MY CULTURE
Jul 05, 2024 / CULTURE
スタイルのある女性に聞く
愛しのカルチャーヒストリー
マイスタイルを謳歌する“INDEPENDENT GIRL”に、自身のアイデンティティに強く影響をカルチャーを教えてもらう連載コンテンツ。今回は確かなセンスと軽やかなフットワークで、花と花にまつわる文化を広める「Urara flowers」の岡崎麗子さんに、シンガーソングライター兼著述家によるエッセイとLAのアンビエント·アーティストの1stフルアルバムについて話を聞いた。
PHOTO_Shunsuke Kondo
TEXT_Mikiko Ichitani
EDIT_Yoshio Horikawa (PERK)
PROFILE
Reiko Okazaki
今に繋がる、心に響いた言葉と体験
気持ちを肯定する自由で率直な言葉たち
服飾の専門学校を卒業後、花屋に就職。その後、古着屋へ転職したのちに現在の「Urara flowers」を立ち上げた岡崎さん。きっかけは、仲の良い先輩たちの地方遠征についていくという気軽な気持ちから。道中を共にするうちに背中を押され、気付けば同じ会場で花を販売することになっていたという。
「成り行きで花屋を始めることになって、まだ若かったし、いろんな人と自分を比べて迷ったり、落ち込んだりすることもありました。そんな時に出合ったのが、『たましいの場所』という本。作者である早川義夫さんが、50代で一度離れた音楽活動を再会された時の話を綴ったエッセイなのですが、ここに出てくる早川さんの正直な言葉の数々がとても魅力的なんです」
「『歌いたいことがあるから歌うのだ』、『答えはなくてもいい、答えを出すために生きているのだ』など、文中に出てくる気持ちを肯定してくれる言葉たちにいつも励まされています。仕事だけでなく、日々着る服一つをとっても流行りに捉われず、自分が着たい服を着ればいいと思える。自分の“好き”を肯定することで、私の世界が構築されたように感じていて、そういったものを一つひとつ掘り下げていくと、この本の言葉に辿り着くような気がします」
“かわいい”という感覚を研ぎ澄ます
岡崎さんが「Urara flowers」での表現で大切にしていること。それは花を飾ること、そして花を贈るという文化の素晴らしさについて伝えること。そのためにも“かわいい”という感覚を研ぎ澄まし、花を届ける人々の気持ちを察知するべく、日々の暮らしのなかに余白が生まれる時間を作るようにしているそう。
「いろいろな人とコミュニケーションを取ったり、みんなが聴いている音楽や観ている映画に触れたり、インプットは意識的にしています。ときどき情報過多になってしまうので、そんな時は自分の“好き”に触れて立ち返るようにもしています。このレコードは私にとってそういう一枚。花屋を始めたばかりの頃にアルバイトをしていたお店で出合い、音楽やアートワークの世界観に惹き込まれて、まだレコードプレイヤーも持っていなかったのに買ってしまいました」
「ロサンゼルスを拠点に活動するOlive Ardizoniというアーティストのプロジェクトなのですが、この作品は本人がかわいいと思う感覚を音にしているそうで、その表現との向き合い方に強く共感しました。今でもお花の仕入れに行く時の車内などでよく聴いています。仕入れは本当に出合いなので、なるべく早い時間にかわいいと思えるお花を見極めないといけない。そのために自分を整えてくれるような存在です」
花と山、自然が放つ圧倒的なパワー
昨年からライフワークの一つになっているという登山。多い時には、月に2回から4回に分けて日本各地の山を登っているという岡崎さんにとって、山とはどういう存在になっているのだろうか。とある山小屋で出合ったという本と共に教えてもらった。
「山にハマった最大のきっかけは、昨年の6月に登った唐松岳の景色でした。山頂に近づくにつれてピンクの雲海が辺り一面に広がっていて、まさに衝撃的な体験でした。それから頻繁に山に登るようになって、雲ノ平山荘という山小屋で見つけたのがこの本です。世界中の山小屋が写真と共に紹介されているのですが、日本のそれとはまた違ってカラフルで新鮮なんですよね。国によって個性豊かで、いつか行ってみたいと思いながら眺めています」
「前職で、気持ちがいっぱいいっぱいになってしまった時に、目の前にあった美しいお花から生の力強いパワーをもらって元気づけられたことがあって。山での体験もその時の感覚に近いような気がします。花ってかわいくて、華やかだけど、それだけではなく落ち込んだり、悲しい気持ちに寄り添ったり、元気づけてくれる存在だから。私が花によって救われたように『Urara flowers』の花たちが、誰かの自愛につながるきっかけになってくれたら嬉しいです」