20日過ぎまでの時期に生まれた人たちは太陽の位置が蟹座のエリアにあることで、まとめて「蟹座生まれ」と定義されます。蟹座の世界観の大枠をつかむカギは、太陽系の天体の中では月がその性質を支配していることに起因します。また、蟹座を4大エレメントの構造で考えるとその性質は「水」であり、人間の心の揺らぎや情緒面、感情面に作用すると紐づけられることから、本日は月の作用についても記してみます。

蟹座の精神性
 月は太陽と並び、私たち人間にとって最も身近な作用を持つ天体と古来より信仰されてきました。太陽が男性・父性の象徴であるとするならば、月は女性・母性の象徴と考えられてきました。神話の中の月の神は、出産・母性を司るほか、生命あるものは死あるもの、すなわち時を司る神様でもあります。(日本の月読命など)先人たちは月が日々その様相を変える規則性から、暦のシステムの構築や女性の肉体を持つ人にとっての月経のリズムなどに呼応することを見出しました。また、地球の衛星でもあるため、地球に最も距離が近いことも肉体や精神面への影響を大きくする一因とも。
 地球は水の惑星とも言われますが、その水量の多くを占める海の水は太陽や月の引力によって大きく動きます。また、私たちの肉体のおよそ6割が水分と言われていますが、それは主に血液(※海水のように塩分濃度が高い水分)のことです。たとえば、新月や満月に合わせて気持ちがソワソワしたり、月経のタイミングが重なったり、普段とは違う自分の一面が現れてコントロールすることが難しく感じる時、肉体の中に漂う「海」が月の引力によって動かされているようなイメージをしてみてください。どれほど内に秘めようとも引力に逆らうことができないように自然と現れてしまう、月は人が抱える多面な自我の中でも最も剥き出しで未熟な部分を引き出す天体なのです。
 月が意味することは、物心つく前の人格形成の中枢とも言える0歳から7歳の幼少期に経験したことの影響や生まれてくる前の記憶が含まれているとも言われています。そのほかにも自分が最も安心することや、最も自然体な様子でもあり、内なる子どもの部分、もとい最も未成熟な部分の投影など。また、母性や母親からの影響、「家」そのもの、自分が生まれ育ったルーツからの影響や感情など、切っても切り離すことのできない肉体を流れる「水」……、言い換えるなら脈々と続く血筋、DNA的な関係性や家柄のことなどを示します。

蟹座の生き方
 さて、非常に前置きが長くなりましたが、蟹座の性質とは「水」のエレメントの影響による感情の作用と、全12星座の中で「月」の影響を最も強く司るものです。ゆえにその性質が強く現れる人は非常に情緒的な感性を持ち、誰よりも安心と強い共感を人に求めながらも他人には深い海の中にいるような安心感を与えます。「あなたがいるだけで安心する」と言われるなど、どこにいても自然と人気と信頼を集めることも。いわゆるお母ちゃん気質のような、心の故郷的ともいえる世話焼きのお節介キャラのような立ち回りを子どもの頃から自然と担ってしまうことも多く、頼られ役や面倒役を買ってしまうことは日常茶飯事です。しかし、なんだかんだ世話を焼くのは好きで、手が焼けることほど放っておけないと思っているため、そういう状況がむしろ嬉しかったりもします。もしくは真逆の永遠の甘えん坊。また、自分の安心する環境は自分で作ってこそという精神が強く根付いているので、守る対象があればこそ生きがいが生まれます。自分が心を寄せるすべてのものへ惜しみなく愛情を注ぎます。一見人見知りに見えることもありますが、非常に情が深いため一度心を分かち合えたならばその親愛の情は一生続くと言っても過言ではなく、関わった人々とは家族のような深い関係性を長く築こうとします。

蟹座の信念
 その親しみやすさの一方で、蟹座の人たちは誰にでも愛想を振り撒いているわけではなく、自分なりの分別をつけています。感情の揺らぎや世間の喧騒から自分を守るための固い「殻」のような心の城が存在していて、その城の中には、自分が身内と認識する人間や大切なもの以外は簡単に踏み入ることができません。大いなる海のような深い優しさに比例するように、荒れる高波のような厳しさも合わせ持っています。そもそも月は夜の星。誰よりも深い静寂の中に閉じこもることも、ままあります。最も許せないのは大切な人が傷つけられた時と、本来立ち入られたくない聖域に土足で立ち入られた時。自分自身が正義と見なす以外のものに対する少々排他的な側面も持ちます。しかし、それが蟹座にとっての「愛」なのです。ちなみに、蟹座の英語名は “Canser = がん”。蟹座のコンステレーション(実際の星の様子)は世界がんセンターのモチーフシンボルにも活用されています。がんとは、免疫細胞が自らの肉体を守ろうとすることで発生する究極の愛の病というのは、都合の良い解釈でしょうか。

蟹座の時期に生まれた人たち
 くるくると変化する月のような新鮮な魅力と滲み出る包容力。年齢を重ねてもみずみずしい透明感。どことなく漂う親しみやすさから好感度が高く、有名な立場に置かれている人でも親近感が強いことが特徴。国民的な人気を博す著名人や「国民的〇〇」と呼ばれるようなお茶の間の人気者など、蟹座生まれの著名人を調べれば挙げきれないほど非常に多くの人々が名を連ねます。吉高由里子、広末涼子、本田翼、アリアナ・グランデ、メリル・ストリープ、野田洋次郎、賀来賢人、坂口健太郎、Matt、ダライ・ラマ4世、中尾明慶、三谷幸喜、藤井聡太、大谷翔平。そして、この連載のイラストを手がけるYUUKIも蟹座生まれ。

次なる旅への誘い
 魂の乗りものとも言える肉体に内包された私たちの魂は、成長を求めてあらゆる経験を重ねます。次なる旅は蟹座の領域を過ぎ、太陽が最も光り輝く夏の盛り。宇宙の心臓部、獅子座の領域へ。

※引用  
佐治晴夫著 『からだは星からできている』、マルクス・マニリウス著『占星術または天の聖なる学(Astronomica )』

PROFILE

淡の間(あわいのま)
西洋占星術や西洋神秘学、タロットカード、ヨーロッパ発祥の自然療法などを学び、オリジナルのカウンセリングや講座などを展開しながら地球を修行中。占いのほか、コンセプト監修や文章も執筆。「GINZA」のWEBサイト、 「kufura」などに連載を持つ。
@aynoma.jp

PROFILE

YUUKI
“セルフラブ”をテーマにイラスト、作詞、クリエイティブディレクション、壁画アートなど幅広く手がけるアートクリエイター。カルチャーイベント「Art Culture Street」を主催(ex-CHAI)。
@_whoisyuuki_
@yuuki_artwork
@ymym.tokyo
@artculturestreet